第34話 最低な世界3
ルカは再びバイクを走らせ、魔界を目指していた。
「全く、酷い目にあったでしゅ」
ギギは後ろで、何とか自分で傷の手当てをした。
「ギギ、自業自得つー言葉知っているか?」
「知らないでしゅ」
「あっそう」
「ねえ、魔界に入るには、厳しい入国手続きが必要みたいだけど」
「ああ、魔界のギルドでやるんだ。大丈夫。知り合いいるから、入国は簡単だよ」
「でも、なんで必要なの?」
入国手続きは大国なら、簡単な物は行われるが、魔界は特に厳しかった。
「防犯だよ。魔界を嫌う人間が、内部でテロを起こさない為にな」
「へー」
「まあ、俺の伝手で、面接で済むよ」
「なに、聞かれるの?」
「それは」
「それは?」
「あのオジサンの事だ。俺とお前の関係は? だな」
「なに、それ」
「行けば分かるよ。着いた」
ルカ達は魔族のギルドに着いた。
ルカは入り口にバイクを置き、全員降りた。
「ここで待ってろ」
入り口には衛兵がいて、ルカは話をつけ始めた。
しばらくすると、戻って来た。
「中に入るぞ」
「ええ」
「ギギも入るぞ」
「嫌でしゅ」
「まだ、すぬているのかよ」
「当たり前でしゅ」
「そうか」
ルカは銀貨をギギの頭にちらつかせた。
「銀貨~」
ルカはギギに取られないように、避けながら歩き始めた。
「ニア。行くぞ」
「うん」
(本当に、単純な小動物)
ニアはルカについて行った。
「久しぶりだな。ゼブル兄さん」
ルカはゼブルに軽く挨拶した。
「ああ、早く面接するぞ」
二人と一匹を確認すると、前を歩いた。
「分かった。ニア。行くよ」
「ええ、ってルカ」
ヒソヒソと話ながら歩いた。
「なんだ?」
「その前に、魔族は聴覚いいって聞くけど会話、聞こえる?」
「大丈夫だよ。聞こえても多少の事は許すから」
「なら、いいけど、随分、他の二人と違う気がするんだけど」
「ああ、驚いたか? ゼブル兄さんって、そー言う意味で、一番生真面目なんだ」
「へー」
「着いたぞ」
本当に聞こえていないのか、聞いていないように振る舞っているのか、なに事も無かったかのように、案内してゼブルが先に部屋に入った。
「ああ」
ルカ達も中に入る。
部屋の中は至ってシンプルで、社会人が就職をする為の面接室と同じように、イスと机が配置されていた。
ゼブルは机が近くにあるイスに座った。
その正面にはイスが二脚あり、ルカとニアが座った。
ルカは足を崩し、だらしなく座っているのに対して、ニアはちゃんと座っていた。
「僕の名前はベルゼブブ。ゼブルでいい。人間から魔王扱いされている者の一人だ」
席につくのを確認すると、ニアに自己紹介をした。
「ニアです」
ニアは緊張していた。
こんな魔族と想像していなかった。
「話しはメフィストから聞いてる」
「はあ」
「魔界に両親探しね」
話がどんどん進めていた。
「あのー」
ニアが両親の居場所を聞こうとしたが、緊張で言葉を飲み込んだ。
「場所は知っています。ですが、その前に審査がありますから」
「ええ」
余計、体が緊張した。
「大丈夫。落ち着いて」
ルカが落ち着かせようとした。
(そんなの無理だよ)
ニアは顔が強張っていた。
「それで、そこのガキとはどんな関係だ?」
しかし、聞いて来た内容は、ルカと同じ事を言っていた。
「えーと」
「答えられない関係なのですか?」
「いいえ、別に」
「では、どうなのですか?」
「ルカとは、魔界に連れて行って貰った、タダの同行人です」
「そうですか、本当にそれだけですか?」
ニアの目を真剣に見てしつこく確認した。
「ええ」
「分かりました。一時間で書類作りますから、ロビーで待っていて下さい」
ゼブルが少し笑顔を見せると、部屋を出て行った。
「って、これだけ!」
ニアが大声を上げた。
「ちょっと、ルカ。これって」
ルカは部屋の隅で落ち込んでいた。
「はあ……」
深いため息が漏れた。
「どうしたの?」
「タダのは、無いよな。せめて、タダのは抜いて欲しかった」
「ああ、それね。そんな事ね」
「はあ……」
「ねえ、ロビー行って、お茶にしましょう」
「うん、そうだな……」
ルカは背筋を丸め歩いた。
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