第26話 最凶な悪魔2

 持ち主にペットを届け、任務完了のサインを貰った後。

「それじゃ、ギギ後は宜しく」

「分かったでしゅ」

 ルカはギギにギルドへの報告と報酬の受け取り、そして、次の仕事を見つける仕事を任せた。

 報酬の受け取りは二種類あり、ニアの村みたいに、ギルドから遠い所に村を構えていたり、お金が用意しきれていない所では、派遣した者に報酬を渡し、後で納める方法と、既に、ギルドに納めている方法とがある。

 殆どの所では後者となっている。

 それは、納めない者も出てきたり、必要以上の報酬を要求したりと、マイナスな点が多いからだ。

「ギギ、いつもの所で」

「わっ、分かったでしゅ」

 ギギに元気が無かった。

「嫌がるな今日は我慢しろ」

「分かっているでしゅ」

 ギギは飛び去った。

「んじゃあ、俺達も行くか」

「荷物は、今日泊まる所はどうするの?」

「ああ、もう決まっているから、着いて来いよ」

 ルカはバイクを押して進んだ。

「ああ、待って」

 ニアも着いて行った。


 そして二人は街の中にある大きな屋敷の前に立った。

「デカい!」

 ニアが思わず声を零した。

「ここに泊まるの?」

 ニアが恐る恐る聞いた。

「ああ」

 自信満々にルカが答えた。

「ああって、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ。知り合いの家だから」

 ルカはチャイムを押した。

「はい」

 女性の声がチャイムの奥から聞こえた。

「アケミちゃん。久しぶり~オジサンいる?」

「オジサンではない、お兄さんだ!」

 ルカの背後にいきなり現れ、ルカの頭を殴った。

「あたっ」

「久しぶりだな。ルカ」

「久しぶり」

 ルカは振り向いた。

 目の前には、ルカより身長は高く細身の男がいた。

 赤い瞳に赤い髪。そして、尖った耳。ルシファーであった。

 魔王は瞬間移動もお手の物だ。

 ルカがやってきて、すぐ、飛んで来たのだ。

「ルシア兄さん」

「も、もしかして、ルシファー!」

 ニアが驚いていた。

「あれ? この子は?」

「俺のかの……」

「違います!」

 ルカの頬を強く引っ張った。

「ひたい……」

「ニアです。訳あって一緒に冒険しています」

「ルシファーだ。まあ、ルシアと呼んでくれ」

 砕けた言葉遣いをしている。

 魔王がみんなメフィストのような大人と思ったが、それも違うようだ。

 ルシアは笑顔で手を出した。

「はあ」

 ニアは一応握手した。優しい温もりを感じる。

 メフィストもそうだったが、優しい雰囲気を持ち、意外であった。

「まあ、立ち話もあれだ。中で話そう」

「ああ」

 ルカ達は屋敷に入った。


 ニアは初めて豪邸と呼ばれる場所に足を運んだ。

 その為、見る物触れる物は全て新鮮である。

 大きな門にただ広い庭。

「やっぱ、広いな~」

 ルカですらそんな感想を漏らした。

 ルシアはこのハクチの街を作った。

 商人の街にして、自らも武器を作って売り、そして富を得たのだ。

「ねえ、どうして知り合いなの?」

「俺とコイツのじいさんメフィスト、そしてベルゼブブのゼブルはみんな親友なんだ」

 そして、聞かされた話は驚く内容であった。

「えっ、本当ですか」

「ああ、だから、ガキの頃からコイツを知っている訳」

 ルカの髪を毟り苛めていた。

「はあ」

 あまりの驚きでもう何処を聞けばいいか分からなかった。

 ルシアは魔王の中でも、最強であり、最凶であった。

(こんな魔族だったなんて、って事はベルゼブブもこんなだろうな)

 もう、驚かないと誓った。

「それより、この可愛い子とはどこまで行った?」

 車庫に着き、ルカはバイクを置いた。車庫もバイクを置いても広かった。

「何処までもいってねーよ!」

 ニアがつい本性を現し、ルシアを一本背負いしてしまった。

「あっ、ごめんなさい」

 すぐに謝った。しかし、そんな事で済まされるはずがない。

 冷たい空気が流れた。

「あのー」

 ルカを見ても、バイクの鍵かけたりして、知らん顔をしていた。

 それはそれで問題であったが、ニアは恐る恐る声をかける。

 ルシアがゆっくりと起き上がり、ニアを見た。

「そうか、それでニアを好きになったのか!」

 ルカの肩に手を置いた。

「ああ、気持ちいいだろう」

「そうか、間違ってない! いい投げだった。やっぱり、メフィスト同様見る目あるな」

 ルシアは悦に入っていた。

「だろう」

「頑張れ」

 ルシアは親指を立てた。

「おう」

「なにを基準にしてる。ド変態!」

 ニアがやっと突っ込みを入れた。

「可愛さ、強さ、そして、切れのよさ」

「声揃えて、変な事言うな! ボケ」

 二人の長身の頭を殴った。

「全く、怖がって損した。なんなのこの魔王は! 本当に魔王なの!」

「ああ、昔はそうだったよ。メフィストにも手を出したし、でも、メフィストの女がな~強くて、可愛くって、切れのある凛々しい、いい子だったんだ」

 ルシアは二百年前、人間を滅ぼそうと考えていた魔族だった。

 しかし、メフィストとぶつかり、勇者の話を聞き改めたのだ。

「結局それかよ!」

「ニア、荷物」

 ニアの怒りもどこ吹く風、ルカはニアに荷物を取るよう催促した。

「ああ、はい」

 ニアは荷物を取り出した。

「それより、剣の手入れ、ちゃんとしているか?」

「ああ、この通り」

 ルカはルシアにガンソードを渡した。

「そうか、こいつの整備もしないとな」

「いつも、ありがとう」

 ルカは笑顔で言った。

「それより、その紙袋何?」

 ルカの黒いリュックとは別に、大きな紙袋もあった。

 ニアは軽装で動くルカにしては大きな荷物だと疑問に思ったのだ。

「ああ、これか、これは、ルシア兄さんのお土産だ」

「いつも、悪いな。また、手に入ったか?」

「ああ、取って置きのが」

「楽しみだな~」

(きっと、お酒よね。メフィストさんも好きだったし)

 ニアはお酒や珍味の類だと勝手に思う事にした。

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