第102話 魔王軍の外見査定
翌日、魔王軍一同はエトワールのギルド協会の建物に来ていた。
なぜ彼らがここに来たのかと言うと、このギルド協会には魔闘士を志す者の適性を調べる魔道具が設置されているからである。
魔物が頻繁に生み出されるこの世界において、優秀な魔闘士を輩出することは大変重要な事であり、優秀な素質を持つ原石を発見しやすくする名目から、魔道具による適正調査は特にギルド協会に所属しなくとも、しかも無料でできるサービスとして提供されている。
一応自分達で色々試してセレーネが魔闘士として、どのような戦闘スタイルが適しているのか調べる事は出来るのだが、如何せん効率が悪いので、ここで手軽に調べてもらおうという事になったのだ。
何より、無料と言う言葉に心動かされてしまう。無料より安い物はないのだ。
アラタ達が建物に入ると、そこには屈強な肉体とただならぬ雰囲気を持った人々が大勢いた。
(うわー、ヤバそうな奴らが一杯いるよー。なんか、こっち見てるし。絶対目線を合わせないようにしよう)
下手をすれば、厄介事に巻き込まれかねないと思い、アラタは出来るだけ彼らを意識しないよう心掛けていた。
その一方で、ギルド協会の休憩所で他のギルドの人間と情報交換をしたり、新しい依頼はないか確認していたギルドの者達は、突然中にに入ってきた見知らぬ集団に注目していた。
まず目についたのは初老の男だ。落ち着いた雰囲気で如何にも歴戦の戦士という風格があり、圧倒されてしまう。
次は格闘家風の少年。鍛え抜かれたその肉体から、相当の手練れと推測される。 また、その少年よりも年上の女性によると、彼は可愛い顔をしているらしく好評であった。
次はメイド姿の女性だ。彼女が入ってきた瞬間、「何故メイド?」と皆が思ったが、そんな疑問がどうでもよくなるぐらい美しい女性であったため男達のテンションがうなぎのぼりであった。
その後には、竜人族の男が現れた。竜人族自体、このような町中で見るのは珍しく、その屈強な姿に何人かが「おおー」と声を上げていた。
そんな彼の後ろには、黒髪ロングのこれまた美しい女性がいた。それに加えてプロポーション抜群の外見に、食事中の何人かが見惚れて食べ物を落としていた。
続いて3人目の女性が目に入ってきた。世間的にも美しさで定評があるルナールの少女だ。美しい金色の髪にふわふわなケモミミと尻尾があり、噂以上の美しさに男女関係なく見惚れてしまう。
そんなテンション高まる中、続いて長身かつ眉目秀麗の男が現れるのであった。 美女が立て続けに表れて、男性陣がどよめき女性達が少しつまらなそうにしている中でのイケメン登場により、多くの黄色い歓声が聞こえてくる。
そして、最後に現れたのは――何というか、地味な男だった。特徴は何かと言われてもすぐには思いつかない、とにかく地味な感じの男であった。しかし、一緒にいる連中が濃いメンツばかりである中、彼だけ普通であったので、それがかえって異様な印象を周囲に与えていた。
((なんだあいつら、ヤバそうな連中だ。目を合わせたら厄介事に巻き込まれるかもしれない。……とにかく目を合わせないようにしよう))
ギルド所属の
互いに目を合わせまいと努力する者達は、その甲斐あって特に問題を起こす事なくすれ違い、魔王軍は無事に受け付けに到着する事が出来たのであった。
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