第90話 2頭のブラックドラゴン②
無理やり魔力を使用することでアラタ自身にかかる負担は大きい事に変わりはないが、ある程度自分の意思で魔力を扱えるようになっている事実に驚かされる。
(この短期間でこれだけ成長するとは! だが、これ以上は!)
バルザスがアラタを制止させようとした瞬間、視界の端で黒い光が発生する。
ブネが再びドラゴンブレスを魔王軍目がけて放とうと口部に魔力を集中させ始めたのだ。
全員がそれに対抗しようと魔力を高めていく中、アラタの掌には臨界まで達した白い閃光が解放の時を待ちながら
(まさかっ! あれはグラン様と同じ!?)
バルザスがアラタの魔力に驚く中、当の本人は驚異の存在たる黒竜に怯むことなく、魔力を
「そのだらしない口を、それ以上開けてみろ。こいつを叩き込んで顔面をふっとばすぞ!!」
「ふん! やれるものならやってみなさいな!!」
「最初から……そのつもりだ! いけぇぇぇぇぇ!
アラタの掌から解き放たれた白い光弾は、ブネの口部を目がけて弾丸の如きスピードで真っすぐに飛び込んでいく。
ブネはブレスで白零ごと魔王軍を薙ぎ払おうとするが、発射の直前に下側から何かが彼女の顎を打ち上げた――それは、老竜の尻尾であった。
鞭のような不規則な軌道を描きながら振われたそれは、反撃はないと油断していたブネの顎下を打ち抜き、
その直後、まともな動きがとれない若い黒竜の喉元に白零が直撃し、数秒ほどその巨躯に押し込まれると爆散し消滅するのであった。
一瞬意識が
「くぅっ! よくも、私の身体に傷をっ! よくも私に無様な格好を! 殺す!!」
それまでの余裕を伴った嘲笑は怒りの叫びへと変わり、その目は怒りで血走っていた。
依然として足元で起き上がることが出来ないでいる老竜を再び踏みつけ、加重をかけていくのであった。
「あっぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悲痛な叫びを上げながらも身動きが取れない老竜を、ブネは容赦なく痛めつけ続ける。
さらに攻撃の手を強めようとした瞬間、複数の人影が彼女を包囲するように展開し、各々魔力を最大限にまで高めていた。
一斉攻撃の準備が整った魔王軍が、反撃に出たのである。周囲を取り囲み、退路を遮り確実に攻撃を当てられる環境を整え一気に攻撃が放たれる。
「「「「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」」
アンジェのアイシクルスパイクが、ブネの全身に放たれ、ダメージを与えると共にその動きを封じる。
続けて、動きの鈍った敵の頭部目がけてトリーシャが
間髪入れずにロックは、
ブネは突如腹部に走った痛みに思わず後ずさりし、老竜との間に距離が生じる。
それを確認すると、紫色の電光を戦斧に宿したドラグが突撃していく。
「行くぞ! 例えドラゴンであったとしても破壊神の手先ならば我が敵に変わりなし! 我が雷光を受けよ!
紫色の電撃を纏った2本の戦斧が黒竜の胸元に深く切り込み、ありったけの雷光がその身を内部から襲うのであった。
「ぎゃぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!」
堪らず、絶叫を上げるブネであったが、自らの魔力を高め防御に徹することで少しずつ、紫電によるダメージを抑え込んでいく。
「……残念だったわね……この程度で私がやられるとでも思って……?」
「まさか! 十司祭の1人を相手にこれで十分とは思ってはござらん!」
ドラグの言葉に不穏な表情を見せるブネの視線の先にその答えがあった。
セスが杖を前面に掲げ、そこに幾重にも重なる魔法陣が展開されていたのだ。それぞれが強烈な赤い光を放ち、術式が既に完成していることを知らせている。
「なっ!」
ブネが驚きの声を上げた瞬間、ドラグは紫電を停止させると、そこに勢いよく飛んできたトリーシャが彼を回収する。
体格差がかなりあるため、竜人族の将を抱えるルナールの少女は「重い~」と必死な表情になり、ドラグは「ごめんね」と小さな声でつぶやいていた。
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