第29話 最凶な悪魔5

 工房は屋敷の中にあったが、意外にひっそりと、していて、大人一人分作業する位の広さだった。

「ニアさんはなにか欲しい、武器無いか? 格安で売るよ」

 やはり商売人だ。無料で渡してはくれない。

「えーと、特には」

「お金は気にしなくっていいよ。ルカが全額負担するから、それ位の財産コイツ持っているからな。なあ副社長」

「ああ、大丈夫だ」

 ルカは自信を持って言った。

「いや、そう言う問題ではなく、あまり使わないから」

「そうか、分かった。欲しくなったら言ってくれ」

「ええ、それより、副社長って何ですか?」

「ああ、コイツ、メフィストの会社の一応副社長何だよ」

「えっ、そうなの?」

「ああ、肩書きだけだけどな。仕事なんか殆どした事は無いけどな。魔界に戻れば、会社には顔を出すけど、まあ、じーちゃんにもしもの事があった時に俺が纏めないといけないから、そう言う役職についている訳だよ」

「へー」

「ルカ。剣をよこせ」

「ああ」

 ルカは渡し、ルシアは剣を抜いた。

「それって、只の剣何ですか? ルカ。銃にも変形させていましたが」

「ああ、これは剣だよ。まあ、勿論只の剣じゃ無いけど、魔力を放つ媒体となる剣なんだ。ルカは強力な魔力を持っているが、それでも人間だ。上手くコントロールする事が出来ない。だから、作られた。銃に変形するのは剣がルカに反応して変化する訳。元の形はこれなんだよ」

「へー」

「ルカは元々剣士では無く銃士なんだよ。だから、変形を可能にした」

「だったら、最初から、銃にすればいいんじゃないですか?」

「そうなんだが、そうもいかないんだ」

「俺のじーちゃんが、俺が銃士になろうとしたら、泣きついたんだ」

「なんで?」

「ランカ、ランカ~って、ばーちゃんの事思い出すみたい何だよ。だから、剣士に転向したんだ」

「はははっ。ねえ、ルカ?」

「なに?」

「メフィストさんが面倒だから、出て行ったんじゃ無いの?」

「ちっ、違う、うーん。違う事にして」

 動揺を隠しきれないでいた。

「あながち間違って無いのね」

「いや、違うから、違うと思う」

「ダメね」

「だって否定したら、泣きつかれるもん。これでも反抗期無かったんだから」

(そこまで爺バカだったら、反抗できねーな)

「まあ、あいつがそこまで、バカになるとは思わなかったよ」

 ルシアも想定出来なかった。

「まあ、ランカへの執着心が凄かったから、そう考えると、まあ、そうなるのかもしれないが」

「それにしても、執着心は尋常では無いですよね?」

 別れたく無いと大の大人が、子供のように駄々をこねるのだ。相当な物である。

「まあな。ルカが人間に近くって、なおかつ、似ているのかもな。ランカに」

「おいおい、ばーちゃんの写真見てもそんなに似てなかったぞ」

「いや、似ているよ。人の心配を余所に無茶をするとか、彼女、魔族の中に進んで飛び込んで行った人だぞ」

「そうね」

「その分、銃の腕もあったけどな。メフィストはその無茶をほっとけ無かったんだろう。お前のニアちゃんと同じだな」

「私のは違います!」

 ニアが反論した。

「そっ、そうか、それはスマン」

 ルシアは剣を宙に浮かべた。

「では、始めるか」

 剣が光り始めた。

 ルシアは剣に魔力を注ぎ、ダメージをリカバリーしているのだ。

(特殊な武器って、整備するのも特殊なのね)

 ニアは感心していた。

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