14.貨幣価値
「それじゃ、錬金術と薬術は当家にある書籍を貸し与えましょう。それでいいですか?」
と当代。
「それで結構です。それと祠の先にある迎賓館を当面の間、星野家に貸してください。」
「それはもちろんいいですよ。ただ、こちらの人が向こうにずっと門番のようにいることも難しいでしょうから、当家のメイドたちで番をするようにしておきます。」
と申し出てくれた。なんでも日常的に掃除などもしておく必要があるため出入りは頻繁に行われていたらしい。ついでなのでと言われたのでお願いしておいた。
あとは徐々にお互いに必要なものをそろえていけばいいね。
そうすると俺は家2件分ほどの発電システムと家電を買わないといけないな。
迎賓館と領主館の2件分ほどは手配しておく必要がありそうだ。
それとこっちにも領主の館と先代の館がいるね。
なんかこの山間のドン付きのところだけ、どんどん人口密度が上がっているんだが…。
まあ、いいか。
この辺一帯は朝峰家がほとんど牛耳っているといっても過言じゃない。
警察から市長、企業などにも朝峰家縁者が多い。
秘密もある程度守られるだろう。
これって異世界と国交を開くことになっちゃうのかな?
すると最終的には日本国政府と向こうの国王あたりとなにがしかの条約締結とかになるのかな?
……いや、無理だな。
大体が俺やじいちゃんじゃないと見えない祠が異世界とのゲートなんだからな。
ずっと俺が門番やらなきゃいけなくなる。
ないない。それだけはない。
まあ、うまくやっていこう。
そろそろ酒も回ってきたので、部屋に入って飲むことにした。
メイドさんたちがBBQの後片付けをしてくれていた。ありがたい。
先代と当代の奥様方とスフィアさんとうちの嫁と由美とポンタで工房の露天風呂に入るように言った。
ここに入浴施設があることに驚かれた。
まあ、趣味で作りましたからね。
今日買ってきた寝間着代わりの作務衣なども出して着替えてもらうことにした。
俺たちは工房の中の囲炉裏の部屋に集まって、飲むことにした。
この部屋も結構大きく作ってある。
そこには俺の趣味の陶芸などの工芸全般の資料やDVDがある。
それに源蔵さんと飲むときにあってもいいなと思って、アメリカのアニメのDVDや世界遺産や世界の名勝のDVDなんかもある。
それを見ながら、日本という国とそれを取り巻く世界を説明した。
はじめテレビにも驚き、DVDにも驚いていたが、やがて俺の説明を聞き、画面を食い入るように見だした。
結構大きなテレビなんで、みんなで見れるのが良かった。
ただ、DVDの解説は日本語か英語なので、これには翻訳魔法も聞かないようで、俺がその都度翻訳していた。
俺は向こうの文字も覚えなきゃいけないな。
それで日本語に翻訳してみよう。
逆も必要なのか。
日本語を向こうの言葉に翻訳するのはスフィアに頑張ってもらおう。
そういえばパソコンのフォントを作れるソフトが売っていたな。
ああいうのを使って日本で使っているパソコンで向こうの言葉が打てるようにするのもいいな。
お互いの文化交流が進みそうだ。
白熱した話をしていると女性陣がお風呂から上がってきたようだ。
色とりどりの甚兵衛に着替えた皆さんは結構あでやかだ。
ポンタもキャッキャと喜んでいる。
今度は男性陣の番だ。
俺はまず今日買ってきた着替えをそれぞれに持たせて、俺も着替えを取ってきて露天風呂に向かった。
脱衣所で服を脱ぎタオル一枚持って風呂場へ。
そこでかけ湯をして、まず体を洗い、頭も洗ってから風呂に入る。
石鹸の泡立ちやシャンプーの香りなどが好評のようだった。
うちの露天風呂は10人は入れるように改装してあった。
これは親父たちがここに住むと言い出したからだ。
改装しておいてよかった。
頭にタオルを載せて、みな同じように風呂につかる。
雨よけの屋根の向こうに月が見えている。
虫の声もする。
良いな、やっぱり日本の夏はこうでなくっちゃ。
俺たちはのんびりと風呂につかり、のぼせる前に上がった。
メライト組はことのほか露天風呂が気に入ったらしい。
戻ったらぜひ作ると張り切っていた。
給湯機とかあるのかね…。ある程度相談に乗ってあげた方がいいだろうな。
聞いてみると領主館の近くに川があるらしい。
じゃあ、水力発電機だな。
太陽光発電は日が照っている時にしか発電しないし、風力発電も風が吹かなきゃ発電しない。
そういった意味では水力発電一択だろうな。
干ばつの危険はあるだろうけど、その時は別の意味でお風呂は使えないしね。
俺たちは湯冷ましに又ビールを飲みながら工房の縁側で蚊取り線香をつけて涼んでいた。
そこへ女性軍があまりに誰も帰ってこないので覗きに来たらしい。
キッチンは工房にもあるので、酒のつまみを作って食べながら飲んだ。
ポンタはイザベラさんに抱かれながら眠っていた。
それを当代と先代がほほえましそうに眺めていた。
「あ、そうだ。」
と先代が何かを思い出したようだ。
「そういえばこちらの通貨をいくらか都合つけてはくれまいか。向こうの通貨はこちらで手配するので。」
「それなら、お互い等価値で、両替しましょう。」
と話し出した。
しかしモノの値段で話し合ったところ、どうやら貨幣価値の基準が日本の1/10ぐらいだということに気づいた。
まあ、確かにそれぐらいの文化的差は出てくるんだろうな。
いろいろと話し合った結果、日本のお金を1億円、メライトの通貨である王国金貨を1万枚で交換することにした。話を聞く限りだと王国金貨一枚が1万円ぐらいだろうか。
まだはじめなので、一年間トータルして、差益分は翌年還元することで合意した。
ただ文化の違いというのはその国の商品などを転売してみたらすぐにその価値が図れる。
例えば100円均一で買ってきたガラスのコップでもメライトで売ろうとすると金貨2~3枚という価値に化けるらしい。
王国金貨は見せてもらってキッチンスケールで重さをはかると5gほどあった。g6,000円ぐらいだとすると王国金貨一枚3万円ということになる。
これだけでも俺の方は十分もうけになってしまう。
なのでそこらあたりは今後の相談ということで先送りにした。
俺はすでに株の売買益で20億ほどに資産を増やしている。
親父自身も2億ほど資産を持っていた。
最近はそれを俺の株の買い目に合わせて増やせと命令されている。
まあ、家族の資産が増えるのはいいことかと俺もそのまま従っている。
ちなみにお袋と妹の口座も作ってそれぞれ1億円を振り込んで資産を増やしている。
クレジットカードを渡してそれぞれで管理させている。
菜月にも同じように渡している。
菜月には5億ほどの口座を渡している。
当然嫁さんと妹との扱いは違うのだ。
これらを使ってそれぞれ商売をしてみることにした。
まあ、うちの家族は趣味で使うことはあっても浪費することはないだろうから、大丈夫だろう。
源蔵さんちの資産は知らない。
しかし、俺なんかとはけた違いに持っているだろう。
だから、心配はしていない。
さて、そろそろ寝るか。みんなそれぞれ割り当てた部屋に行った。
明日はメライト様ご一行の日本観光が待っている。
どこに連れて行こうかと考えながらベッドに入って寝た。
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