第18話 運命との対決
もう、六度目の朝……か。隣の毛布に居るレティルを叩き起こす。
「おい、レティル……。生きてるよな?」
「むにゃむにゃ……。ん? ああ、おはようございます」
良かった……。あんなグロテスクの状態のレティルは流石に見たくなかったからな。
あらかたレティルに説明した。これが五回目のタイムリープである事。一回目は、俺にわからせるためにレティルに殺され。ニ回目には寝てる間に殺された事。三回目には鍵を確認したが、後ろから刺されて殺されたこと。そして、冷蔵庫でケチャップとマヨネーズを吸っていた事を。四回目は俺が外に逃げて帰ってきたら、レティルと小夜が死んでいた事を。そして、五回目は、それがトラウマになったが、持ち直した後殺された事をだ。
「なるほど……。大体は理解できましたよ。なんというか、災難でしたね」
「ああそうだな……」
もう、あんな風に身内が死んでほしくない……、絶対に今回で犯人を突き止めてやる。そう心に誓ったのだ。
「それで、次はどうするんですか?」
「まだ、決めていない。どうするべきだと思う?」
色んなことを、試してみたが全部失敗に終わった。もし、隠れても無駄だろう。朝帰りの時点であいつは家に居た。そして、あの時気配を消して隠れていた。こっちがあいつの場所を把握できない事になると、かえって危険だ。いつ、殺されるかわかったもんじゃないしな。
「うーん、それじゃああなたを殺した人を倒すってのはどうでしょうか?」
「倒す? 俺を殺したやつを? 無理だろ。相手はナイフを持っているだろうし……、それに俺はそんなに強く…………。いや、いい考えだそれにしよう」
なんだ、初めからそうすればよかった。倒して無力化出来れば殺されないじゃないか。
「それじゃあ、今後の方針も決まったと言う事で学校に行きましょう!」
「お前は毎回それだな」
俺の生死なんて、全く気にせずこいつは毎回毎回、学校に行く事だけを考えている。
「タイムリープする前の私も言ってたんですか。まあ、初めてで少し緊張しますが。面白そうですし、楽しみです」
なんていうか、毎回毎回変わらないなこいつは。気が落ち着くな。タイムリープの事を話せる奴が居るだけで、こうも変わるとはな。
「そういや、前から気になってたんだが。学校とかどうやって知ったんだ? 天界にはないだろ?」
「そうですね、ありません。なので、私は普通にスマホとやらの検索を使って色々調べさせていただきました」
誇らしげに、白い色のスマホを掲げてくる。
「それは、何処で手に入れたんだ?」
金で買った……のか? 金を作り出せるとか前に言っていたし。
「魔法で作りました。街の人達が使っているのを見て」
「魔法……、なんでもありだな」
レティルが、部屋を出ようとした瞬間、いい事を思いつき静止する。
「ちょっと待てレティル」
「ん? なんですか」
「ちょっと、お前にやってもらいたい事が…………」
クラスにつき、すぐさま自分の席に座る。今回は転校生の話には参加しない事にしたからだ。
だが、隣の席に時雨達は居るわけで、話さざる終えない。
「おはよう、星雲くん。調子はどう?」
「ああ、ボチボチだ」
「星雲、なんかいつもよりテンション低くない?」
「そんなこと無いぞ。別に……」
「そうよ、いつもより低い。だっていつもなら、クラスに入ってきてすぐ『おっぱいが一つおっぱいが二つ』とかセクハラ発言してるのに今日はまだやってないわ」
「一度も、そんな事言ったことねえよ!」
てか、そんな事普通に言ってたら流石に退退学になるだろ。
「それで……今日。転校生が来るらしいよ。星雲くんはどんな子がいい?」
「別に誰でもいい」
「ムー……、冷たい」
誰が来るか分かりきってるしな。淡い期待などしない。
「星雲くん、かわいい女の子だったら、嬉しいじゃない。そういう気持ちもないの?」
「ああ、特に興味はない」
「自分好みに調教してやるとか、パンツをどうやってクンカクンカするかとか、考えないの?」
「だれが、そんなことするか!」
今回は前回のようなミスをせず、しっかりと隠しとうせているはずだ。色々と不思議に思われてたりしたからな。
「やっぱり、いつもと違うような……。なんというか、ツッコミにキレはあっても軽くあしらっているような感じがする。どうでもいいみたいな?」
「本当に、どうでもいいって思ってるからな」
「いやぁ、星雲。なんだかんだ言っていつもはしっかりとツッコミしてるわよ。そのボケに対して丁寧にね」
五回目のタイムリープで、同じような朝に飽きてしまっているのか? そのせいでツッコミもなぁなあになってしまっているのかもしれん。
「元気がないのは、多分昨日の夕飯のせいかな。妹が、作ったんだけどそれが酷すぎてさあ。食べた気になれなくてね」
「なるほど、そういうことね……。まあ、それは仕方ないんじゃない? そういうこともよくあるわ」
「それは……仕方ない。それでも……、妹さんの料理食べてみたい……かも」
なんでそんなに、優しくなったの!? 意味がわからないんだけど!
