第140話 決戦、シェスタ城塞都市
その時、コーデリアの所持する連絡用スフィアに通信が入る。ノイズがひどく内容がうまく聞き取れない。
『て……き……じゅっし……さ……たす……け……』
「!! おい……今、十司祭って言ったか?」
「ええ、私もそう聞こえたわ……」
それは救援を求める内容であった。そして、敵には十司祭がいる可能性が高いようである。
「コーディ、この救援要請はどこから来た?」
「…………アストライア騎士団の監視塔からよ」
コーデリアは絞り出すように救援の発信位置を告げる。つい先ほどまでは、混乱するシェスタ城塞都市の中で最も安全だと思っていた場所からの救援要請であったからだ。
「……行くぞ!」
「スヴェン!」
監視塔に向かおうとするスヴェンに対し、アラタはこれ以上彼にかける言葉が見つからなかった。
「……死ぬなよ」
「……お前もな」
互いに生存を誓い別れる2人。スヴェンパーティーは、十司祭が待ち受けているであろう監視塔に向かって行った。
残されたアラタ達魔王軍は、町の中心である創生教の教会にてドラグ、トリーシャ、セレーネの3人が敵を迎い討ち、貧民街に入り込んだ敵をアラタ、セス、アンジェの3名で駆逐するという形で二手に別れるのであった。
「皆! 絶対に死ぬなよ! 全員でノームのゆりかごに集合するぞ!」
「分かってるわよ、マスター! アンジェ、セス! マスターをよろしくね」
「分かっている。お前達も無茶はするんじゃないぞ。危険だと感じたらすぐに撤退しろ」
「御意! 魔王殿、後ほど落ち合いましょう!」
「アラタちゃんこそ無理しちゃだめよ」
「3人共ご武運を……」
一方、その頃南門では、ロックとバルザスが門の開閉装置を動かし、南門の開錠に成功していた。
町の北側から広がりを見せる炎やアンデッドの集団から逃げのびてきた人々が門に向かって押し寄せる。
ギリギリで南門は、その重い口を大きく開き、そこから大勢の貧民街の住人が外に向かって逃げて行く。
「どうやら、ぎりぎり間に合ったようだな。門の開錠がもう少し遅ければ、さらなるパニックを引き起こしていただろうからな」
「だな! それじゃバルザス、ここでの俺達の仕事は終わったし、アラタ達に合流しようぜ」
「そうだな…………む!?」
ロックとバルザスが任務を終えて、アラタ達と合流すべく町の中央部を目指し移動を開始しようとした時であった。
住人を逃がすという使命を無事に達成し安堵していた表情が一気に険しくなる。
それに気が付いたロックが、バルザスの視線の先に注意を向けると、そこには1人の人間がいた。
いや、正確には人間ではなく亜人族、それも強靭な肉体を持ち戦闘系種族として名高い獣王族の者がそこにいたのだ。
獣王族は獅子の顔を持ち、生まれながらにして屈強な肉体を有する種族だ。その独特の風貌をロックが見間違うはずはなかった。
なぜなら、彼に師子王武神流を教えてくれた師匠〝ガイ〟は獣王族の出身であったからである。
だが、彼らの前方に鎮座する者は〝ガイ〟ではない。その者からはただならぬ気迫と殺意が放たれていた。
貧民街独特の
距離が近づけば近づくほど、その獅子顔の男が只者ではない事が分かって来る。ロックの肌は、その男が放つプレッシャーに反応し鳥肌が立っていた。
(なんだ……こいつは! ヤバい、ヤバすぎる!)
その男から放たれる、あらゆる波長を敏感に察知し、ロックの全ての感覚が危険信号を出している。
(魔力も……殺意も……桁違いだ。まさか、こいつが――!!)
ロックの隣にいるバルザスも、今までにない鬼気迫る表情で獣王族の男を睨み返していた。
その点からも、目の前に立ちはだかる存在が只者ではない事が窺える。
「貴様らか……この区域の住人共を逃がしたのは……」
男が発した第一声――その内容は明らかに、シェスタ城塞都市に攻撃を仕掛けている側のセリフであった。
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