第2話 空から女の子がぁ!?

 授業後、すぐに帰ると時雨達が追いかけてくる可能性もあるため、写真部の部室で時間を潰す事にした。


「はぁ……。マジで助けてくれよ」

「オレは羨ましいと思うぜお前の事」


 こいつの名前は、東哉とうさい八尋やひろ。写真部の部長で、この部室を貸してもらっている。俺と、この学校で唯一喋ってくれる男子生徒だ。というのも、イケメンのくせに問題発言と盗撮ばかりしているため、変人認定されている。女子からは女の敵と言われ、男子からは顔を妬まれている。今日明日と部活休みらしく、八尋も暇らしい。


「いやまあ、ハーレムって言ったって、全員変人だぞ?」

「それでも、いいじゃないか。ラブコメのハーレムといったら、ありがちな展開じゃないか?」

「確かにそうなんだけど、こっちの苦労が……」


 毎日毎日、下ネタに付き合いストーカーされ殴られ変人扱いされ……。酷いったら、ありゃしない。


「じゃあ、言えばいいじゃないか。もう、オレに近づいてくるな! 雌豚共って」

「それ言ったら、時雨は当たり前のように対応して、水羽は喜び、漆原は意味すら分からないだろうな」

「じゃあ、嫌われるように仕向ければ?」

「どうやってだよ。どうやって、あいつらに嫌われればいいんだよ!」

「悪口を言えば?」

「無理だ。もう、既にやった」


 時雨に言うと、褒め言葉だと返され、水羽に言うと、そんなに私の事見てくれてたんだと、訳の分からない言葉を返され、漆原に言うと、命に関わる威力のパンチを返される。


「嫌われる方法なら無理だと思う。これまで、何度試したことか」

「なんか、お前の顔からすげえつかれたようなオーラが出ているんだが。大丈夫か?」

「思い出しただけでも疲れてきただけだ」


 それにしてもどうすれば、あいつらと離れられるんだろうか……。


「一人くらい、オレにくれたっていいんだぜ? オレは性格がどんなクズだろうが、貢ぎ続けてやるぜ」

「流石、顔はイケメンだけどモテない八尋さん。言うことが違いますね」

「ふっ、褒め言葉だぜ」

「褒めてねえんだよな」


 確か、新学年が始まってまだそんなに、日にちが経っていないはずだが、既に十三人に告白してるからな、こいつ。まあ、無論全員に振られたが。


「それで写真部、今回一年生入ってきたのか?」

「いや、誰一人として入って来なかった」

「へぇ、なんか意外だな。それまたなんでだ?」

「よく分からないんだよな。ただ、体験入学に来た女子に必要以上に交際を申し込んだり、男子には殺意の目を向けてただけなのに」

「むしろ、それでよく分からないなんて言えたな」

 

 ということは、今二人か。八尋のような変人と一緒の部活に入るのは同じく変人しかいない。そう、水羽だ。八尋曰く、一年生の時に写真部に体験入部して先輩全員を口説き落とそうとしたら、気味悪がられて全員部活をやめてしまったらしい。男子の先輩は、元から二人しか居なかったが、女子がいないなら居る意味が無いと言って、やめてしまい、残ったのは水羽と八尋だけらしい。因みに、八尋が部長で水羽が副部長だ。


「はぁ、やっぱお前も変人なんだな」

「いや、星雲だけには言われたくないぜ。毎日毎日下ネタを大声で言ったり、女の子をトイレに連れこもうとしたり、女の子とSMプレイで楽しんでるってよく噂を聞くぞ」


 毎日毎日下ネタ……時雨。女の子をトイレに連れ込む……水羽。女の子とSMプレイ……漆原。全部、あいつらのせいかよ……。


「まあ、これからも同じ変人同士仲良くやろうぜ?」

「俺は、変人のつもりはないが……。まあ、俺が普通の友達ができるまでな」

  

 いつか、本当の意味の友達を作ってこいつとも、決別してやる! 再びそう心に誓った。


 

 






「はぁ…………」


 学校からの帰り道、ため息をはき疲れた体を無理やり動かし歩いていた。あいつらに一緒に帰ろうと誘われる前に、授業が終わった瞬間学校を飛び出した。学校でも疲れるのに、帰りまで一緒に行きたくはない。


 本当だったらこういう時は、仲の良い友達とかと帰るんだろうな……。巻き込まれているだけなのにあいつらと同じ問題児扱いされ、変人扱いされ誰も寄付こうとしない。というか、なんであいつらは俺と絡もうとするんだ? 友達だからか? だが、あいつらは最初からあんな感じのテンションだったはず。はぁ……、もし過去に戻れたら、あいつらとは拘わらず知り合いにすらならないのに……。


 そう思ったその時だった。


「助けてぇ〜〜」


 という女の子の声がかすかに聞こえてきた。辺りを見渡してみたが、それらきし人は何処にもいない。気のせいだったか?  


