第7話 解雇された若者3

 ドカッ!

 ルカの身体を殴る音がする。

「うっ」

 ルカはまともにくらう。

「おらよ」

 カイジがルカの手足を抑え、キーチが殴っていた。

「ちょっと、これ只の弱い者虐めじゃない! 止めなさい」

 ニアが止めようとした。

「ニア……俺の心配してくれて嬉しいよ……」

「そうだけど、そうじゃない! あんたになにかあったら、寝覚め悪いし、呼んだのは私のじいちゃんよ。罪悪感も生まれる」

「そうか……はははっ。ニア、それでもありがとう。ニア、手出ししないでくれないか? ケガしたら困るから……うっ」

 腹部にマトモに膝蹴りが入った。

「ゴホゴホ」

 カイジは手を離すとルカは床に這いつくばり、咳き込んだ。

「もういいな」

 キーチは白き聖なる銃を取り出した。

「ちょっと」

「お前がウロウロして貰っては、困るんだよ」

 力無く倒れるルカの頭を掴み持ち上げ、腹部に銃が当てられた。

「止めなさい!」

 ニアが手を出そうとしたが、カイジが手足を拘束した。

「運がよければ、また会おう」

 バンッ! バンッ!

 銃声が響く。

 ルカは血を吐き出し、ゆっくりと目を瞑り、パタリと倒れ、真っ赤な血が地面に広がる。

「あっ、ちょっと、退きなさい!」

 ニアはカイジの腕を掴み一本背負いをして、ルカの所に向かった。

「ルカ、ちょっと」

「あいたたたっ、この女!」

 カイジが起き上がり、ニアを殴ろうとした。

「止めとけ。その女になにかがあれば、金が手に入らなくなる」

「ですが」

「行くぞ。さっさと仕事を終わらせて酒にしよう」

 キーチがニアを睨む、ニアが硬直した。

「キーチさん。分かりました」

「それでは、残りを用意しとくように、はははっ」

 キーチとカイジは歩き去った。

 歩き去った後、硬直が溶け、ニアがルカを揺らす、ルカに反応が無かった。

「ルカ、今すぐ医者連れて来るね」

 立ち上がり、ルカの元を離れようとしたが、ルカの手がニアの腕を掴んだ。

「ルカ?」

「大丈夫だよ」

 ルカの目が開き、ゆっくりと起き上がった。

「ちょっと、大丈夫な訳ないじゃん。バカな事言うのも……」

「それが、普通の人間だったらな」

 ルカは地面に這いつくばりながら、起き上がり壁に寄りかかった。

「俺は普通とは少し違う」

 タバコをくわえ、火をつけた。

「違う? 何処が?」

「俺は魔族の三世クォーター何だ。だから……」

 ルカの体に埋まった小さい銃の弾を抜き出し、地面に立てた。

 すると、傷が急激に塞がり、既に顔に出来た殴られた後は治っていた。

「この位の傷なら、大した事無いんだ。まあ、じーちゃんと違い、流れた血までは戻らないがね」

 ルカは煙をはいた。

「じゃあ、そんな力があったから、むざむざやられたの?」

「違うよ。ニアを危険にさらしたくなかったんだ。あの状況で下手に動けば、ニアにまで被害が出るからな。人質にされても困る」

「なによ。それ、私が邪魔だったの!」

「そう言う訳じゃ無いけど……」

 パシンッ!

 ニアがルカの頬を叩いた。

「痛っ!」

 いきなり、叩かれタバコを落とした。

「痛いんじゃない! なんで当たるのよ!」

「だから、ニアが」

「私を甘く見ないでよ! これでも、この村を守っているのよ。負けても、少しは抵抗しなさいよ! 命は惜しいでしょう? 男の子でしょう?」

「うーん」

 ルカは殴られる理由も怒られる理由も、理解が出来なかった。

「まあ、相手は白き聖なる銃を持った勇者だから、負けるけどね」

「本当にあいつらが勇者だと思うか?」

「それは」

「あの銃はレプリカだよ」

「何で分かるのよ?」

「俺が立ち上がって、魔物を退場しようと考えているから」

 ルカは剣を拾った。

「白き聖なる銃は名前の通り、魔を撃つんだ。二百年前の戦争で、その銃が勇者の証と呼ばれたのも、魔を倒す、つまり、当たれば魔族を仕留める事が簡単に出来たからそう呼ばれたんだ。魔を撃つ事に例外は無い。俺も1/4だが、魔族の血が流れている。当たれば、体に流れる魔が反応して、ただじゃ済まないよ」

「当たった事ある口ね」

「ああ、あるよ」

 ルカは準備体操を始めた。

「さて、行くか」

「ちょっと待ちなさい!」

「あん?」

 剣を背中に背負った。

「私も連れて行きなさい」

「へっ?」

「いつまでもコケにされたく無いの! それに私には見届ける義務がある!」

「だけどよ。もし、ニアになにかあったら」

「嫌でもついて行くわ。なにかあったら、化けて出るわ!」

「分かった。一緒に守ってやる。その変わり、守った暁には、報酬ちょうだい」

「分かっているわよ。お金なら用意するわ」

「んなもんいらないよ。可愛い女の子と美味い酒でいい。俺、金に興味無いからね」

「あんたね。それで魔族は商売になるの?」

「まあね。それに、もう、金は貰っているからいいよ。あいつらの懐から奪えばいいだろう? どんだけ請求したか分からないけど、あれの半分位で事済むし、人間に必要以上に金品を取ったら、また、戦争が起きかねないだろう? 魔族は平和主義者が多いんだ。さて、行くか」

 ルカはニアをお姫様抱っこした。

「ちょっと、何するのよ!」

「さっさと行かないと、あいつら死んじまうからな」

「そんなに強いの!」

「ああ」

 ルカは高くジャンプして、屋根を渡った。

「この村、なんで魔物が蔓延っているかと言うと、どういう訳か魔力が充満しているんだ。この村を中心にな。その魔力に反応して魔物が繁殖して、最終的に人間を襲うんだ」

「なる程」

 次は森の木々をつたい始めた。

「魔力が高い魔物が人間を脅かしているんだ。あいつらじゃ勝てないよ」

「そんなのよく分かるわね」

「ああ、魔族の血が強く反応するからね~じいちゃんのお陰だよ。さて、着いた」

 ルカは村外れまで足を運んだ。

 そこでは、カイジとキーチが魔物に苦戦していた。

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