31.魔道具開発

 1週間後、印刷が上がって、納品されてきた。


「生活魔法」と「兵士になるための鍛え方」の冊子はすぐに配られることになった。

 マンガに慣れてない人用にマンガの読み方をその巻頭につけている。

 それがないとどういう風に読み進めればいいかわからないからだ。


 ゼクウ語かるたは銀貨2枚でポンタ商会に並ぶことになる。

 生活魔法の本はポンタ商会で貸し出す予定だそうだ。

 これにはほかでまねのできない魔法の使い方の極意が書いてあるということで、ポンタ商会で魔法教室を開いて、その中だけで貸し出して、読んでもらうそうだ。


 兵士になるための鍛え方はまず、騎士団たちに配られた。

 そして内容を再検討してから、ポンタ商会で販売していく予定だそうだ。

 騎士団への志願は年々多く、毎年試験をしているのだが、なかなかその準備ができていない人が多くて、採用基準に満たない人が毎年ふるい落とされるそうだ。


 今回のこの「兵士になるための鍛え方」には、生活しているうえでできる訓練方法などもマンガでわかりやすく書いているために、とても好評のようだ。

 1週間後、生活魔法のマンガは売り切れて増刷依頼が来た。


 兵士用のマンガは若干メライトの生活様式に合わせた表現に修正を入れて、これも本格的な増産に入る予定だ。

 洋子さんは騎士団に取材をするためにメライトに行っている。

 デジタルカメラやアクションカメラも持参しているので、動画や静止画で、十分な取材をしてほしい。


 洋子さんには初版本を10冊ずつプレゼントしている。

 兵士のマンガは今回の改訂版が普及用の初版本になるため今回の初版本は特に貴重になる。

 日本人が日本に居ながら想像と資料写真だけで書いたメライトの様子がよく出てるようだ。

 次の改訂版ではより一層メライトの生活に沿ったものが出来上がるだろう。


 洋子さんはこの1週間の間に鍛錬にも参加して、ゼクウ語の習得のための勉強もしている。

 併せて、様々な魔道具の使い方や魔法の習得にも余念がない。

 冬コミのためのマンガも描きだしているらしいが、どうやらポンタとポン吉ポン子の日常の話になるらしい。

 今までと、がらりと作風が変わることでファンの人たちは驚くだろう。

 このコミケ出版本も早々に仕上げて、印刷所に100部印刷をお願いする予定だそうだ。


 俺も見せてもらい、もう100部追加で頼んだ。

 だって、洋子さんのマンガに出てくるポンタたちがかわいいのだ。

 半分の50部にはゼクウ語での写植も入れてもらった。

 そりゃもちろんマローンも欲しがったからね。

 そうやって洋子さんの冬コミ対策は終わって、騎士団の取材に向かったのだ。


 印刷費用などは洋子さんと話し合って「株式会社スタジオポンタ」を設立し、絵の版権などの管理もここのスタジオで管理することにしているので、そこからの経費として計上している。

