25.宝物庫にあった魔道具

 隊長さんと動画についていろいろとしゃべっている時にこそっと

「あの山下という男、本日付けでこの任務から外れることになりました。」

 と俺に教えてくれた。


 確かに人権派なんだと思うよ、山下さん。

 でも特命を帯びて影の五部族の代表としてくるには、いささか度胸の座りが悪いよな。

 ここの宮内庁のリーダーは隊長さんでいいんじゃない?


「そういえば俺、隊長さんたち自衛隊の隊員の人たちの名前知らないだけど…。」

 と隊長にささやき返した。


 隊長はきょとんとして、声に出して笑いだした。

「はははは…。そうだったかな。そういや、自己紹介した記憶がないな。それは失敬した。私は長野敦という。よろしく頼む。」

 そう言って俺に握手を求めてきた。

 そうなんだよな。自衛隊の人が参加するっていうのも急遽聞いたし、そのまま碌に時間もなく出発だったからな。


 俺は長野隊長と話をした後、持って帰ってきた文献にさっそく取り掛かってくれている由美と菜月のところに顔を出した。

 今はまだそれぞれの分野ごとに仕分けしているところだそうだ。仕分けができ次第、メライト領の文官さんたちにスキャンしてもらう予定になっている。


 次は源蔵さんがいる工房に回った。

 源蔵さんとセバスで魔道具の鑑定を行っていた。

 それぞれ名前と機能を記した紙がセロテープで張り付けてある。


 なになに…


 う~ん。これらは確かに国宝モノだな。


 転移門

 2対で一組。魔力を流すことでもう一方の門に転移できる。

 1m×1mが一組。 2m×2mが2組


 空間拡張バッグ

 中に物を入れても重さは感じず、カバンの容量以上のものが入る。

 カバンの中に入れたものは時間が停止する。

 魔力を込めた分だけ拡張する。

 現在100m×100m×10mほどの空間になっている。

 数量5個


 魔力通信機

 魔力を込めることでダイヤルを合わせた相手に通話をすることができる。

 数量10個


 魔力調薬機

 魔力を込めた薬が調薬できる。

 数量1台


 …え?これって、エリクサーを作るための機械じゃないのか?


 俺は魔力調薬機をもう一度詳しく鑑定してくれるようにセバスに頼んだ。


「残念ながら、私の鑑定ではこれ以上の鑑定は行えません。申し訳ない。」

「いやいや、もしわかればという程度だったんでいいですよ。それより、この機械がエリクサーを作る機械なんじゃないですか?」

 と俺はセバスに聞いてみたが、よくわからないという。


 仕方ないね。

 使い方もまだ未知のものだから、少しづつ解析していかないと無理だな。


 今のところ分類を続けている文献からもエリクサーのヒントはまだ出ていない。

 どっかには残ってるんだろうけどね。

 まあ、必ずしも王国に残ってるということではないかもしれないな。


 夜になってようやくじいちゃんと父さんが帰ってきた。

 俺を部屋に呼んで話を始めた。


「道場の蔵にあったぞ。やはりお前が言うとおり、あの箱の片割れのようだ。」

 と俺の前に俺が王国からもらってきたのと同じような箱を取り出した。

 俺は王国からもらった箱を出すと二つは、輝きだした。

 なぜだろう。ひかれあっているような気がする。

 俺はその二つの箱を六芒星ができるように合わせてみた。

 すると一層光が増し、かちゃりと音がした。

「お?ひょっとして合わせたことで開く仕組みなのかな?今開いたような音がしたよね。」

 と俺は上蓋と思われる六芒星を開こうとしたが、開けなかった。

 う~ん。

 これはひょっとして…。

 と、俺は異世界ゲートをくぐるときと同じように魔力を蓋に流し込むようにして触るとそこに確かに蓋はあるのに手だけが箱の中にすり抜けた。

 じいちゃんと父さんも驚愕しながら成り行きを見守っていた。

「……なるほど。じいちゃん、父さん。これはアイテムボックスになっているようだよ。」

「アイテムボックス?」

「うん。今回持って帰った中にも空間拡張バッグというのがあったから、同じような技術のものがあるんじゃないかとは思っていたんだけどね。この箱の中は別の次元空間に通じていて、見た目よりもはるかに多くのものを入れることができる箱だよ。ただ、こんな二つのものが合わさることで一つの機能を持つ魔道具ってすごいよね。」

 と俺は感心しながら、箱の中に何があるか確認していた。


「まだゼクウ語が理解できてないんでせっかく俺の頭の中に何が入っているかのリストが出てるんだけど、よくわからないんだ。これは一度全部出して確かめるしかないね。でもこの部屋じゃ狭すぎるみたいだ。…そうだ、源蔵さんが住んでた家の大広間を借りよう。」

 俺はさっそく源蔵さんに相談して、セバスも一緒に源蔵さんの旧家に行くことにした。

 どうせならと星野家も朝峰家も一緒に行くことになった。

 物が星野家由来のものだということなので、宮内庁職員の立ち合いは遠慮してもらった。


 源蔵さんの旧家は完全にリフォームされていて、現代風になっていて使いやすそうになっていた。

 大広間の畳も新調されたみたいだ。

 俺は星野家と朝峰家の人たちを前に俺が抱えている六芒星の箱について説明した。

 なぜか、半分が星野家にあったことから、ゼクウ国と星野家には何らかのつながりがあることは確かだということを認識してもらった。

「じゃあ、出していくからセバスさん、鑑定をお願いしますね。」

 俺はまず3冊の本を順番に取りだした。

 かなりの厚さがある本だ。


「こ…これは。初めのものが『魔法大全』、次のものが『薬術大全』、そして最後のものが『錬金術大全』となっています。これらのものはゼクウ王国でも遺失されていたといわれるものです。初代と共に行動した異邦人が編み出した魔法と薬術と錬金術がすべてこの本に書かれていると伝えられています。これは大発見だ。」

 とセバスは感動していた。

「まだ本があるんだよ。」

 と俺はそれからまた3冊の本を出した。


「これは…初めのものは『魔道具大全』、次のものは『是空日記』、そして最後のものは『未来へ告げる』と書かれています。」


 俺たちは未来へ告げると聞き、時間的な未来というより、ポン吉ポン子とトタトタと大広間を走り回っているポンタのことを思い浮かべて、ポンタが走るのを目で追っていた。

「そうだよな。ポンタのことのような気がするよな。」

 俺はそう言いながら、俺がポンタといったもんだから呼ばれたのかとポンタは俺の方に来たので抱き上げていった。

「まあ、何にしろ解読していかないとまだまだ分からないね。あとこの箱にはいろんな道具が入ってるみたいだね。」

 俺はそう言いながらポンタを肩車して両手を開けて、次々に六芒星の箱から様々な道具を取り出して並べていった。


「これは…それぞれが今ではもう作れないといわれるほどの一級品の薬術の道具や錬金術の道具、それにこの水晶はステータス開示の魔道具と鑑定では出ています。」


 ここにきてステータスか。

 益々日本のファンタジーだな。

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