第4話 不法侵入……駄目。絶対!!
「おーい、星雲」
いきなり俺のもとへクラスメイトの男子や女子が寄ってきて、そのうちの一人の男が肩を組む。
「えっ、どうしたの?」
「何言ってるんだ? 水臭いぞ、俺達は友達だろ?」
友達? まじで? やっとあいつらから開放されるんだ! だが、こんなうまい話があるか? いきなり友達なんて言われて……。
…………。ジリジリジリという、スマホのアラームによって目覚める。やっぱり、夢だったのか。もし、あの変人達が居なかったら、あんな感じになっていたのかな。そうこう考えていると、隣で寝ているレティルがアラームを止める。
「もう少し寝ましょうよ。星雲さん」
「そうだな…………。いや、ちょっと待て!」
勢いよく起き上がった。なんで? どうしてレティルがここに居るんだ?
「お前、どうやって入ったんだ!」
「えっなんですか、朝から。寒いので布団返してください」
「寝ようとするな! 起きろ!」
この状況で、まだ寝ようとするレティルの頬を叩き強制的に起こした。
「痛いです……。本当に朝から何なんですか?」
「朝から何なんですか? じゃねえよ、こっちが聞きたいわ! なんでお前がここに居るんだ、そして何故俺のベットで寝ている!」
もう二度と関わることがないと思ってたのに、なんでこんな形で再開するんだ。
「ああ、そんな事ですか。いやぁ、星雲さんに話さなきゃいけない事があったので……、家の鍵をピッキングして開けました!」
「もしもし、おまわりさん」
スマホで通報しようとすると、レティルが慌ててそれを奪い取り通話を切ってしまった。
「通報しないでくださいよぉ! 本当に大事な話があるんです」
「いや、家に不法侵入してるやつがいたら、普通通報するでしょ」
「そうなんですか? よく分かりません」
レティルの表情を見るに、本当に分かっていないようだ。なんだ、こいつ……。常識が無いのか? 何処かのお嬢様か、水羽みたいに。
「そういえば、鍵取り換えたほうがいいんじゃないですか? 簡単に入れましたし」
「ピッキングして不法侵入した張本人に言われるとは、複雑な気分だな」
そう言うと、レティルは「不法侵入不法侵入うるさいですね」と声を漏らし、右手を動かす。
すると、レティルの右手が光輝く。
「はい、これで不法侵入じゃなくなりました!」
堂々と、レティルはそんな事を言ってくる。
「はぁ、どういう意味だ? 手品かなんかで右手が光っただけだろ?」
「そのままの意味です。私はこの家の子供になりました!」
こいつは、何訳の分からん事を言っているんだ?
「はぁ……、はいはい。そういう、冗談はいいから。警察行こっか」
「冗談なんかじゃありません。あっ! 星雲さん、私が天界から来たって話を信じてませんね」
「信じるもなにも、そんな天界なんて非科学的なものある訳が、あるわけないじゃないか」
確かに、空から落ちてきたのは不思議だが、骨が折れて無い所を見るに低い位置から落ちただけだ。断じて天使だからとかではない。あくまで、屋根から落ちて来ただけだ。
「ありますよ! じゃあ、……、私がこの家の子供になったのを証拠として見せますね」
そう言って、渡されたのは先程奪われた俺のスマホだった。
「これでどうすればいいんだ?」
「お父さまに電話して確認してみてください」
「いや、そんなの確認したって……」
「いいから、一度でいいのでやってみてください。騙されたと思って」
レティルにそう説得され、父親に電話をかけた。無駄だとは思うがな。
「もしもし、父さん」
『おう、なんだお前から電話を掛けるとは珍しいな』
「ちょっと聞きたいことがあって」
『ほう、なんでも聞くといい。ちなみに、俺の好みは巨乳のお姉さんタイプだ』
「それを聞いて、息子の俺はなんて反応すればいいんだ……。まあ、それより聞きたいことっていうのは、俺らって三人家族だよな?」
『三人家族? 何言ってんだ、四人家族だろ?』
嘘だろ……。
「その四人って、誰のことだ!?」
『誰って、俺とお前それに小夜、それからレティルだろ?』
「いやいや、おかしいだろ? レティルって、俺ら三人家族だろ?」
『なんだ、頭でも打ったのか? レティルは普通に父さんと今はなき母さんの正真正銘二人の子供だ。お前らは双子だぞ』
「双子? だとしたら、なんでレティルは名前がカタカナで髪の毛は銀なんだ」
『名前はいい名前だろ? それに髪の色は染めたんじゃないか? あっ、ちょっと社長に呼ばれたから行ってくる。じゃあな』
「おい、ちょっと待て! まだ話は終わってないぞ。……切られたか」
父さんに、レティルが先に電話してそういうように仕向けたか? 金かなんか握らせて……。
「これで、信じてくれましたか?」
「更に、お前への疑いが強くなった」
「酷いですね。ちょっと魔法を使ってお父様と小夜ちゃんの記憶を書き換えただけですよ」
「だけって、とんでもないこと言ってるの気づいてる? というか、魔法なんて存在しない。お前が父さんに言わせただけだろ」
父さん、金にがめついし可能性は、十分にある。
「分かりましたそれなら、空を飛びましょうか?」
「ただの手品だろ?」
「口から火も吹けます!」
「だから、手品なだろ!」
「このトランプの中から一枚消しましょう!」
「それこそ、手品だろうが!」
「じゃあ、右手を光らせましょう」
「それは、さっき見た」
「なら、左目を赤く光らせます!」
「それは少し見てみたいな」
「ごめんなさい、嘘です!」
「出来ないなら言うな!」
アイツら並みに疲れる……、なんなんだこいつは、さっきから……。
「なら、もっと分かりやすい事をしましょうか」
「分かりやすい事ってつまり、どういうことだ?」
「こうするんです」
そう言った瞬間、レティルは何処からともなく取り出した、ナイフで俺の首筋を切り裂いた。
「なっ!?」
いきなりの事で動揺し、ベッドから転げ落ちた。
「痛みはないはずです、私の能力の一部が渡っているので」
どういう意味だ、確かに痛みはない……だが、意識は薄れ少しずつ死んでいく感覚を覚える。
「戻ったら、私に何があったのかちゃんと説明してくだ…………」
その言葉が薄れゆく意識の中で最後に聞いた言葉であった……。まさか、こんなんで、俺が……死ぬとはな。やはり、警察に通報すればよかった。
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