16.やることてんこもり
俺たちはショッピングセンターを出て、ようやく家に帰ってきた。
もう夜になっている。
俺はいくつか打ち合わせをして、ポンタとともに見送りについていくことになった。
ポンタは何かに気づいているのかもしれないな。
絶対に俺と離れたがらない。
俺は、最悪帰りは明日になると告げて、家を出た。
領主様一行にはそれぞれにLEDライトを持たせて、足元を照らしながら歩いてもらった。
この祠までの道も近いうちに整備しないとな。
祠で二人ずつ、向こうに送り、俺とポンタもメライトに戻ってきた。
こちらはまだ少し明るいようだ。
どれぐらいの時差があるんだろう?
またそれらも解き明かす時間があればいいな。
領主館につき、早速だが、錬金術と薬術の書籍を借り受けた。
もちろん何が書いてあるのかさっぱりわからん。
そこでスフィアにお願いして文字を一つ一つ分解して、その発音も教えてもらった。
その上で、様々なものの単語を書き出してもらった。
それに日本語訳をつけていく。そうやって一つずつわかるように辞書を作らないと、とても本など読めたものじゃない。
俺とスフィアが辞書作りをしている間、同じ部屋でポンタと領主夫婦が今日買ってきた積み木で遊んでいる。
やがて遊び疲れたのか、ポンタは俺のところまで着て膝の上によじ登り、寝付いてしまった。
俺はポンタを抱きなおして、すぐ横のソファーに寝かせて、辞書作りを続けた。
イザベルさんもロックと一緒に寝たいのだろう。うつらうつらしながらも一緒にソファーにいた。マローンさんはメライトの酒を持ってきて俺に注いでくれた。
俺はひと段落つけて、マローンさんの酒に付き合った。
先代のマルクスさんとシャーロットさんは、こちらに帰ってきてからすぐに自分たちの屋敷に帰っていった。
マローンさんは酒を飲みながら、ロックがいなかった日々のことを教えてくれた。
そして、まだ犯人が捕まっていないこと。
それらを考えるとやはり日本にいた方が安全だということ。
しかし、イザベルのことを考えると…と堂々巡りになってしまった。
俺は
「いつでもうちに来て泊まっていけばいい。当分の間一緒に住んでもいいんだから。間取りが決まったら家も建てるから早めに決めてくれ。」
と伝えた。
今日買ってきた商品だけでも相当な量になる。
騎士の皆さんやメイドの皆さんがふうふう言いながら持って帰ってきた。
あれらも出入りの商人を呼んで査定してもらう必要がある。
俺は日本で祠までの道を作らなきゃいけないし、こっちに持ってくる発電システムなども組まなきゃいけない。
今やっている辞書作りも進めないと、本も読めない。
翻訳魔法をはじめとした魔法も覚えないといけないし、できれば錬金術で何か道具を作って、日本とこちらの行き来ができるようなものを作らないといつまでたっても俺が仲介しなければいけない。
だから、魔道具の開発も含めて当分俺は日本でやらなきゃいけないことをやるつもりだ。そしてできればスフィアにそれを手伝ってもらいたい。そう、申し入れた。
時差がどれだけあるのかまだわからないが、時間を決めて日本とメライトを行き来して、人の送り迎えや情報の受け渡し、商品の受け渡しをする必要がある。
そのうちあの祠にあるゲートの謎も解き明かしてどこからでも行き来できるような道具もできればいいな。
う~ん。これって分担できるかな?
今日はもう寝るか。
ポンタをイザベルさんと一緒にベットまで連れて行って同じベットに入れておこう。
もちろん、俺がポンタでマローンがイザベルさんを運んだ。
俺は用意してくれた部屋で寝させてもらった。
翌朝、起きると俺の上にポンタが乗っていた。
いつ来たんだろう?