「まあ、星雲くん……。本当に大丈夫なの? なんていうか、思い悩んでみるというか、狂気を克服したようなそんなような顔つきをしてるわよ」
「どんな、顔つきだよ……。昨日と変わらず、いつもの俺だよ」
「ふーん、そうなの」
なんで、こんな日に限って時雨は感が鋭いんだ……? ほとんど、図星なんだが……。だが、絶対に悟られる訳にはいかない。一日で、絶望を味わい生還したなんて、悟られてしまったらそれこそ頭のおかしいやつ……いや、それどころか、本物の狂人だと思われてもおかしくはない。
「でも、やっぱ顔つきが凛々しくなったっていうか……そんな感じがするのは何故?」
「さあ、本当に何も分からんな。特に何もしてないし……」
「ナニもしてない……ですって。珍しい事もあるのね」
「ニュアンスが違うから、大体察しはつくから、何も言わんぞ」
大体、何と言うとナニに変換され卑猥な言葉になるからな。
「私の事が、分かってきたのね」
「だてに、何回も同じことを繰り返してないさ」
何度何度もタイムリープして、大抵同じような流れになったからな。
「まあ、確かに星雲がいつもと違う感じってのは分かるかも」
「お前まで、そんな事を言うのか?」
「いやぁ、なんていうかあれなのよ。カンってやつ」
この状況で、そんなものにたよならないで欲しいんだが……。
「まあ、自分では気づかない変化とかもあるから、それなのかもしれないしね」
「そういうものか……」
そんな他愛もない会話をしていると、先生が入ってきた。
「はーい、皆さん。席についてください」
そこで、話が中断され自分達の席へと座る。その時、何故か時雨だけは不満そうであった……。
昼休憩、今回も誘われたが断り一人で食べる事にした。前回は、外のベンチで食べたが、今回は屋上で食べる事にした。屋上は一応、基本空いているが風の影響もありお弁当食べるのには向かず、不人気なスポットなので、基本は一人も居ない。今日も、もちろん誰もおらず、俺一人だ。
「食べにくいが、一人で考え事をするには好きなんだよな……」
そんな事を呟き、しゃがみ込む。
取り敢えず、今から俺を殺したやつが誰なのかできる限り可能性を出そう。まず、俺が死ぬ直前にレティルが言った「まさか…………、あなただったんですか…………」という言葉。
オーラが見えてそれを言ったとなると、レティルが関わったことのある奴かつ俺が知る人間。前回はゲームセンターには行かなかったので、そこで出会った奴以外で考えるなら、時雨・水羽・漆原・八尋の四人とあとは担任の先生くらいだろう。
時雨は変態だが、もし俺を殺すとしたらどういう理由だ? 刺したくなるくらいドSになった……とかか? たが、あいつに限ってそんな事……ないよな?
