雨女心中

雨女心中

私は生まれつきの雨女で、

ここぞと言う時にはいつも雨が降ってくる。

そのうえ偏頭痛持ちで雨になると頭が痛くなる。厄介な持病だ。

だけど、雨の日が嫌いではない。

窓に打ち付ける雨粒を、安全な、薄暗い部屋の中から見るのが好きだ。

ぼーっと、ずっと見ていられる。

ほっぺたをガラスに付けると、ひんやりとして気持ちがいい。

この距離で見る雨が、好きだ。

私のまつげに雨粒が乗ることは無いけれど、

雨で揺れる空気の冷たい振動が伝わってくる。

季節はやっぱり夏がいい。

夏の初めの方がいい。

冷房をつけるにはまだ少し早いような、

雨の冷たさが嬉しくなるような、

春のピンクが終わって、緑と青の夏が来る、

そんな時折（とき）がいい。

心の中では、外に飛び出して両手を広げて、思いっきり上を向いて、真っ向から

雨粒を受け止めてみたいと思っている。

けれどそんな、ほんとは簡単な希望も、

実現するのは難しい、

そんな歳になったんだなと思いながら、

私は、今日も、雨を、見ている。