第33話 最低な世界2
鍋を囲み、二人と一匹はご飯を食べていた。
「それで、魔界ってどんな所なの?」
「科学が最も発達した。近未来都市だよ。ニアの村が科学力レベルを一だとすると、ヒルアは五〇、魔界は百って所だな」
「その例え、イマイチ、ピンと来ないけど、そんなに凄いの?」
「ああ、ギギなんかはその科学の結晶体だな、コウモリに知性を入れさせるなんて、ニアの村じゃ無理だろう?」
「ええ、ちゃんと育てるのでやっとかも」
「ヒルアは調教でもって、それに郵便配達と簡単な言語を覚えさせるのは、可能だろうが、人としての自我や変身能力は、魔界にしか出来ないんだ」
「なる程」
「だから、人間が魔界に住みたがらないのは、本当の話。進みすぎた科学を人間は好まなかったからな」
「だから、田舎が染み付いた人間はさ~」
「こら、ギギ」
「なんでも無いでしゅ。ご馳走様でしゅ」
ギギはカレーの一気に食べ、助手席にダイブした。
「ヒルアが成功したのは、自然も残しつつ、便利過ぎない程度に、魔界の科学を取り入れた結果って訳」
「へー」
「でも、それに至る前は相当苦労したって、聞くよ。大魔王ルシファーだから、出来た功績だな。多分だけど、当分はあんな街は出来ないよ」
「そうなんだ~」
「そんな近未来都市で、犯罪が多い訳無いだろう? 防犯機能が完備されているから」
「そうか、でも、魔族って、血の気多いじゃない。暴れたりしないの?」
「その為に円形闘技場のような、戦いを専門とした施設があるんだ。みんなしのぎを削り戦うんだ」
「へー」
「俺も一応そこで戦っていたよ。ギルドに入って世界周る時、闘技場で成果を示さないと、出さない。なんてじーちゃんに言われてな。まあ、実力を試せたから、いいんだけどな」
「そうなんだ~」
「だから、この本に書かれている事の大半は、デタラメだな」
「そうなの!」
「ああ、誰だよ。こんなのを書いたのは、こんな魔界をバカにしたような雑誌」
「これ、ギギに貰った。たまには親切にするんだな~って、感心したけど」
「へー。ギギ」
「ギクッ。なんでしゅ?」
「今、ギクッて言ったよな」
「き、気のせいでしゅ」
「ニア。バイクの運転したかったよな?」
「ええ」
「乗せてやるよ」
「いいの?」
「ああ、ここは平地だしな。教えてやるよ」
逃げようとしたギギを、ルカは素早く手を伸ばし捕まえ、いつの間にか用意していた紐をギギに巻き付け、バイクにくくりつけた。
そして、助手席を分離させた。
「これでよし。ニア乗っていいよ」
「うん」
「なにをするでしゅ」
「質問しているのは、こっちだ。答える義務はあるが、質問する権利は無い。これはどうしたんだ?」
ルカはギギに聞く。
「別に、ただの本でしゅ」
ギギはしらを切っている。
「ニア。ここがエンジンだ。ここで、ブレーキ。アクセルに……」
ルカがバイクの説明を始めた。
「話すでしゅ。この本は魔界にあった、ゴシップ誌の表紙を変えて、田舎者をビビらせたかっただけでしゅ」
「ニア、最初はゆっくりと、徐々にスピードを上げて、走らせていいよ」
「うん」
ニアはバイクを走らせた。
「止めるでしゅ~話したでしゅ~」
ニアの不安定な運転に翻弄され、荷物置きにこれも不安定に乗っていたギギはなんとか荷物置きから落ちないように、踏ん張っていたが、急に止まりバランスを崩し、コロンと落ちた。
「えーと、これがブレーキだから」
確認しながら、もう一度走らせた。
「だから、止めるでしゅ~」
しばらく、引きずられていた。
ルカは遠目で笑っていた。
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