エピローグ

作戦から2日

N市 国際環境情報大学付属病院


「全く……私もそうそう暇じゃ無いのに」

「でも紫月さん、そう言いながらも予定をすぐ空けてくれたじゃないですか。

「それは……放って置いたら何をするか分からないし……」

「でも分かります。稲本さんも放って置いたら何しでかすか……」

「稲本さんとか夜中に抜け出して素振りとかしてそうっすもんね!!」

「プロトタイプはそれを全力で阻止してそうですね。性格悪いですし」

「政宗君、胃に穴空いてそう……」


開かれたエレベーターの先に広がるのは清潔に維持された白い廊下。

まだ1日が始まってわずかというのに点滴を引く患者たちは歩き回り、看護士や医師は慌ただしくその隙間を縫うように駆け回っていた。


普段はそんな場所と無縁の彼女らはその様子を物珍しそうに眺めていた。

「おお、みんな来てくれたかい」

彼女らを出迎えたのは藪、そして真奈の二人。

「政宗達、調子はどうですか?」

「ああ、その事なんだけどね……」

「まあ、見た方が早いじゃろ」


藪に案内される彼女ら。

5部屋ほど離れたところからもすでに少し声が聞こえ始め、全員大方予想がつき始めていた。

そしてドアを開けた瞬間、

「てーめぇ昨日はよくも邪魔してくれたなぁ!?」

「夜中に抜け出して素振りしようとしてたお前が悪いだろうが」

「ワイヤートラップまで仕掛ける必要はなかっただろうがぁ!?」

叫び声が溢れ出てきた。


「こらお前ら病院では静かにしろって言ってるじゃろうがァ!!」

「「コイツが悪い!!」」

「藪先生〜〜、部屋変えてくださいよ〜〜」

包帯まみれになった政宗は藪に泣きつき、稲本と黒鉄はベッドに繋がれてなければ今にも戦い始めそうな様子だった。

「兄さん、入院中くらいは大人しくしてって言ってるでしょ!!」

「お、俺は大人しくしている……」

「ワイヤートラップを張ることを大人しくとは言いません!!」

「稲本さんも何で素振りしようとしてるんですか!!」

「い、いや鈍ったらダメだし……」

「結構な傷で帰ってきたんですからちゃんと休んでください!!」


2人の大の大人が年下の女性に叱られるのを呆れるように眺める紫月達。

「ああそういえば柊木君、これお見舞いよ。黒鉄達と食べて」

「あ、紫月さんありがとうございます……」

「す、凄い賑やかだね……」

「何というか、予想通りと言えば予想通りっすね……」

「プロトタイプもいい歳して大人気ないですからね」

「だ、大丈夫政宗君……?」

「胃にも穴が空きそうだようん……」


ただ、それでも紫月はどこか微笑ましそうにその様子を眺めていた。

「どうしたんですか、紫月さん……?」

「いえ、稲本もアレクシアも、黒鉄も前より憑物が落ちたように見えたのよ」

「そうですね。稲本さんの胡散臭さは相変わらずですけど」

「ただこう、我武者羅なのは相変わらずというか……」

「ああいうのは我武者羅って言うよりは、馬鹿と言うのよ」

「ははは……僕にはああはなれないから少し羨ましいというか……」

「政宗、アンタももうそっち側だよ……」

「嘘!?」


騒がしくも賑やかな病室に風が吹いた。

澄み渡る空にさえも彼らの声は響き、遠く遠く彼方へと飛んでいく……


これは彼らの一つの戦いの記録。

そして彼らはこれからも戦い続ける。

友の為、仲間のため、大切な人たちの為に。


たとえどれだけ傷つこうとも、蔑まれようとも。


彼らは我武者羅に戦い続けるのだ……


to be continued……

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Party of Daredevils 〜我武者羅達の狂宴譚〜 芋メガネ @imo_megane

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