次に水羽。俺の事をストーカーしている。だが、好きなやつも出きたと言っていたし、そっちをこれからストーカーするとも言っていた。多分、ストーカーは面白がってやっていただけだとするなら、殺す意味が分からないしないな。
次に、漆原。まあ、あいつの場合は馬鹿だし、俺の事をずっと親友だとかマブダチとか言ってくるし無いだろう。
そして八尋。俺の写真を撮るために、家に入ってくるかもしれないが、俺を殺すか? 確かに、変人の中でも趣味が盗撮と告白ってこと以外あまり知らない。まさか、時雨・水羽・漆原の中の誰かが好きです、俺を妬んで殺したとかか? 確かに、その可能性もあるが、あいつがそんな事に時間をかけるとは思いにくい。
最後に、先生か。いつも、困らせているし一番可能性ありそうだな。家庭訪問で家も知っているし……。俺も被害者だが、問題児に頭を抱えてるし。
そんな考察をしていると、いきなりドアが激しい音を立て開いた。そこに居たのは……、時雨だった。
「こんなところに居たのね」
「なんだ、一人で食べたいんだ。邪魔しないでくれ」
そう言って、突き放すが更に近づいてくる。
「星雲くん。昨日の夕飯がどうのこうのって話嘘でしょ? その程度でシスコンの星雲くんが、元気を無くすとは思えないもの。それに、雰囲気が変わったって言った時に一瞬目をそらした。人間は嘘をつくときとかに、その反応をする。つまり、星雲くんは、嘘をついているということよ」
「別にシスコンじゃねえし、本当だから。あっち行っててくれ」
時雨は言う事を聞かず、むしろ近づいてくる。
「星雲くん。真面目にあなたは何で悩んでいるの? 相談してみなさい、少しは楽になるはずよ」
まさか、時雨に見抜かれるとは思ってもいなかったな。だが、ここで話すと色々と面倒くさい。否定しておくか。
「いや、本当に悩んでない」
「だったら、何故こんなところで一人で食べているのかしら?」
「それは…………お前らの事が嫌い……だから」
心の底から本当に嫌いだ。嘘は言っていない。
「確かに、あなたは私達を嫌っているふしはある。だけど、それ以上に好いている部分はあるんじゃないの? そうじゃなかったら、一緒にご飯を食べようとは思わないじゃない」
「それは……、誘われたから」
「本当に嫌いなら誘われても断るものよ」
俺はこいつらの事を嫌っている、それは間違いない。こいつらのせいで変人扱いされ、友達も出来ず一人ボッチになってしまったのだから。
そう、こいつらが居なかったら、俺は友達を作り楽しい学園生活を満喫しているはずだったのに……。
「分からないのかしら。あなたは、嫌っていると表面上は思っているのかもしれない。でも、本当は案外楽しい……。そう思ってるんじゃないかしら」
いや……ないない。本当だったら、もっと楽しいはずなんだから。
「あなたは、自分の意思でこの関係を作り出しているのよ。いい加減、理解しなさい!」
何を言っているんだ……こいつは。
「そんなはずはない。お前らのせいで俺は友達が出来ず、一人ボッチになったんだ! 俺を見ると、皆が離れていく。何かを触っただけで、悲鳴をあげられる。この気持ちが、お前に分かるのか!」
言ってしまった……。後悔はない。『パチン!』という大きな音ともに、俺は頬を叩かれていた。
「いってえな。なにしやがるんだ!」
更に近づき、俺は胸ぐらを掴まれ壁に押さえつけられる。
「あなたは、何をそんなに悩んでいるの。あなたは私達の事を嫌っているけど、それと共に友達だと思っている。違うの?」
「思ってない……。俺はお前らの事を……」
「じゃあ、なんで今目を逸らしたの。私に言ったはずよ、どんなにうざくてにくくて嫌いでも、好きになれるし友達になれるって」
更に力強く、時雨は壁に押さえつけてくる。俺は、時雨にそんな事を言った覚えはない。
「あなた、私の事覚えていないのかしら?」
「なに……をだ」
時雨の顔はいつになく真剣で、こちらをじっと見る。そして、押さえつけていた手を離す。
「あらそう……。覚えて居ないならいいわ、それじゃあね。もちろん、この事は他の人には言わないから安心して」
「ちょっと待てよ。そんなんじゃ、納得出来るわけないだろ」
「自分の胸に聞いて見るといいわ」
そう言い残し、時雨はその場を去った。
何なんだったんだよ……。友達が出来ないのも自分の……せい? そんな事はない、話しかけやすいオーラを出しているはずだ。うん、俺は悪くない……。
だが……、私の事を覚えてないってどういう意味なんだ。
クラスに戻ると、そこには時雨は居なかった。
「なあ、漆原。時雨はどうしたんだ?」
「時雨? さっき、星雲を探すと出てから見かけてないけど?」
「レティルは?」
「私も知りませんね。何処に行ったんでしょう」
俺とのいざこざで、何処かで隠れているのか? そんな事を思いっていると、後ろからソロリと水羽がやってきた。
「時雨さんは…………、早退するらしい。体調が、優れないんだって」
あいつが早退? 皆勤賞を目指して頑張っている、あいつがか? 俺とのいざこざで、目を合わせたくなかったとか? だが、それは考えにくい。あいつは、そうだとしても早退なんてしない。だとする、深刻な病だったとかか? でも、今まで一度も何回かタイムリープする中で帰ったことはない。やはり、なにかあったんじゃないか……。
それに、前に一度だけ漆原が家に帰ったこともあったな……。俺と話しただけで、あいつらが帰るとは思えない。やはり、この2つはなにか関係性があるんじゃないか?
