第141話 十司祭アロケル①
すぐにバックステップで、獣王族の男と距離を取る2人。ロックの顔から冷汗が
「格闘家風の男と初老の男……貴様らは魔王軍の人間だな?」
「……だったらどうした?」
「だったら? ふん、こうするまでだ」
次の瞬間、獣王族の男は一瞬でロックの目の前へと間合いを詰めていた。
「なっ!?」
「ロック!!」
男の
貧民街の建物を幾つもなぎ倒しながら吹き飛ばされ、建物の残骸と土埃でバルザスの安否は確認できない。
「バルザス!!」
「ほう、味方を
自らへの侮蔑的発言に憤るロック、怒りにより気圧されていた心が持ち直す。ロックの目に戦意が戻った事を確認すると、獅子顔の男が鋭い牙を見せながらニヤリと笑う。
「ようやくやる気が出てきたようだな、面白い!」
「ぶっ殺す!!」
(入った!!)
確かな手ごたえにロックは敵へのダメージを確信した。しかし――。
「どうした? それが精一杯か?」
「な……に……!?」
直後ロックは自分の身体に衝撃が走るのを感じた。身体の奥深くを貫通し全身に広がるように痛みが広がっていく。
「が……はっ……!」
「攻撃というのはこういう事をいうのだ」
男の拳はロックのみぞおちに深々と入り、そのまま近くの小屋に彼を叩き付ける。小屋はバラバラに吹き飛び、ロックの身体は地面にめり込み口から血液が噴き出す。
「ごほっ! かはっ!」
「ふん! やはり人間は脆いな」
獣王族の男は追撃を中止し後ろへ飛びのくと、ロックが立ち上がるのを腕を組みながらゆっくりと待つ。
その余裕のある姿を恨めし気に見ながら、ロックは立ち上がった。
(なんて重い一撃だ。……おまけにあの野郎、全然本気を出していない……なら!!)
敵を睨み付けながら、ロックは魔力を高めていく。それに応じてローブの防御力は上昇し、身体能力も向上する。
生まれながらにして〝獣王族〟という種は〝人間〟という脆弱な生き物を凌駕する身体能力を持つ。
それは身体を構成するマナのうち、獣王族は筋肉や骨への分配量が多く、行使できる魔力が人間よりも劣るというバランスになっているためである。
それ故人間が彼らと肉弾戦で対等に戦うためには、魔力を高めて身体能力を同じレベルにまで引き上げなければならない。
「ほぉ、多少はマシになったようだな。よし、俺を楽しませてみろ人間!」
「言われなくてもやってやらぁ。吠え面をかかせてやる!!」
再び敵に突撃するロック。素早い動きで正拳突きを繰り出していく。男はそれを両手で確実に防御しており、ダメージにはなっていない。
「ちっ! それなら!」
姿勢を低くし片手を地面につきながら足払いをかける。だが、男は空中に跳んでそれを回避すると、落下の勢いを利用しながらロック目がけて蹴りを放つ。
エアリアルによる地面すれすれの素早い低空飛行によってぎりぎりで躱すと、敵の右足が深々と地面に突き刺さっているのが確認できた。
(なんて威力だ、あれをまともに受けたらさすがにヤバすぎる)
冷汗をかきながらも、敵の動きが一瞬止まったのを確認すると、千載一遇のチャンスと言わんばかりに、ロックは右手に魔力を集中させながら再び間合いを詰めていく。
「
魔力と体重を十分に載せた拳が、動きが鈍った獅子顔の男に直撃する。男は水切りの如く何度も地面にぶつかりながら勢いよく吹き飛び、最終的には城壁の内側に思い切り衝突するのであった。
その衝撃で男は城壁にめり込み、周辺の壁にはいくつもの亀裂が入る。
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