第15話 魔王(?)メフィストフェレス6

 次の日の朝。

 もう少しで昼になる時間、メフィストが大泣きしていた。

「ルカと別れたくないよ~」

 メフィストとジジは次の場所に、旅立たないといけなかった。

(爺バカ)

 ジジとニアがそう思ったのは言うまでも無い。

 流石にルカも苦笑いをしていた。

(ルカの気持ち分かるわ)

 ニアは流石にルカが哀れに思えた。

「メフィスト様行きますよ」

「嫌だ~」

 ジジは強制的にメフィストを連れ出した。

「それではお元気で」

 ジジが一礼した。

「ルカ。困った事があったら、すぐ、報告するんだぞ。ちゃんとご飯食べろよ。ちゃんと歯を磨けよ。ちゃんと寝ろよ……」

 声が聞こえなくなるまで延々と聞こえた。

「じーちゃん……」

 最後にため息をついた。

「さて、もう一眠りするかな~」

 ルカはメフィストが見えなくなると、大きく欠伸をした。

「それよりあんたは、いつまでいるつもりなの?」

「さあな~ギギが仕事持ってくりゃ、すぐにも出るが、寂しいか?」

「別に」

「そうなんだ~」

 ルカは疑っていた。

「なによその目」

「別に~」

「ルカしゃん」

 タイミングよく、ギギが返って来た。

「見つけたか?」

「はいでしゅ」

 ルカにメモを渡した。

「そうか、ここから三日の地か~ギギ、夕方出る。それまで寝かしてくれ」

 ルカは金貨を渡し、欠伸をしていた。

「分かったでしゅ。準備して待っているでしゅ」

「ちょっと待って」

「あん?」

「私も連れて行って」

「ん? なんで?」

「なんででも、行きたい所があるのよ」

「何処?」

「魔界よ」

「なんで?」

「なんででも、こっちも落ち着いて、私は暇になるし、それに行きたいからに決まっているでしょう! 癪だけどあんた強いもん。あんたなら、魔界に行けるでしょう」

 魔族が二百年前、種族が住む為に作られた魔界と呼ばれる所は、人間にとって未開の地となっていた。

 人間を近付けさせないように、強い魔物が魔界を守っているとも言われている。

「ふうん。まあ、可能だが……」

 ルカは考えながら歩き始めた。

「報酬は出すから、足りなくとも働いて出す。だから」

 ニアも追いかける。

「いくら~?」

 ギギが目を輝かせた。

「ギギ。ニアにねだるな。この村の財政を考えたら、期待は出来ないよ」

「そんな~」

「ねえ、ダメ?」

「別にいいけど、ニアが俺の女になるなら」

 ルカが立ち止まった。

「ならないわよ!」

「まあ、そうだろうな。んじゃあ、飯を作ってくれ、朝食、滅茶苦茶美味かった。また食べたいからな~」

 なかなか目の覚めないルカの為に、ニアがわざわざ作ったのだ。

「ちょっとそんなの優しすぎるわ。相手は人間よ。足手まといになるだけでしゅ」

「俺に一本背負いした子だぞ。俺は充分強いと思うぞ。それに俺も人間だし、ギギがダメでも俺は大丈夫だから。飯作ってくれる条件飲むなら、着いて来いよ」

 ルカは満面の笑みを浮かべ、手を出した。

「お願いするわ」

 ニアも手を出し、握手を交わし交渉成立した。

「んじゃあ、俺寝るわ。ギギ、バイクの助手席の荷物どけておけよ」

 ルカは目をこすり、宿屋に戻った。

「もう、分かったわよ。おい、今回だけでしゅからね」

 ギギは泣きなが飛び去った。

「はははっ、さて、私も準備しなきゃ」

 ニアは家に戻った。

 ニアの長いようで短い旅はここから始まるのだった。

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