「星雲……くん?」
首をかしげ、水羽が手を握る。
「あ、いやなんでもない。てか、なんで手を?」
「寒そうだったから…………」
「今春なんですけど…………」
こいつは、なんでいきなりこんな事をするんだ。ストーカーといい、写真の件といい、やっぱかなりの変人だな。
帰りの時間、時雨の早退した理由もわかる事は無く、俺らは四人で帰っていた。
「このメンバーで帰るのって初めてじゃない?」
「そうだね……。いつもは時雨さん……居るし」
「そうなんですか。まあ、それは仕方ないですけど、今はこのメンバーで楽しみましょう!」
「楽しむ? じゃあ、どうせならゲームセンター行かない? 久々ださし」
「いきたい…………」
「おもしろそうです」
「星雲は?」
「ああ、行くか」
今回は、自ら同行しよう。前回みたいに、連行される感じではなく。
ゲームセンターに入ると、頭が痛くなるくらいの、爆音が鳴り響いている。
「いやぁ、にしても久々に来たわ。最後に来たのは、いつだったかしら」
「私も、久々…………」
「じゃあ、まずはあれをやろう」
そう言って、俺が指したのは前に漆原とやったシューティングゲームだ。
「これね。よし、やりますか」
「多分二人で、やる感じですよね? じゃあ、水羽さん。私達はあそこにある格闘ゲームやりません?」
これが、朝に俺がお願いした事だ。俺と漆原を、二人っきりにしてレティルは水羽を格闘ゲームに連れて行ってくれという。そして、本当はそっちに時雨を連れて行ってくれともお願いしたが、それは意味が無かったようだ。
「それじゃあ、やるわよ」
「俺の銃さばきを見せてやるぜ」
結果は前と同様、最終ステージが終わったのにも関わらず最下位だった。
「あーー、楽しかった」
「そうだな、お前が普通の人間を撃ってなかったらもっと楽だっただろうに」
このタイミングで、あれを言うか……。
「なあ、漆原。お前って、どれくらい強いんだ?」
「うーん、かなり強いとは思うけど」
かなりって……、曖昧だな。まあ、別にいいか。こいつの強さを俺はよーく知っている。毎日のように殴られたり蹴られたりしているからな。
「そんな、かなり強いお前におりいって、頼みがあるんだ」
目を見つめ、腕を掴む。
「えっ、なになに!?」
「今日…………、俺の家に来ないか?」
漆原の顔は真っ赤に染め上がり、目をそらす。
「えっと……その」
「漆原。俺にはお前が必要なんだ!」
「うっ…………、うおりゃぁ!」
いきなり、漆原はボディブローを決めてきた。
「グハ…………。痛え……。いきなり何するんだ!」
「それは、こっちのセリフよ! いきなり、何を口走ってるのこの変態」
変態? なにを言っているんだ。
「漆原……、お前何か勘違いしてないか?」
「なにを勘違いするって言うのよ。いきなり、俺の家に来いだの私が必要だの、何なの! 私の事好きなの!? これは、告白されてるの!?」
ああ、なるほど。ちゃんと説明してなかったから、そういう解釈になったのか。
「いや、違う。まあなんというか、俺の家に殺人鬼が今日入る予定なんだ、だからそいつから俺を守ってほしい……って事なんだけど」
「えっ……」と、声を漏らした後また顔が真っ赤になった。
「あわわわわ……、私なにを口走って……」
「おい、大丈夫…………グハッ」
また、ボディーブローをくらわせられ、痛みの余りその場にしゃがみ込む。
「だから、なんで殴るんだよ!」
「ふん、お返し」
お返しって……、絶対釣り合ってねえだろ、これ。
「それでいいか? 守ってくれるのか」
「いいわよ。親友のために一肌脱ごうじゃない」
「へぇ……。一肌脱ぐなんて言葉、知ってたんだ」
「バカにしてるの?」
何はともあれ、これで目的は達成出きた。今回は漆原に守ってもらい少しでも時間を稼ぎ、相手が誰かを把握して、なおかつ倒してもらえると最高だ。
「それじゃあ、頼む」
「任せなさいってんだ」
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