第45話 コーディの正体
「魔王さん。あなたはこれまで〝魔王〟という人物が歴史の中でどういう災いを起こしてきたのかご存知ですか? それでも魔王という存在を見逃せと言うのですか?」
コーディの言葉に一瞬眉をピクリと動かす魔王であったが、彼は冷静であった。 それは、魔王がらみの話になれば必ずこの話題が引き出されると予想していたからだ。
「それは、この1000年の間にあった魔王乱立時代の話だよね?」
「ええ、そうです」
アラタの問いにコーディは静かに頷いた。
この魔王乱立時代というのは神魔戦争後から現在の約100年前までに起こっていた出来事である。
この間、自らを〝魔王〟と名乗る人物が次々に現れ、その力により人々を傷つけ富を得て世界を混乱に陥れてきた。
その都度、魔王はアストライア王国が派遣した勇者に滅ぼされるか、あるいは同時に現れた魔王同士で潰し合いをして共倒れになったのである。
世間一般的な魔王に対するイメージはこの魔王乱立時代のものが主であった。
(まぁ、俺も魔王乱立時代の話を聞いた時は、俺の中の魔王のイメージとピッタリだったわけで、結局魔王はとんでもない悪者なんだよなぁ、世間的には。だから、この人らが魔王討伐をしようとする事も理解は出来る。けどな……)
アラタは一度呼吸を整えると、再びスヴェンに視線を合わせて話しだす。自分達がどのような目的で旅をしているのかを。
途中でバルザスに目を向けると、彼は頷いており、アラタは正直に話を続けた。 最後に自分は異世界の人間であるという事も付け加えて。
アラタの話が終わった後、勇者一行は皆深刻な表情を浮かべていた。
ただ、顔が隠れているエルダーに関しては、どのように受け取ったのかは分からなかった。
「つまりお前達は、神魔戦争の時と同じ事をやるつもりなのか……破壊神やその信徒と戦うと……」
スヴェンが
「本当にやれると思ってるのか? だって、お前魔力が使えないんだろう?」
その一言に少し、ムッとした表情を浮かべる魔王は少し怒り口調で勇者に噛みつく。
「俺の話、ちゃんと聞いてたか? 今、まさに、その魔力を使えるようにする旅の途中なんだよ。だから、邪魔すんなっつう事ですよ。理解できたか? 勇者!」
その若干皮肉まじりな喋り方にイラッとした勇者は、アラタに怒りの剣幕で近づいていく。
「お前、今俺の事馬鹿にしただろ?」
「人の話をちゃんと聞いてないから補足説明しただけだろうが! ぼ~っと聞いてんじゃないよ!」
「はぁ~? ぼ~っとしてねぇし! ちゃんと聞いてたし!」
小学生レベルの言い合いを始める魔王と勇者。このままでは、話が進まないとアンジェとコーディが2人の間に割って入る。
最初は抵抗を見せていた魔王と勇者ではあったが、割って入った女性2人に睨まれると途端に怯み大人しくなっていた。
「神魔戦争の内容は、記録の殆どが消失して詳細が分からないので何とも言えないですが、ただ私の知る限りでは、その時の魔王グランは比較的良心的な人物であったと聞いています。そして戦争終結に貢献した人物だと……」
コーディの言葉にアラタは違和感を感じた。しかし、それが何なのかよく分からない。が、それに気づいたのはセスであった。
「ちょっと待ってください。何故、魔王グランが神魔戦争終結に貢献した人物であると知っているのですか? 一般的に彼は破壊神に与していたという事になっているはずです。真実を知るのは、この〝魔王物語〟を読み込んだ者、あるいは限られた人物だけです」
懐から一冊の本を取り出しながら熱弁するセスを見て「それ、いつも持ち歩いているの?」と若干引く魔王軍一同。
すると突然ロックが驚愕の表情を見せながら大声を上げたため、「そこまで引かんでも」とドラグがなだめた。
「違うよ! セスが変人であることに今更驚かないよ! あの人だよ! あの勇者の隣の女性だよ!」
ロックそう言うと、皆の視線は勇者の隣にいるコーディへと集中していた。
「彼女がどうかしたの? もしかしてロックのタイプなの? 珍しいわね、ロックが女性に興味を持つなんて」
トリーシャがキョトンとした表情で言うと、ロックはおもむろに首を横に振りながら否定する。彼のオーバーリアクションは続いている。
「違う違う! そういう問題じゃあない! あの人が何でこんなとこにいるんだ? だってあの人は!」
ロックがここまで言うと、コーディは少し観念した表情を浮かべながら凛とした声で彼を制した。
「……気付かれてしまいましたか。以前お会いしたのは、確か城で開かれたパーティーでしたね。何年も前の事だし、互いに成長したので気付かないかと思ったのですが」
そう言うと、コーディは改まった様子で魔王軍一行に挨拶を始めた。その際の彼女の所作には洗練された優雅さが見え隠れしている。
「魔王軍の皆さま、改めまして。
コーデリアの挨拶が終わり、沈黙が訪れる。魔王軍全員はしばらく硬直したままであったが、急に
「「おっ、お姫様~~!?」」
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