第107話 アラタとセレーネ①
睡眠中のアラタに近づく人影があった。その人物の足音により、彼は少し早めの覚醒をする。
「ふぁ~あ……」
「あっ、ごめんなさい、起こしちゃったかしら?」
「ん? あー、セレーネか。いや、そろそろ起きようと思ってた所だから気にしなくていいよ」
「そう? それなら良かったわ」
セレーネはそう言うとアラタのすぐ隣に腰を下ろしていた。
彼女のローブは、胸元が大胆に開いた黒いドレスの様なデザインで、ロングスカートの左側にはスリットが入っており、彼女の動きに合わせて大腿部が見え隠れしている。
そこに黒い
その外観はアラタ曰く「自分が想像し得る限りでトップクラスのエロい魔女」であり、直視しないようにしていた。
にも関わらず、そのような格好で触れそうになる距離に来たため、アラタは思考を切り替えるために真面目な話題を速攻で考えていた。
「さすが、元伝説のブラックドラゴンだね。この1週間ですごい成長しているって、セスがびっくりしてたよ。自分を比較しちゃって自信喪失してたけど」
「そうなの? セスちゃんはあまり私にそういう態度を見せないから分からなかったわ」
「今まさに現在進行形で、向こうで落ち込んでるよ。数日前からあんな調子だけど。バルザスと話をしてるから、それも解決するだろ」
「……よく仲間を見てるのね。それにバルザスちゃんをすごく信頼してる」
「そりゃそうさ、俺達魔王軍の連中にとって親父みたいな存在だからね。それに一番仲間をよく見てるのはバルザスだよ。いつも絶妙なタイミングで声をかけてくるからね」
「そっか」
会話が止まってしまった。真面目な話をする事で自分のスケベ心にブレーキをかけようとしたのだが、如何せん、そういう路線の会話は長続きしないのであった。
不真面目な話なら余裕で一晩いけるのだが――。
(あっ、やばい。気になってきた。胸の辺りとか芸術的なスリットの切れ込みから見える太腿とか、めっちゃ見たくなってきた。でも……だめだ! 見ちゃだめだ、見ちゃだめだ、見ちゃだめだ、見ちゃだめだ…………見ちゃ、駄目だ!)
人知れず葛藤する思春期少年ではあったが、その身にしみついたスケベ心と好奇心に抗う事は難しいのであった。
顔に手を置き、その指の隙間から彼女のセクシャルポイントをじっくり見ようと画策する。
マリクの本屋での件といい、セクシャルな事柄に関わる際、やり方が一々姑息な魔王である。
だが、相手が1枚上手であった。
「アラタちゃんはどうして顔を隠すふりをして、私の身体を見ているのかしら?」
その一言にビクッと身体を震わせ、言葉が見つからずアラタは黙ってしまう。そんな、彼の様子を見て、セレーネは微かに笑みをこぼすのであった。
「あらあら、もしかして私の身体に興味があるのかしら? 依然、恥ずかしい所はしっかり見られちゃったはずだけど」
彼女の言葉を聞いて、転生直後の裸の彼女が起こした奇跡の瞬間を思い出す。
(そうは言っても、あの時実は頭が真っ白になってて、よく覚えていないんだよなー。ああああああー、勿体ない!)
何処となく悔しそうな表情をするアラタを見て、セレーネはくすくす笑っている。
「アラタちゃんは本当に面白いわねー。さっきから表情がくるくる変わってとても面白いわ」
アラタは恥ずかしさのあまりに赤面する。自分のスケベ心や、それを隠そうとする姑息な行動を全て見透かされていると感じたからだ。
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