第28話 最凶な悪魔4

 しばらく、ニアはケーキを食べ三人の様子を見ていた。

 みんなゲームをしている。

 すると、部屋からサクラが入って来た。

「サクラさん」

「あっ、ゴメンナサイ。あの人、客人ほっといて」

 本当に美しく、いい匂いがする。

 どうしてこんな人が、最凶と恐れた魔族と結婚したか、分からない話だ。

「いえ」

「本当にあれで最凶の魔王と名乗っているから、世の中不思議なのよね。そう、思うでしょう?」

「まあ、正直な所」

「いいのよ。はっきり言って。あの人、そう言っても直さないから、本当、最凶が聞いて呆れるわ」

(やっぱり、この人も)

「でも、それがいい所何だけどね」

「そうですか」

「ええ、魔族も心のあり方は人間と同じなのよ。そうそうニアさん。これ」

 サクラはノートを渡した。

「これは?」

 ニアは中を見た。

「凄い」

「これ、ルカさんの好みを書いた物なの、いつか、女性を連れて来た時に渡そうと思ってね」

「えっ、失礼ですがルカって、女性と年中一緒に行動していませんか?」

 ギギの事を言った。

「ギギちゃんは別よ。ルカさん、パートナーをそう言う風に見ていないわ。それ以外の女性はあなたが、初めてよ」

 意外であった。

「ルカさん、ああ見えて、真剣に物を考えるし、女性は好きでも、連れ回すような事はしない。連れて来ると聞いた時は主人と一緒に驚いたわ」

 ルカはここに来る数日前、ここに手紙を送っている。

 ニアの事も書いているのだろう。

「へー。意外です。何か、一ヶ月毎に変えているかと」

「私もそう思ったわ。でも、主人もルカさんを育てていたから、そう言う所は似たのね。それでこれを渡したの。あなた、ルカさんの為に料理作っているでしょう?」

「はい」

 中にはサクラが書き留めたレシピがある。

「彼、本当に美味しく食べるから、作っている方も嬉しくなるわ」

「分かります。なんか、目を輝かせて、犬みたいにおかわりねだるし、量食べるから作り甲斐もあります。ありがとう。参考にします」

「ええ」

 サクラが微笑む。その姿もまた美しかった。

「あっ、そうだ。ラグ勉強の時間よ」

「えー」

「もう、充分ゲームしたでしょう。家庭教師の先生だっていらしているし」

「そうだぞ。ママの言う事は絶対だ」

「は~い」

 渋々言う事を聞いた。

「あたなも働いて下さい。依頼の品まだ残っているでしょう?」

 ラグがニヤニヤとルシアを見て笑っていた。

「は~い」

 ラグと同じように返事した。

「ルカ兄ちゃん。また後で遊ぼう」

「ああ、そん時にはギギもいるから」

「ギギちゃんいるの? わ~い。頑張ろう」

 ラグが飛び出ていった。

「全く、あの子は、待ちなさい。あなた、ニアさん独りにしないでね」

 サクラは出て行った。

「それじゃあ、工房に行くか、ルカの剣も見ないとな」

「おう。ニアも行く?」

「ええ」

 三人も部屋を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る