第5話 言語習得特別授業


ここは王宮闘技場。

昨日、俺たちが召喚された場所だ。

今日は何やらこの世界の言語について説明されるらしく、朝7時の招集をかけられた。

そして7時に過ぎぐらいになると、王女様が大臣と一人の男を連れてやって来た。


「おはようございます。みなさん。昨夜は良く眠れましたか?」


来て早々、王女様が晴れやかな笑顔を俺たちに向けた。すると、


「ハイッ!!もちろんでありますっ!!!!!」

「天使、、、、か、、、、?」

「ああ、、、俺はこのために生まれて来た、、、、」


と男性(特に二次オタ)達が色めき立つ。


まあそりゃあ二次元みたいな顔をした、

絶対に日本にはいないような超絶美少女の笑顔が見れればな、、、、

誰だって嬉しいだろ。俺もちょっと嬉しい。

しかし、王女様がとあることに気づく。


「おや、、、アマギさん、、でしたっけ。その人達がいないようですが。」


そう、天城とその取り巻き達3人


鳩辺 愛菜

鬼村 唯乃

小町 礼子


だったかが、今この場に来ていない。

天城の部屋の隣のやつ曰く、


「昨日、一晩中隣がうるさくて寝れなかったよ。

 ずっとパンパンアンアン聞こえて来てさ、、、、、

 あいつら四人でずっとやってんだぜ?やば過ぎだろまじで。」


ということらしい。まあそれであいつらは遅れたってことだな。


というか、四人とか羨まし過ぎ、、、じゃなくて、

なんでこんな世界に連れてこられて早々やることやってんだよ。

やっぱスキルが多いとモテるのか?

いや、あいつは元からか、、、、


それはともかく!!けしからん!!!!

許せん!!あいつは男の敵だ!!


