第三章 最弱な戦士

第17話 最弱な戦士1

 ニアは夢を見ていた。

 昔の出来事だ。

「ニアはおじい様の所で待っていなさい」

 ニアの両親はニアをアヒルの村に残した。

 ニアの両親は学者で研究の為、魔界に行かなくてはならなかった。

 危険だと分かっている場所に、連れて行かせる事は出来なかった。

「私も行きたい」

 まだまだ、子供だったニアはついて行こうとしていた。

「ダメよ。大丈夫。必ず帰って来るから」

 ニアの両親はそう言い残し、ニアを置いて魔界へ旅立った。

 それから一〇年の月日が流れた。


 ニアが旅を始めて次の日の早朝、まだ、太陽が上がってすぐの頃、ニアは目を覚めた。

 ニアはバイクの助手席に眠っている。

 ギギは後ろにバランスよく横になっていた。

「うーん、私のお金~♪」

 ギギは幸せそうに寝言を言っている。

 運転席に上手く寝る事が出来ないルカは、寝袋を出し、バイクの近くに眠っていた。

 そのルカがいなかった。

「あれ? 何処に行った?」

 まさか、置いていかれたのでは?

 一瞬そう考えたが、女の子好きのスケベ魔王が、約束すっぽがして、ニアを置いて行くはずない。

 最悪そうだとして、商売道具のバイクとパートナーのギギを置いて行くはずはない。

 ニアは近くにいると思い、探しに行った。


「おらぁ!」

 ルカは近くの湖で剣を振り回していた。

 数回振り回した後、ニアに気付き、ニアの方を見た。

「おはよう。どうした? 朝食の水くみか?」

 近くに置いてあったタオルで顔を拭いてニアに近付いた。

「いや、いないから気になって」

「そうか」

 腰を下ろし、タオルを置いた。

「ルカも努力するのね。魔族の血があるから必要無いかと思った」

「だから、必要なんだよ。力つーのは、鈍ればそれに振り回されるからな。魔族の血が混ざっていると特にそう思うよ。見ただろう。あの眼」

 ルカはタバコを吸い始めた。

「うん」

「ありゃ、魔力の解放。人間には無い代物だから、強さが有り余るんだ。それに振り回せれ無い為にも努力は必要なんだ」

「へー」

 真面目な事を言い感心した。

「まあ、じーちゃんレベルの魔族になれば、努力も必要ないかも知れないけどな」

「こうやって努力しているのね」

「まあな」

「意外ね」

「そうか?」

「ええ、もっと、女の子の尻を追いかけているのかと思った」

「失礼だぞ!」

「ゴメン」

「まあ、早起きしてニアの下着も盗みたかったな~」

「するな!」

 ルカの頭を殴った。

「あたたっ。冗談だよ。それで、今日の朝食は何だ?」

「まだ、決めてないけど~」

「んじゃあ、フアフアのオムレツ食べたい」

 目をギラギラと輝かせて訴え、少年にしか見えない瞳をした。

「分かったわ」

 ニアは笑った。

「いや~少しの間でもインスタントから脱して良かったよ。ギギじゃああそこまで上手く作れないもん。黒こげの料理は嫌だ~」

「そんな料理を食べていたの?」

「まあね。どうにも魔族は料理が苦手な種族らしくってな。いや、俺の説からすると、科学は発達して、食が衰退したと思う。科学の力でインスタント食品を作って満足させたんだ。あれって人工的な物じゃん? 最初は美味いが飽きるんだよ。人間は畑を耕したり、家畜を飼ったりして、美味いもんを無限に作るじゃん。それは魔族にとって凄い事だったんだ」

「あっ、たがらか~」

「そう。だから、魔族は人間を滅ぼそう何て一粒も思わなかったんだ。魔族も生きる為には食わなけりゃならないからな。じーちゃんがまさにそうだった」

「へー」

「さて、続きやるかな~」

 ルカはタバコをくわえ立ち上がった。

「じゃあ、私も作ろう」

 ニアも立ち上がり、バイクのある所まで戻った。

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