「上です…………うえ!」


 上? その言葉に従い、上を見ようと顔を上げた瞬間、空から降ってきた女の子の頭が俺の頭とぶつかった。あまりの衝撃にそのまま俺は倒れ込んだ。


「いってえ……なんだ?」


 俺は目の前で起きている光景を見て唖然とした。きらびやかな銀髪をした美少女が半裸の状態で俺の体に馬乗りをしていた。


「おい、大丈夫か?」

「…………んん」


 美少女はボーっとしながらこちらを確認し顔を近づける。


「おい、なんだよ。おーい大丈夫か……ん!?」


 そのまま、美少女は更に近づけ、唇が触れ合った。いや、ちょっと待ってくれ、今何が起きているんだ? なんでこいつはキスしてきたんだ? 彼女いない歴イコール年齢の俺には訳がわからないぞ。


 美少女は、目がうつろで意識がぼんやりしているようだ。取り敢えず、ここからどいてもらおう。


「なぁ、頼むから降りてくれないか? ちょっと重いんだが」

「すっ……すいません!」

 

 美少女は、あたふたしながら降り立ち上がる。


「本当にすいません!」

「それはいいんだけど、君の名前は? 何処から来たの? なんで、空から降ってきの?」

「えっと……、私の名前はレティル。天界で寝ていたら落ちしまいました。アハハ……」

 

 俺の変人センサーが反応している。天界から落ちてきただと? なるほど中二病……か。


「そっそうか……気をつけろよ。それじゃあな」

「ちょっと待ってください。なんで、そんな可愛そうな子を見るような目で私を見るんですか!」


 だって……、俺は別に厨二病とかじゃないし。


「まあ、もう少し生きていたら分かることだってあるぞ」

「何を言ってるか分かりません! それに、身長がいくら低くてもあなたよりは生きてると思いますが」

「いくつ?」

「15673歳」

「…………。」


 無言でその場を立ち去ろうとしたら、肩をガッチリ掴まれた。


「なんで、逃げようとするんですか!」

「変人に関わるとろくなことが無いって、知ってるしな」


 学校で、毎日のように経験している。


「そもそも、私は変人じゃありません。天使です」

「いや、だからな。妄想と現実を混ぜるな。変な事ばかり言っていると身長伸びないぞ」

「何を言ってるんですか! 女の子からしたらこれが平均身長なんですよ。それに、変な事なんて一つも言ってませんし、そもそとそれと身長は関係ないじゃないですか!」


 正論で返された。なんか、イラッとするな。


「それで、空からはなんで落ちてきたんだ?」

「天界で寝ていたら、落ちて……」

「そうじゃなくてな、本当はなんで落ちてきたかを聞いているんだ。そんな、天界とか妄想の話じゃなくてなぁ」

「妄想じゃないんです! 本当ですよ。信じてください」

「屋根からジャンプしたのか?」

「私の話を聞いてください!」


 天界という、妄想以外で現実で考えられる可能性を出してみたが……、違うのか?


「あのなあ、そういう危ない事ばっかりやってるといつか痛い目にあうぞ」

「別に危ない事は、してませんし私は傷ついてもすぐに回復するので安心してください」


 そういう設定の話をしてるんじゃないんだが……。


「あとな、そういう頭のおかしい事を言ってると友達をなくすぞ。現に俺は、そういうやつを四人ほど知ってる」

「友達なんて、私にはいませんよ。天界に住んでいても、全員たかだか神様に作られた存在なんですから」


 これ以上付き合ってても無駄か。


「はぁ……俺は疲れてるんだ、迷子なら警察に行くか?」

「迷子じゃないですよ! あなたは私をどうしたいんですか!」

「お前と、さっさと離れて家に帰りたい」

「酷いですよ、私傷つきました」

「そうかそうか、それじゃあ俺はこれで」

「……あっ、ちょっとまだはなし…………キャ!」


 俺が行こうとすると、レティルは俺を押し倒し再び唇と唇が触れ合った。


「ん!?」


 あまりの出来事に驚きを隠せずにいた。二度目のラッキーキス。大体漫画とかだと、こういうのからラブコメが始まるんだよな……。こいつがヒロインとか絶対に嫌だぞ。レティルの様子を伺うと顔を真っ赤にしていた。


「えっと……、その。ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」


 そう言い残し、レティルは走り去って行った。結局なんだったんだ? 変人の中二病ということは間違いないんだろうが……。


「ん?」


 後ろの方から足音が聞こえた気がするが……気のせいだったか。


 まあ取り敢えず、変な人には関わらないようにしよう。そう、再び心に決め自宅へと向かってあるき出した。










 

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