天城への恨みを募らせたところで、


「すいませ〜ん」

「遅れましたあ」

「あっあっあのっ、、遅れました、、、」


と先に女3人組がやって来た。天城は一緒じゃないらしい。


「アマギさんは一緒ではないのですか?」


王女様がそう聞くと、


「ちょっと体調が悪いみたいで、、、、」


と鳩辺が答える。

まあそりゃあ一晩中3人の相手してれば疲れるだろうな。


「そうですか、、、では仕方ないのでもう始めてしまいましょう。

 こちらの方が今回みなさんにこの世界の言語について教えてくれる方です。」


そう言って王女様が隣にいた、魔法大臣ではない男の方を手で示す。


「どうもご紹介にあずかりました、

 外交担当大臣フレドリック・ヴァンガーデンでございます。以後お見知り置きを」


と紹介された男がお辞儀をしながらそう言うと、今度は女性陣が色めき立った。

髪型はオールバック。知的そうなメガネをかけていて、いかにも頭が良さそう。

そして何よりイケメンだ。とてつもなく。

、、、、この世界はなぜこんなにも美男美女が多いのであろうか。

俺もまあまあの顔だと自負しているが、、、自信を無くすわこんなん。

そして外交大臣は、話を始めた。



「ではまず、この世界の言語の種類についてお話ししていこうと思います。

 この世界で使われている言語は大きく分けて二つあります。

 一つは人族語、もう一つは魔族語です。

 人族語とは、まあ言葉通りの言語です。後ほど、詳しく説明します。

 そして魔族語。この言語は主に魔族が使う言葉で、

 確認されているだけでも100種類以上の言語が存在します。

 魔族というものは、人族が住む大陸とはまた別の大陸に住んでいる、

 人族ではない者たちです。

 個人個人のステータスが人族より高く、人族に限りなく近い容姿をしていますが、

 人族より人口が少なく、以前は迫害の対象とされていました。

 魔族語を詳しく知りたい方は、ご自分でお調べください。

 さて、話を戻しましょう。

 次に人族語についてです。この言語は我々人族が使う言語であり、5種類ほど

 存在します。主な共通言語はオルフド語といい、我々が普段使っている言葉です。

 他にも北の国のクルト語や、遠く離れた島国のトウホ語などがあります。

 今日学ぶ言語は、共通言語であるオルフド語です。

 そしてこの世には人族語にも、魔族語にも属さない言語が一つだけあります。

 そう、古代魔術語です。

 この言葉は、別の世界から来た言葉とされており、

 古代魔術などの特殊な術式に使用されているため、そう呼ばれています。

 それらの術式は、未だ解明されていないものも多く残っています。

 古代魔術語はほとんど解明されてはいますが非常に難解で、

 喋れる者はほとんどいません。

 あなたたちにとってはその言葉が普通かもしれませんが、

 私たちにとっては普通ではないのです。

 なのでしっかりと今日はオルフド語を学んでもらいます。」



な、、なが、、、、!!一気に言いきったよこの人。

すげえな、、、、


要はあの人の言ってることをまとめると、


「世界には言語が人族語と魔族語の2つがあるよ!!」

「魔族語はたくさん種類があるよ!!」

「人族語の共通語はオルフド語だよ!!」

「二つの言語のどちらにも当てはまらないのが古代魔術語(日本語)だよ!!」

「古代魔術語は喋っても伝わんないからオルフド語喋れるようになれよ!!」


ということか。

なぜ日本語が古代魔術語なのか気になるが、それはまあ後でいいだろう。


問題は、アラビア語とハングルを混ぜたようなあの文字を本当に習うのか。

というところだ。

オルフド語ってあれでしょ?この前の水晶の中に出て来た文字でしょ?

絶対覚えんの無理だろ。

いくら勇者の成長速度でカバーされるとはいえ、あんなの絶対無理だと思う。


、、、、、、まあ習わなきゃいけないんだろうけどさ、、、、

ため息をつきながら、俺はテスト前のあの焦燥感に似たようなものを感じ、

やだなあ、、、と思う。

なんなんだろうな、あのなんかやらなきゃいけない!みたいな感じ。


そう俺が考えてると、前のやつから木の板と紙とペンが渡された。



(思考フリーズ中)



、、、、、、、ん?さすがにここでやるとは言わない、、、よな?


そう思って俺が顔を上げると、そこには教える気満々の、自信に満ちた外交大臣の姿があった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「@[;:],./_[]@:;.^-¥!というのがオルフド語の、ありがとうございます。です。

 他にも〜〜〜」


なぜだろう。

最初は意味のわからない単語ばっかで聞き取れてすらなかったのに、

だんだんと意味がわかるようになってきた。

勇者パワーすげえ。


この言語、

文字はハングルとアラビア語を合わせたような感じなのに、言葉や発音としては英語に近しいものがある。

、、、、まあ、近いってだけなんだけどね。


もうほんとに、言語に関してはほんとに頑張るしかない。

そう思いながら俺は外交大臣の話を聞き続けた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「はい。ここで大体終了です。

 基本は教えたので、あとは自力で頑張ってください。」


と外交大臣が言った途端、俺は


「あ”あ”あ”あ”あ”。や”っとおわ”っだー、、、、、」


と死にそうな声でごろりと仰向けに転がった。

地面に座ったまま下を見続けたので、首が痛い。

、、、、、、、というか今サラッとすごいこと言わなかった?

”あとは自力で頑張ってください”だと?


、、、、、、はあ、、まあ基礎を教えてもらっただけいいだろ。

何時間もぶっ続けで教えてくれたんだし。

そのお陰か、最初は全くわからなかったが、

後半になるとほとんどの単語が聞き取れるようになっていた。

おそらく今では、少しくらいは喋れるはずだ。

まあ、ひとまず言語に関しては大体OKだろう。大体、だが。

会話ができるようになるまでは頑張っていくしかない。

と、そこまで考えたところで王女様が、



「明日からは戦闘訓練の方をやっていきます。

 部屋に専用の服が置いてあると思うので、それを着てきてください。」



というと勇者たちに緊張が走った。

いよいよか、、、、戦闘訓練。

これが自分が生き残るために最も重要な訓練だ。

魔物と戦う時など、おそらくこの世界では様々な場面で戦うことが必要なはず。

なので、これによって自分の命運が変わってくるのだ。


うっし、気合い入れてくか。



「あ、そういえば明日からはわしらもオルフド語で喋るので、

 そこんとこよろしくじゃな。」


とそこで、緊張した空気をぶち壊すかのように魔法大臣が言った。


、、、、せっかく気合い入れたのに、、、

にしても戦闘訓練でって結構きついぞそれ。

まあ言語訓練の一環だし、頑張るしかないか。



「では、解散にしましょう。

 明日は朝8時ごろにここにきてください。『良い眠りを』。」



王女様は解散を皆に告げた後、最後だけオルフド語にして言い去って行った。

残された俺たちは、だんだんと部屋への帰路についていく。

明日の集合が8時になったのはおそらく天城たちのせいだろう。


まあ遅くなるぶんには別にいいけどね!!


と、くだらないことを考えながら俺も部屋への道を歩き始める。




「明日も気合い入れて頑張るか。」



部屋に帰る道を歩きながら、俺はそう呟くのであった。


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