13.BBQ
うちの家の敷地には現在3棟のログハウスと1棟の大きな工房、そして材料などを入れている資材倉庫と建設重機が並べてある重機置場がある。
3棟のログハウスは一直線に道路と並行に並んでいる。
そして真ん中の俺のうちの裏に工房がある。その工房の奥が資材倉庫、重機置場となっている
その工房の前でバーベキューセットを出して炭をおこした。
あと家に帰ってきてから気づいたけど、酒を買い足さないと足りないよな?
俺は街の酒の量販店に電話して、冷えている缶ビールを3ダースほどと冷えてないのも5ダース。ウィスキーやブランデーワインなども適当に見繕ってもらって30万円分ほどを持ってきてもらうように注文した。
田舎の量販店だから、週末以外は結構暇なようで、喜んで持ってきてくれた。
俺は現金で払って領収書をもらっておいた。
工房のシャッターを全面開けて光が外に漏れだすようにして、照明もキャンプ用に持っていたものを4台ほどで照らした。
買ってきた椅子も並べてようやく夕食の会場が整った。
酒屋が酒を持ってきてくれたので、工房の方にある業務用冷蔵庫の方に入れてもらった。
ロックアイスも持ってきてくれたようだ。失念していたので良かった。
それらは一部業務用冷凍庫の方に入れてもらった。30袋ほど持ってきてくれたようで、サービスだと店主は笑った。
お金を払い、酒屋は帰っていった。
もう時間もだいぶいい感じになってきた。
今は夏だが、そろそろ暗くなってくるころだろう。
俺たちが買い物に行っている間にそれぞれが色々と話をして打ち解けていたようだ。
源蔵さんも先代さんたちを工房に案内していたようだ。
源蔵さんに聞くと戸籍は何とかなりそうだということだ。
しかし、後日俺も入れて話し合いをする必要はあるようだ。
いろいろと費用も掛かるだろうしね。
急遽地元の朝峰神社の宮司も呼ばれてきたようだ。
それに戸籍の手配をしてもらうために電話を掛けたついでに市長と助役も駆けつけてきた。
3人ぐらいなら工房の中にある椅子で十分間に合うだろう。
テーブルも作業台として買ってあるのがたくさんあるしね。
それらも全部組み立てて並べた。
うちのキッチンから仕込みを終えた串に刺さった肉や野菜を大皿に入れて運んできた。
じゃあそろそろ始めるか。
俺は一人缶ビールをもってみんなの前に出た。
「今日は縁あって、ポンタ、もともとの名前はロックらしいが、俺はどうにもポンタとしか呼べそうにないのでご勘弁ください。そのポンタを取り巻く人たちがここに集まってくれました。違う世界のメライト家の人たちも参加していただいています。拍手。」
そう言って俺は一旦ビールをテーブルに置いて拍手した。
みんなから拍手を受けてメライト家の人々はそれぞれに礼をした。
「それと朝峰家の方々。」
俺はまた拍手した。今度は源蔵さんや市長たちが拍手に答えた。
「そしてうちの星野家です。」
俺たち夫婦と両親達と由美が拍手に答えて礼をした。
「これからも長い付き合いになっていくと思います。みんな末永く仲良くやっていけるようにお互いを気遣って、心地よい時間が過ごせるようにしましょう。それではポンタの成長を祝って乾杯!」
「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」
俺たちはそれぞれの飲み物で乾杯した。
メライト家の人々にはグラスに注いであげていた。
缶ビールなんてないだろうからな。
話しているうちにどうやら最初に予想していたようにヨーロッパでの中世辺りの文化水準らしい。
だからこちらに来て、見るものすべてが珍しいようで、いろいろとみんなが質問攻めにあっていたようだ。
工房にあったそれぞれの工作機械などにも興味を示していたようだ。
これらを向こうで使おうとするとまず発電設備がいるからな。
それぞれ、串を取り、肉や野菜を食べて、酒を飲んでいろいろと話に花が咲いているようだ。
俺は結婚式のときに一度会っただけの市長や助役や宮司に今の状況を説明した。
異世界というのがよくわからないようだが、初代からの朝峰家の言い伝えは知っていた。その『ありくさ』の供給元だと話をすると食いついてきた。
