閑話 王女様の憂鬱


ここはとある国の王宮の、とある一室。

そこでは一人の少女が疲れたようにベッドに突っ伏していた。


「はぁ、、、、、、、、」


その少女は、ベッドに突っ伏したままため息を吐くと

ごろりと転がり、仰向けになった。


「大人数の相手って思ったより大変だわ、、、、、、」


そうつぶやいて少女は先ほどの、異世界から来たという勇者達を思い出す。

この少女は王女であり、勇者達をこの世に呼び出した張本人だった。


「召喚で、思ったより魔力が吸われてしまったわね、、、、、

 完全に回復するのに5日はかかりそう。」


あの術式が書かれたあの魔法陣は、しっかりと王女の魔力を大量に吸い上げていった。

私がこんなに吸われるんだから、他のものは失敗して当然だろう。と王女は思う。

これは驕りでもなんでもない。

実際、昔この術式を使用しようとした人々は皆失敗しているし、

王女の魔力の多さは、今までの王族の中でトップクラスなのだ。


そして、魔力が吸われたこと以外に王女を疲れさせたのは、

長時間にわたる古代魔術語の使用と、あのまるで子供のような勇者達だ。


古代魔術語を使い続けるというのは、普段使ってる言語を全く使わず喋ることに近しいもので、かなり精神を削られた。古代魔術語は王族の必修言語なので、だいたい喋れはしたが、やはりきついものはきつい。

そして、なぜ勇者がこの言葉を喋れるのか。それがずっと疑問だった。

しばらく考えた結果、


(おそらくだけど、、、

 大昔に勇者を召喚した時に”あちらの世界から”入って来たのでしょうね。

 確かに、術式を書く上では整理されててすごく便利だし。)


と王女は結論付けることにした。



だがしかし、一番の問題はあの勇者達だ。


「あの人達私より歳上でしょ?なんであんなに落ち着きがないのよ。

 【鑑定】で見たら精神力のステータスも低かったし、、、、」


落ち着きがなく、話を聞かない。

勝手に質問したり、自分の思ったことを大声で言う。

まるで子供のようだった。

まあ無理やり召喚したのはこちら側なので、しょうがないところもあるだろうが、、、あれはさすがに酷すぎる。


もともと争いのない世界だったのだろう。

勇者達は精神力のステータスが異様に低く、魔物と戦わせる上で不安要素が強い。

今のままでは、魔物を見ただけで腰を抜かしてしまうはずだ。

勇者達の精神力をどうあげていくか、それがこれからの課題だ。


しかし勇者達の相手をまた自分がするのだと思うと、王女はまた気が遠くなりかける。

正直もうあの人達の相手はしたくない。そう考えた王女は、



「おじいちゃんに全部任せようかしら、、、、そうね。そうしましょう!」



かなり鬼畜なことを思いついてしまうのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



陽も沈みきった頃、湯浴みを終えた王女がまた部屋に戻って来た。

そして寝間着に着替えるとベッドの中に潜り込み、

今日一日を振り返る。

すると王女はふと、勇者の中で初めて喋った男を思い出す。

他よりいくらかまともそうなその男は、目立つわけでもないのになぜか王女の記憶に残っていた。


(はじめに喋ったあの人だけは、精神力が他より高かったのよね。

 なぜでしょう?あまりステータスも高くなかったのですが、、、)


そう、なぜか最初に喋ったあの男だけ、他の者と違う精神力をしていた。

他のステータスはただの凡人並み、

そして成長速度によっては凡人以下にもなり得る、あの勇者”候補”が、なぜあんなに他と違うのかが気になる。



(一回【過去視】で見てみて、考えましょうか、、、、、

 いや、別にとても高いと言うわけではないので、

 そこまで気にしなくていいでしょう。

 【過去視】はそこまで乱用できるようなスキルではないですし。)



自分のスキルを使って調べてみようかと思う王女であったが、別にしなくても問題ないと考え、目を閉じる。


(早く寝て明日に備えましょう。)


王女はそう思いながら眠りについた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【過去視】・・・指定した人物の過去を見ることができる。

        しかし使用すると、相手の過去の情報が一気に入ってくるので、

        しばらく頭痛に悩まされる



【鑑定】・・・ものを鑑定することができる。

       レベルを上げると、そのもののステータスなどまで

       見られるようになる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る