第12話 魔王(?)メフィストフェレス3
その日の夜。
メフィストとジジが村長の家にいた。
ニアもそこにいる。
「やはり、この村は……」
村長はニアの祖父であった。
「ええ、今まで、突然変異した魔物が村を破壊しなかった事が、奇跡でしか無い」
メフィストはタバコをふかしていた。
「そうですか」
村長もニアもメフィストを前にして、緊張を隠しきれないでいる。
「この村にこうやって、魔力が溜まるようになった原因は定かではありません。しかし、このままにしておけば、この村は近いウチに無くなるでしょう」
「そんな」
ニアが言葉を漏らした。
「方法が無い訳ではありません。その為に私がここに来たのですから」
メフィストが黒い宝石を出した。
「それは?」
「ジジ」
「はい。それは魔力を溜める道具です。魔族が開発した、エネルギー補給の道具で、魔界ではこれを元にして、灯りを灯し、火を起こしています。人間の世界でも浸透し始めた物です。これは小さい物ですが、巨大な柱状の物を三つ用意し、この村の三カ所に仕掛けます。魔力はそこに吸収しますので、魔物も強くなる事も無くなるでしょう」
「しかし、魔物が柱を襲ったらどうするのよ」
ニアが意見を言うと、メフィストがニアを睨んだ。
ように、ニアには見えた。ただ、ニアを見ただけだろう。
切れ長の細い目はいつもあらゆる物を、睨み付けているように見えるのだ。
「本当に心配なら、見張りを付ければいいと思います。少し知能が高い魔物が襲っても、その柱は強い魔力を帯びている。攻撃は跳ね返るでしょう」
ジジが説明する。
「なる程」
「これから、必要なエネルギーはここから送ればいい。化石燃料よりずっと効率的に取れます」
「そうか……」
「これを一本、設置費込みで金貨百枚。そして、年二回のメンテナンスに金貨五十枚。それでどうですか?」
ジジがお金の話を始める。
「そんな、高すぎる。この村にそんなお金」
「剣士雇って、魔物を倒す。魔物に怯えた生活でも、こちらは困りません。私は命をお金で売っているのですから、安いと思いますよ。見殺しにするなら、話しは別ですがね」
メフィストが怪しく微笑んだ。
「剣士が敗北したり、派遣している間に村が滅んだりしてしまっては元も子もありません」
ジジが優しく言う。
「しかし、村にそんな金は」
「いつまでも、腕のいい剣士がここにいると、思えますか? 私は別にこの村がどうなろうが関係ありませんがね。滅んだ後で建てても、別にいいのですがね、協定がある為、村を破壊する事が出来ないのは残念ですが」
条約は人間と魔族が共存する為に作られた物であり、魔王でも逆らえない。
(この悪魔)
メフィストを見てニアが強く感じていた。
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