第16話 魔王(?)メフィストフェレス7
それから五時間後。
「凄い。初めて見た」
ニアは二人乗りのバイクを見て目を輝かせている。
両手と背中にしっかり荷物も持っていた。
「荷物持ちすぎでしゅ」
ギギが文句を言った。
「人の事言え無いだろう。ギギの言う事は気にしなくっていいから」
ルカは後部に荷物置きの蓋を開けた。
「必要な物は別にして、そうでない物はここに入れてくれ、もし、入らないようなら、下着は俺が持つから」
「絶対渡さない!」
「あっそう」
ルカは寂しい顔をした。
「はあ……スケベ」
ニアは荷物を入れる事にした。
「って、なによこれ」
「魔族が魔族と呼ばれる所以は、人間と違い魔力と呼ばれる目に見えない力を自由に使うから、そいつもその一つで、こいつの元は、ただの鉄の塊だが、魔族が生み出し、鉄を乗り物に変えた。そして、荷物入れとなっている所は、半異空間装置つー魔力を集中させ、その場所に密封させ、空間に穴を空けた。ここと、別の空間のハザマと思ってくれて構わないよ。空間のハザマは無尽蔵に広がっているから、荷物の持ち運びには持ってこいの場所なんだ。って、分からないか」
ニアは頭を抱えていた。
「魔族の生み出した科学の結晶。それでいいか?」
「そうね」
ニアは荷物を入れた。
「本当だ。入る。これ、取り出す時はどうするの?」
「俺に下着を見せてだな~」
「また、地面に叩きつけられたい?」
「いえ、結構です」
首を横に振った。
「出したい時は、出したい物を頭の中に描いて、手を入れれば出るから、例えば、ガンソードと」
ルカは手を入れ、しばらくすると、愛剣を出した。
「ほらな。たまに誤作動を起こすが、持ち主にしか反応しないようになっているから、俺がニアの荷物を取り出す事は基本的には出来ないよ」
ルカはまた、中にしまった。
「なる程、魔族って凄いね」
「ああ、だから、世界が一度滅んでも生き長らえたんだよ」
ルカはバイクのエンジンを入れた。
「ああ、そうか。こことは別の世界から来たんだっけ?」
「まあ、今の魔族にそんな力は無いらしいが、その力の応用らしいよ。あとニア、これもやる」
ニアの席に置いていたカメラを手渡しした。
「これって、カメラよね?」
「ああ、村を出るのは初めてだろう?」
「なんで、分かるの?」
「うーん。勘かな。外れてないだろう?」
「うん」
「だから、旅の記念を残すのもいいだろう? 俺は残す事があんま好きじゃないから、あんま撮らないけど、ニアには必要だろうからな」
「ありがとう」
「ああ、さて乗って」
ルカは蓋を閉めて、運転席に座った。
「ギギは後ろでいいな」
後ろとは荷物置きの上だ。
「もう、私の席」
「コウモリでいろ。許可無く人になるのを禁止しているだろう」
「人に戻りたいでしゅう」
「我慢しろ!」
「ねえ、なんで人になれるの?」
ニアに取って魔族の科学、ルカの環境全て新鮮だった。
「知能のしゅくない人間に分かり易く言うと……」
「ちょっと待って、昨日から感じていたけど、あんた、少し人間をバカにし過ぎじゃない」
「バカでしょう?」
「あんたね、ムカつくのよ」
ギギの首を引っ張った。
「ギギや、じーちゃんの近くにいたジジもそうだな。魔族が作り出したコウモリは知能の他に変身能力もオプションで付けられるんだ。魔族の手伝いも兼ねているからな」
「そうでしゅ、しゅばらしいんでしゅ」
「はあ、そうですか、凄い凄い」
ニアは胸を張っているギギに、棒読みで褒めた。
「なんか、バカにされているでしゅ」
「まあまあ、さて行くか」
ルカはバイクを走らせ、草原を突っ走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。