第5話 タイムリープ……!?
…………。ジリジリジリという、スマホのアラームによって目覚める。
今までのは全部夢…………だったのか? やけにリアルだったが……。
アラームを止め、布団の方を見ると少し誰かが入ってるかのように、山になっていた。
まさか、そんなことあるわけないよな? 恐る恐る、毛布を取るとそこにはレティルが寝ていた。
「星雲さん、寒いので毛布を返してもらえますか?」
「どういうことだ……、俺が見ていたのは正夢? ということは、これから俺は死ぬのか?」
そう呟いたのが聞こえたのか、レティルは大きく伸びて起きる。
「星雲さん、その感じはタイムリープしてきたんですか?」
「タイムリープ? どういう意味だ。俺が見ていたのは、夢じゃないのか」
そんな迷信、あるわけないじゃないか。やっぱ、こいつは厨二病なのか?
「混乱しているところを見ると、私から何も説明されませんでした?」
説明? なんのだろうか。厨二病だという、説明か?
「何処まで、説明されましたか?」
「説明もなにも、なんのことだか」
「じゃあ、死ぬ前の事を思い出してください」
死ぬ前って……というのは、夢の事でいいんだよな?
「確か、レティルが魔法を使える事を手っ取り早く証明するって言ってたな」
それで、ナイフで俺の首筋を切ったからな。痛みは感じなかったが。
「なるほど、それで信じてくれましたか?」
「いや、あれは夢にしか思えないんだよな。非科学的すぎるし」
タイムリープなんて、そんなものあるわけないのだから。
「まだ、混乱しているようですね。分かりましたとりあえず、もう一度殺しておきましょうか。そうすれば、察しの悪い星雲さんでも気づくでしょう」
「分かった、信じるから。そのナイフしまってくれ。怖いから!」
レティルはふてくされた様子でそのナイフを懐にしまう。ふぅ、危なかった……。まあ、実のところ完全に信じてないわけではないしな。
「まあ、口ではそう言ってますが信じていなさそうなので、そうですね。星雲さん、なにかしてほしいことありますか? それが出来たら信じてくださいよ」
「してほしいこと? この家から、出ていって欲しいんだが」
「分かりました」と言って、右手を上に挙げる。
「テレポート!」
そう叫ぶと、レティルは光に包み込まれ居なくなった。
「マジか……」
光は一瞬だったし、流石にその間に居なくなるなんてことは出来ないはずだ。
「星雲さーん」
レティルの声が外から聞こえてきた。
「どうですか! 信じてくれますか?」
「ああ、うんわかった。だから、戻ってこい。朝からそんな大声出してたら、近所迷惑になるから」
そう言う、再び腕を上げ光に包み込まれると思ったら、俺の部屋に戻っていた。
「ふふふ、これで、タイムリープの方も信じてくれますよね?」
まあ、流石にこれを見せられたら信じざるおえないか。
「それで、タイムリープってどういうことなんだ。ちゃんとした説明をくれ」
「はい、分かりました。まず、大前提として私が天界から落ちて来た天使ということを信じてください」
天使とか天界とか……。まあ、タイムリープよりは可能性あるか。
「もちろん信じるが、もし信じなかったら……どうする?」
「信じるまで殺し続けると思います」
「こえーよ!」
そんなこと言っている時点で天使とはほど遠い気がするが、黙っておこう。
「天界の天使達は、それぞれ二人組で一つの概念の力を持っています。例えば、炎だったり水だったり光だったり。そして、私が持っていた力が時を戻る力でした」
「…………でした?」
レティルは、笑顔のままうなずき
「はい。昨日天界で昼寝をしていたら、なぜだか知りませんが落ちてしまい、ちょうど星雲さんの頭にぶつかりました。その時、私のタイムリープの能力が、どういう原理か星雲さんに移ってしまいました。その能力がないと、私は天界に帰れません。でも、戻し方が分からないんですよね。なので、とりあえずここに来て、もし分かったら星雲さんに能力を返してもらおうといえ話です」