 もちろんスタジオポンタのロゴマークもポンタたちのイラストだ。

 洋子さんのこだわりで、少し変えてあるそうだ。

 ただ、シルエットとしては同じものというこだわりを持って、中身の絵を少しずつ変えている。


 取材も終わり、改訂版の原稿もアップして、又騎士団との打ち合わせに出かけている。

 最近では騎士団のマンガも描いているようで、タブレットには騎士団員の稽古風景やそれぞれの全身像の写真、日常風景やご飯を食べている姿など、騎士団一色になっている。

 そのうちまたマンガにして見せてくれるのだろう。


 俺たちは魔道具の製作に追われていた。

 3Dプリンターなども購入して、本格的な魔導回路の設計に余念がない。

 これが成功すれば量産のできる、かなり画期的なものが作れるだろう。


 魔道具は杖と指輪、腕輪の3種類開発している。

 それぞれ魔法が撃てる量に違いがある。

 これは内蔵する魔石の大きさに関係している。

 ゴブリンからグラスウルフの魔石までを装着できるタイプのものは指輪を採用している。

 ゴブリンで1回、グラスウルフで3回の魔法が撃てる。

 これらは護身用として普及させるつもりだ。


 特に防御の魔法用と考えている。

 商人や普段の生活でも必要な場合が多いようだ。


 防御魔法はシールドのようなもので体を覆い防御する。

 初級の攻撃魔法のファイヤーボールなどはこれで防げるように開発した。

 危ないと思った時に指輪に魔力を通すと発動する。

 魔法を規定回数使ったものは魔道具協会で売っている魔力充電器で回復することができる。また、魔力回復だけは魔道具協会で請け負ってやってくれている。

 これはすでに普及している魔道具も同じ扱いらしく、普段から行われていることらしいので問題ないようだ。


 次に回数が多く打てるのは腕輪だ。

 これにはグラスウルフから、バトルアントなどの昆虫系の魔物の魔石を採用している。

 昆虫系の魔石は数が多いそうだ。

 それを腕輪に並べて数個埋め込んでいる形だ。


 これは10回から50回まで打てるものを作成している。

 残数表記もされているので、指輪より使い勝手はいいかもしれない。

 しかし指輪は最大10個はめられるけど、腕輪は最大2個までだ。

 これも初めは防御の魔法のみを採用している。

 そのうち「フライ」や「アポーツ」などの便利系魔法を組み込む予定でいる。


 あ、魔法がすべて英語なのはこちらで名前を付けたからだ。

 例えば防御などは魔法大全では「身を守るための魔法」という表記になっている。

 これでは呪文を唱えなければ発動しないのだ。

 そこで魔道具では発動キーワードに呼応して魔法を発動する仕組みにしているので、簡単明快な名前が使い勝手がいいので、英語での表記にした。

 そりゃ1,000年前には英語表記はなかっただろうからね。


 それと腕輪型には魔道具に充電できる魔道具も開発した。

 魔道具協会が作っていたのは据え置き型で円盤状のものの上に魔道具を載せて、隅にある魔力注入部に手を置いて魔力を注入していた。

 これを魔道具に手をかざすことで魔力注入ができる腕輪を開発したのだ。

 この魔道具の最大の利点はその形態性にあるだろう。

 ハンターや商人など魔力が切れても一一魔道具協会に出向いていられない状況が起こることが想定できたので開発した。

 現在は直径30㎝ほどある魔力充電器の円盤を持ち歩いているそうだ。


 これもヒットすると思っている。


 それから、杖は攻撃魔法が放てるものと各自が持つ魔力制御を効率よく行うもの、魔力を増幅するものの3種類を開発した。

 ファイヤーボール、ウォーターボール、ウインドボール、アースボールなどのボール系と

 スピア系を開発した。

 これら3種類の杖は各々合体させることができる。


 それと無魔法の杖も作った。

 無魔法とは特性を持たない魔法で魔力のみで行うものと魔力を介して行うものの総称だ。

 例えば物を取り寄せるアポーツなどは日本でいうところの念導力にあたるが、これも無魔法の一種として分類している。

 フライなどの重力制御などもこの分類に入る。


 他にはベルトポーチも開発した。

 これは日本で購入できるベルトポーチに空間魔法を施してマジックポーチとしたものだ。

 一つ当たり6畳間ぐらいの空間は確保できる。

 これだと魔物が数匹や替えの武具、替えの服なども入れられ、宿泊道具や調理器具なども入る。

 普段使いできればと考えているが、価格をどうしようかと今悩んでいる。

 それというのも空間収納ができる魔道具は貴重で、国や有力貴族などしかもっていないそうだ。大きさはもっと大きくて10m×10mの高さ5mほどが収容能力となっている。

 これらはお金を積んだからといって手に入るものではなく、重要な戦略物資でもある。

 今調整しているのはこれをハンターギルドの独占商品として下せないかと思っている。

 もちろん兵士用は別途ポンタ商会から販売する予定である。


 このマジックポーチがあればハンターたちはすごく助かると思うんだ。

 魔物も持って帰ってこれるし、食事なんかも入れておける。


 これを金貨10枚程度で販売できないかと打診している。

 ギルドからの販売価格は金貨15枚だ。


 それに販売したことをギルドカードに紐づけておき、転売防止のための処置を施す予定だ。

 でもこれって揉めるだろうな?

 ちょっと大量に作っておいて、一気に販売できるように体制を考えなくちゃね。


 このマジックポーチだけはポンタ商会オリジナルとして販売予定だ。

 あとの指輪などは魔道具協会からも販売できるようにしようと思っている。

 それに現在いる魔道具職人たちにもギルドに参加している人に限って無料で公開しようと考えている。職人さんたちも大事にしないとね。

 まだまだ作りたいものがあるから協力してほしいしね。


 俺はこれらの開発した魔道具をそれぞれひとつづつ皇室にも献上している。

 そのうち皇室からも注文が来ると思うよ。

 特にシールドの指輪とマジックポーチ、それに魔力充電器としての腕輪。

 これらを要人警護や影の五属の人たちが使えると便利になるからね。


 マジックポーチに関しては密輸対策として、誰でも手を入れると中に入っているものがわかる仕様にしている。


 もちろん俺の家族用には個人認証がしてあるものを採用している。

 魔道具の作り方は今や簡単になってしまった。

 俺のパソコンにしか入れていないが、魔法の効果を示す行書体をその効果ごとに登録してあり、それをいくつかつなげて魔力回路として渦巻き状に描いていく。

 この渦巻き状に描いていくことで、解読しにくくなるし、パソコンの画像ソフトを使って組まないとうまく動作するものができない。

 あとはそれを3Dプリンターで書き出す。

 インクはもちろん魔導インクと樹脂を使ったものだ。

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