15.目まぐるしく回る回る

 翌朝、レンタカー屋が持ってきてくれたワゴン車とうちのワゴン車に分乗して、街に繰り出した。

 夕方までにはメライトに帰っておくほうがいいので、あまりゆっくりはしてられない。

 しかし、昨日話していた貨幣価値などを図るための買い物もしておかないといけない。


 朝から、ファミレスに言って朝食をとることにした。

 メライト組はみんな日本人と変わらない服装をしている。

 が、そのモデルのような体形が人目を引く。

 ……気にしないで行こう。


 昨日の夕食時から、メイドも執事も同じテーブルで同じタイミングで食事をすることをお願いしている。

 日本に貴族社会なんかない。

 日本で食事の間、横に立たせていたら、なんかいじめているような気がしてくる。


 4つほどのテーブルに分かれて、食事をとった。

 メライト組にはそれぞれこちらの人間がついている。

 メニューの読み方から注文の仕方までわからないからね。


 ポンタは朝からずっと俺にべったりとくっついている。

 昨日あんまり俺と一緒にいなかったので夜には少しぐずったらしい。

 いつも俺と寝てるもんな。

 寂しかったんだろう。今日は甘えさせてやろう。

 俺はずっとだっこか肩車をしてポンタと一緒にいた。

 俺は素直にうれしかった。ポンタから父親だと認めてもらえているようで。

 その様子を見て、当主たちも無理やり引き離すのはよくないだろうと思ったらしい。

 朝食をとりながら、マローンがそう言ってきた。

 当面、行き来してほしいということだ。ポンタを連れて。

 俺はそれで了承した。


 朝食をとった後、ようやく店が開く時間になり、まずは100円均一ショップにぞろぞろと向かった。

 箸、スプーン、ストローの類から、鍋や桶などのプラスチック製品や鉄製品、胡椒や塩、唐辛子などの香辛料、カレーなどのルー、手芸用品や工具類、ありとあらゆるものがある。


 その中でも特に当主たちの目を引いたのが、ガラス製品だったようだ。

 透明なガラスは一部の王族などしかもっていないようで、王国では生産されていないそうだ。

 それと、鏡。

 これもここまで写りの良い鏡はないようだ。

 金属の板を磨いたものが現在メライト領にある鏡らしい。


 女性陣にはコスメ類やシャンプー、石鹸などもよさそうだ。

 メイドさんたちはゴム手袋やモップやデッキブラシ、洗剤などが気になっているらしい。

 執事のセバスは老眼鏡をやたら気に入って先代にも勧めていた。

 セバスと先代夫婦ともに老眼鏡は買い求めていた。


 安い商品だといっても多岐に渡る商品群を根こそぎ数個づつ購入していくことになった。

 店長と別室で話し合い、別途自宅に送付してもらえるようにお願いした。

 郵送料さえ支払えば、箱に詰めて郵送してくれるらしい。


 俺たちはその店を出て、今度は家電量販店に向かった。

 ここではパソコンやテレビなどの家電を見るためだ。

 それぞれがうちにあった家電を見つけたり、その値段を確かめたりしている。

 セバスとメイド長のマリアは100円均一で買ってきたメモ帳とボールペンを片手にそれらをメモしていた。


 俺は店員に頼んで、この店にあるあらゆる商品のカタログを2セット作ってもらうように頼んだ。

 初めは怪訝そうにしていたが、俺は今後もここで買うし、今日もノートパソコンを10台、タブレットも10台買って帰ると言うと途端に態度が豹変した。


 先代様と奥様はマッサージチェアにはまってしまった。

 あれはしばらく離れられんだろう。


 俺はポンタを肩車したまま、発電設備や蓄電設備のコーナーで相談をかけることにした。

 水力発電機なども取り寄せることができるようで、それらのカタログもお願いした。

 まず、発電設備がないと電化製品が使えないからね。

 それぞれの欲しいものはまた今度だね。

 買って帰っても今はまだそれをメライトに設置できないからね。

 だから先代、そんなに駄々こねないでください。

 やっとの思いで先代をマッサージチェアから引きはがして、次に向かったのは時間もお昼を過ぎたあたりなので、ステーキハウスに行くことにした。


 チェーン展開しているステーキハウスで日本で食べられている一般的なステーキを楽しんでもらおうと考えたのだ。

 ポンタはすでにつかまり立ちはできるし、少しなら歩くこともできる。

 食事も離乳食から始めて、最近では何でも食べている。

 少し早いのかもしれないが、特に体調を壊すこともないので、食べさせている。

 ステーキハウスでポンタが食べるのはハンバーグだ。

 結構食欲旺盛で、半分ぐらいはペロッと食べてしまう。

 当主や先代に聞くとメライトではそれぐらいが標準だそうで、少しそれを聞いて安心した。

 やはりステーキハウスの肉には驚いていた。

 柔らかくておいしいと。


 さて、改めて今度は女性陣待望の服とコスメ関係だな。

 昨日綿密な作戦が練られていたのを少し聞いていた。


 郊外のショッピングセンターに行き、由美と菜月に任せた。

 俺のカードを渡してあるから大丈夫だろう。


 俺たち男衆はポンタと留守番だ。

 ポンタが遊べるようなところがないか探すとショッピングモール内にキッズスペースというのがあったのでそこに向かった。

 そこにはポンタと同じような1歳か2歳ぐらいの子供もおり、遊んでいた。

 ポンタもその中に混ぜてもらってクッションの積み木やボールプールのようなところで遊ばした。

 途中から先代も一緒になって入って遊んでいた。

 今日は俺の姿が見えないと泣きだすようなので、俺はポンタから見えるところに陣取って、ポンタの写真を撮っていた。

 先代や当代と一緒の姿も取っておく。

 今日帰って、これらをお土産に渡そう。

 俺は逐一菜月とスマホで連絡を取り合いながらいたので、キッズスペースから移動して、地下の飲食スペースに移っていた俺たちを追いかけてみんなが来た。


 ポンタはソフトクリームを食べたがり、俺が店の人につけてもらったスプーンですくいながらちょっとずつ食べさせた。

 あんまり食べるとお腹壊しちゃうからね。

 にしてもメライトの人たちはやはり体が丈夫にできているんだろうか?

 何食べても大丈夫そうだな。

 …と思いながら俺はポンタの世話をしていたんだが、放置していた先代たちがソフトクリームを端から順番に食べて行っていたようだ。

 5本目でトイレを探して走っていった。


 まったく。


 そこにみんなが合流した。

 もちろん女性陣はスィーツに走り、男性陣は焼きそばなどを食べた。

 今食べると晩に食べれなくなるぞ…。

 とはいえ、もうここから出たらあとは帰るだけなのか。

 それなら仕方ないね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る