第123話 再開、魔王と勇者
バルザスとセスが姿を見せなくなってから、2時間近くが経過していた。その間アラタ達は、宿屋1階にある食堂片隅のテーブルで作戦会議をしていた。お題は『まさかまさかのバルザス×セス』である。
アラタはテーブルに両肘を立てて顔の前で手を組み、真剣な表情で重々しく口を開いた。
「2人が姿を消してから2時間位が経過したわけだが……どう思う?」
「どう、とは? バルザス殿は散歩に行き、セス殿はトイレで苦戦中なのでは?」
「ドラグ、さすがにトイレに2時間は長すぎだよ。それにさっきロックがトイレに様子を見に行ったら、トイレには誰もいなかった。そうだよな?」
「ああ、それどころか、宿屋の裏手から外に出て行ったらしいぜ。目撃情報があったから間違いない」
「なんと!? ではいずこに?」
「……これは俺の推測なんだが、バルザスとセスは2人で何処かに行ったんじゃないか? それもわざわざタイミングをずらして」
アラタ達の表情は重くなっていく。考えれば考える程、想像したくない結果が見えてくるのだ。
「この場合色々と考えられますが、最有力候補は2人一緒に行動を共にし、〝ナニ〟かをしているという事ですね。ここではできない〝ナニ〟かを……」
思わせぶりに〝ナニ〟という部分を強調して話すアンジェが
トリーシャとセレーネは目を
「2人が戻ってきたら、一体どんな顔して話せばいいんだ……」
「それは決まっていますよ、アラタ様。『先程はお楽しみでしたね』と言ってあげればいいんです」
「……君、頭の大事なネジないでしょ? そんな事言えるか!」
セス達が大変真面目な話をしている一方で、アラタ達はしょうもない話題で盛り上がっていた。その時、ノームのゆりかごの扉が開き1組の男女が入って来るのであった。
男は長身かつ筋骨隆々の身体をしており、やや目つきが悪く威圧感を放ち、女はウェーブがかった美しい金髪をたなびかせ、均整の取れたプロポーションと品の良さを周囲に放っていた。
まさに美女と野獣とでも言わんばかりの組み合わせである。
2人は肩で息をしており、アラタ達の姿を認めると呼吸が整わないまま近づいてくるのであった。
「……よぉ」
「……ああ、久しぶりだなスヴェン」
こうしてマリクで分かれた魔王軍とスヴェン一行が再び合流したのである。その後、すぐにシャーリーとジャックも合流したが、エルダーとだけはなぜか連絡が取れなかった。
彼の連絡用のスフィアが反応しなかったのだ。そのため、スヴェン達はエルダー抜きで話を始めていた。
久しぶりに会ったにも関わらず、お互いその間に起きた事は特に触れる事もないまま、いきなり現れたスヴェン一行は、シェスタ城塞都市付近に潜伏している破神教信徒の動きと、そこに進撃した騎士団派遣の件を手短に説明した。
スヴェンの話が一旦終わると、宿屋の娘アンナが水を提供し彼は一気にそれを飲み干す。それから全員分の紅茶と軽食がテーブルに並べられ、魔王軍とスヴェン達の話し合い始まった。
「つまり破神教の連中がここに攻撃をしてきた時に手伝って欲しいって事でいいのかな?」
「はい。先程も話した通り、ここの駐留部隊は破神教の恐ろしさを分かっていません。これから増援を送りますが、十司祭がいた場合それで対応できるかどうか……だから、この町が被害を受けそうな時にあなた方の力を貸していただきたいのです」
コーデリアは必死だった。アストライア王国の姫である彼女は、子供の頃から王族としてノブレス・オブリージュという高貴なる者に課せられる義務についての教育を受けてきた。
彼女にとって、国を支える国民は守らなければならない対象なのである。少なくとも、自分には王族としてその義務があるのだ。
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