タイムリープね……。確かに、俺ご体験したのは、夢とは少し違う気もした。レティルの言ってる事を少しは信じてもいいか。
「それで、一言にタイムリープと言ってもわからないじゃないですか。星雲さんにが持っているタイムリープの能力は二つです」
「タイムリープに種類があるのか?」
レティルはうなずき、指を立てる。
「はい、あります。死んだ時に、セットポイントまで戻るタイムリープと、好きな時に過去へ戻れるタイムトラベルがあります」
「セットポイント? なんだ、ゲームでいうセーブポイントみたいな感じか?」
「そんな感じで、思ってくれて大丈夫ですよ」
だから、俺がレティルに殺されてこの時間に戻ってきたって事か。つまり、今のセットポイントは朝か。
「二つの大きな違いは、死んだ時の方のタイムリープは、記憶だけが戻ります。ですが、好きな時に戻れるタイムトラベルは、体ごと過去に戻ります」
「体ごとっていうのはつまり、俺以外にもう一人の俺が居るってこ
とか」
タイムリープは、精神だけだから自分がそのまま移動するが、タイムトラベルはどこぞの青たぬきのタイムマシンの過去にしか行けないバージョンだと思えばいいか。
「はい、そういうことです。更に、このタイムトラベルは矛盾を生み出してはいけません」
「どういう意味だ?」
タイムトラベルをしてる時点で、そもそも居るはずのない人間がそこに居るので矛盾ではないのか。
「例えばですが、星雲さんが生まれる前にタイムトラベルしたとしましょう。星雲さんが自分の親を殺すとします。すると、親が死ぬという事は、星雲さんがいなくなります。星雲さんが居なくなるということは、親は死なず死なないとうことは、星雲さんは居ることになります。つまり、矛盾が発生するんですね」
「親殺しのパラドックスってやつか」
自分が産まれる前にタイルトラベルし、父親を殺す。すると、父親がいなくなったので、自分が生まれなくなる。生まれなくなるということは、タイムトラベルすることが出来なくなり、父親は生きている。父親が生きているということは、自分も生きておりタイムトラベルし、父親を殺す。このように、タイムトラベルにおける論理的パラドックスの事だ。
「そうです。その場合、どうなるかというと、星雲さんが居ないことになり時が進んでいきます」
別の世界線に行くわけでもなく、居なくなってしまうのか。もしやらかしたら、もとに戻らなくなるかもしれないということか。
「なので、この点だけ注意してその能力を有効的に使ってくださって結構ですから。そのかわり、戻し方が分かるまで私はこの家の子供として生活するので、以後よろしくお願いします。あと、私の能力では無いですが星雲さんは死ぬ程の痛みを味わうとき、何も感じなくなるので、そこは心配しなくても大丈夫ですよ。安心してお死にください」
「安心してお死にくださいって……。まあいい、分かった……。てか、死ななきゃいけないタイムリープなんて、現実で何に使うんだよ……。どうせならもっといい能力が良かった」
炎とか雷とか、なんかカッコいいやつな。死んでようやく発動するタイムリープの使いみちなんて、道路で引かれたりした時くらいだぞ。兄弟が、一人増えたと考えればいいか。
「これから私は星雲レティルと名乗るので、星雲さんと呼ぶのは少し紛らわしいので、下の名前で呼びますね。これからよろしくです、広樹兄さん」
「なんか、むず痒いな。お前からそう言われると」
いきなり、兄弟でもなんでもないやつから言われるようになるからかな。兄弟が結婚して義兄弟ができた時と同じ気持ちかな?
「じゃあ、星雲さんって呼びます?」
「いや、それでいい」
兄弟で苗字呼びしていたらそれこそなにか面倒なことになりそうだしな。
「それでは、これからよろしくお願いします。広樹お兄さん」
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