「その万能薬、ありくさでしたか、えり草でしたか。」
「エリクサーですね。」
「そう、それ。それって、今も手に入るものなのでしょうか?」
と市長が聞いてきた。
「先ほど話を聞いてみたんですけど、現在では製法が失伝されてしまって再現は無理らしいです。しかし、かなり日本にはない薬があるらしいですから、そのうち源蔵さんが何とか仕入れてみたいといっていましたよ。」
と、源蔵さんに話を振ってみた。
すると源蔵さんは
「御先祖様が手に入れた異世界の薬だからな。ありくさの再現が無理でも、せめて同じような薬が日本で販売できないか試してみるつもりだ。元々朝峰家は薬師の家系だからな。残念ながら薬草が手に入らなくなって廃れてしまったんだけど。それがあちらの世界ではまだ薬草が十分にあるらしい。一度宮司に協力してもらって、ご先祖様の書物を全部解読しなけりゃならんな。これは現代の朝峰家の命題だ。」
と、真剣に考えているようだ。
すると宮司は
「その様々な薬にまつわる書物や道具を後世に伝えて、天皇家にもしものことがあった時にお助けするというのが、朝峰家の使命でもありました。そしてそれを代々守っているのが私ども朝峰神社なのです。なんでも気を込めることで異界渡りができたそうですので、ぜひ友朗さんも一度当神社の神殿をご覧いただきたいのです。これは代々宮司のみが継承していたことなのですが、神殿の中に地下室があり、そのカギを私どもが守っております。
ひょっとすると初代の異世界にかかわる何かが収められているのかもしれません。友朗さん、一度時間を作って見に来てもらえませんか?」
と問いかけてきた。
俺は時間を作ってぜひ見に行きますと答えた。
現代日本とメライト領がうまく良い関係になればいいなと俺は思っていた。
そこへマローン領主と先代領主のマルクスがビール片手に来た。
近くの椅子を寄せて座ってもらい話に加わってもらった。
あ、宮司さんたちにはこのままでは会話がわからないな。
当代当主についてきていたセバスに又頼んで3人に追加して翻訳魔法をかけてもらった。
「このビールという酒はうまいな。苦みが何ともいえん。それによく冷えていて、のど越しもいい。」
と当代。
「わしもビールは気に入っておるが、このソーセージというのもうまいな。なんでも腸詰らしいが、いろいろと香草も入っているようで何とも言えん香りがいい。」
と先代。
「日本のビールも食べ物も、よその国から見てもこだわりすぎだって言われるほどこだわって作ってますからね。この日本にはもっとおいしいものもたくさんありますよ。」
パシッといい音を立ててソーセージをかじり、ビールを飲んだ。
「妻たちは当面向こうでしなければならない仕事もないのでこっちにいても大丈夫だろうが、わしらはそうはいかんからな。何かと執務もあるし、年に1度は王都にもいかなきゃならん。これは貴族のしきたりでな。何とかメライトでもこれらのものが食べたり飲んだりできるように取り計らってくれんかの?」
と先代さんが俺にお願いしてきた。
「わかりました。方法はいろいろとありますので、じっくり考えてやっていきましょう。しかし、それらを実現するにもお金はかかります。何かそちらのもので日本に売れるものがあれば一番いいんですが。」
と俺は答えた。
しかし、俺は先ほど源蔵さんと話をしていた中でヒントを持っていた。
「そこで、俺たちにそちらの世界の魔法や錬金術、薬草術を教えてもらえませんか?それとこちらで滞在される家は俺が建てますので、そちらの領都で私たちに家を1軒いただけませんか?」
と俺は交渉してみた。
するとその話を聞いていたのだろう、スフィアが寄ってきて話をしだした。
「それなら私が魔法をお教えしますわ。」
と、指先に光の玉を浮かべてそう言った。
それを見た市長たちは驚いていた。
自分たちもさっき翻訳魔法をかけてもらっただろうに。
確かに目に見える形での魔法は驚くよね。俺も驚いた。
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