まあ、かわいいから何でもいいや。
俺はポンタの頭をなでながらゆっくりと目覚めていった。
今度は菜月が寂しがるだろうな。
俺は起き上がって、ポンタを眠ったまま抱き上げた。
昨夜辞書を作っていた部屋に行って、辞書作りのためのメモに起こしたものとお借りした書籍をもって、日本に帰る支度をした。
昼にはまた、こちらに来ると言い残して、俺はポンタを抱きかかえたまま日本に帰った。
石の祠を出て、藪を通り抜けて家に帰った。
俺は菜月にポンタを預けて、工房の裏にある重機置場に向かった。
ここには建設機械が置いてある。ログハウスを作った時に大活躍してくれていた重機たちだ。俺はバックホーに乗り込み、山の出入りするところまで向かった。
途中、思い出してチェーンソーを持ってきた。防塵マスクとゴーグルも一緒に。
俺はとりあえず祠までの道を作るために藪を4mほどの幅で切り開いていった。
木も切り倒していく。1時間ほどで切り株だけが残っている状態にまでなった。
ようやくバックホーの出番だ。
バックホーのシャベル部分で木の根っこを掘り起こしていく。
2時間ほどかけてようやく道が開通した。
あとは何度かキャタピラで踏み固めて、廃土板で地面をならしていく。
あとはどうしようか。コンクリートで固めてもいいけどどうせなら石畳というかブロックタイルを敷き詰めてもいいよな。歩道のように。
少なくとも台車か軽トラックが通れるようにしておかないと、今後荷物のやり取りだけでも大変になるからな。アスファルトが無難なのかな。
それと、石の祠の近くに荷物置場もいりそうだな。
適当な大きさのユニットハウスでも買ってきて置いておくか。
そのあたりを相談しに俺は重機を運転しながら家に帰った。
遅い朝飯を食べたところにちょうど源蔵さんがやってきた。
「友朗。昨日話していた戸籍作るために彼らの生年月日や写真なんかが必要になるらしい。」
「了解しました。今日も昼から一度向こうに行くので確認しておきますね。それと、朝から祠までの道を作ってたんですけど工務店の人に舗装を頼むことってできますか?それと、祠の横にユニットハウスが欲しいんですが。」
「じゃあ、工務店の連中呼んでおくから友朗が話をしてくれ。」
とその場で電話してくれた。
そこへ起きたポンタがトタトタと俺のほうに歩いてきた。
俺はポンタを抱き上げて膝に座らした。
まだ眠いようだ。昨日はたくさん遊んだからな。
電話して30分ほどで工務店の社長がやってきた。
祠までの6m幅での舗装とドン付きの右奥にユニットハウスを置いてもらうようにお願いした。ユニットハウスの大きさは2K×3Kでお願いしておいた。
それぐらいあれば、とりあえずはいいだろう。
ユニットハウスを置くところも少し広めに舗装してもらうように頼んだ。トラックが転回するスペースも必要だろう。
俺はポンタを菜月に預けようとしたが、ぐずって泣き出してしまうので、仕方がないので菜月にもついてきてもらって、ポンタと3人で昨日行った家電量販店に向かった。
水力発電機のカタログが届いているはずだ。
俺は発電設備の担当者と話をして、ちょうどいい大きさのものを10台ほど注文しておいた。
あとそれに伴う蓄電設備と電気温水器なども注文した。
設置はこちらでやると伝え、家に納品してもらうことになった。
電気温水器は業務用の大きなものにした。
それらの納品は1週間後になるそうだ。
俺はカタログだけ持って、家に帰った。
昨日買ってきたノートパソコンとタブレットのセットアップを始めた。
それぞれ10台もあると大変だ。
アップデートしている最中に俺は昼ご飯を頂いた。
今日はざるそばだ。天ぷらも付けてくれている。
うん、うまい。暑い盛りはこういうものがのどを通るよね。
俺は食事中もずっとポンタを抱っこしていた。
昨日、おとといで大分ポンタに不信感を抱かせてしまったようだ。
俺は言葉でも言い聞かせた。わからないだろうけど。
「ポンタの本当のお父さんとお母さんという人が現れたんだ。父さんと母さんはいつでもポンタの近くにいるけど、その本当のお母さんたちとも仲良くしてあげてね。父さんと母さんはずっとポンタと一緒にいるからね。ポンタを置いてどこにもいかないよ。」
俺は頭をなでながらそう言い聞かせた。
俺はポンタを抱えて、菜月や星野家を総動員して、手伝ってもらうようにお願いした。
朝峰家も含めて全員でメライトに向かった。
午前中に道を作っておいたので、今回は楽に移動できた。工務店の人がいたので、山すそから俺の家の方までも道を作ってほしいことを伝えておいた。
これで納品してくる車をそのまま祠前まで乗り付けてユニットハウスの中にしまっておくことができるだろう。
そうでもしないといちいち工房に納品してもらってそれを軽トラックに積みなおして、もっていかなきゃいけない。
ひと手間省けただけで、大違いだ。
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