第2話 ごめんね
入学式も終わり、寮の発表が始まる。
ブルーローズガーデンは、大きなお城が三つありそのメインキャッスルが学食、寮長会議、全寮集会が行われる場所。
一階には、全寮集会の大きなホールがあった。
学園長のアール=レンキングが、全生徒の前に立ち寮分けを始める。
「アイリス・エンジェル寮!寮長!シェリル=ルーテル!!副寮長!マリアス=チュウレイ」
「はい!!」
「はいであります!!!」
何百人という生徒たちの前に、立たされるシェリルと。
「クロユリ・デビル寮!寮長!オリビア=リング!!副寮長!チェイス!」
「はい」
「げ・・・マジかよ」
教壇に上がらせられる四人。しかし、全生徒の冷たい視線はオリビアに注がれるのだ。
『あれが、魔の国の次期女王?』
『あいつらのせいで、オレの家族死んだんだ』
『オレの母ちゃんも殺された・・・』
『私のお兄ちゃんも・・・』
『あたしの妹と弟も・・・』
オリビアが教壇に上がる前に聞こえてきた神の国の生徒たちの声だ。
「けっ・・・まるで悪者だな」
「仕方ないでしょう。私たちは、魔の国の住人なんだから。そのうえ、次期女王の私よ・・・恨みもかうわ・・・」
半分呆れながら、半分どこか悲しそうに小声でチェイスに伝えるオリビア。
「オレたちが争いを起こしたわけじゃないっつーの」
腕組みをしながら、首を傾げるチェイスの目に映るのはオリビアの隣にいるシェリルだった。
シェリルは、チェイスの視線に気がついたのかニコッと優しく微笑んだ。それが、嬉しかったのかチェイスの頬も赤くなる。
そんななんとも言えない気持ちで、寮長たちの発表が終わった。
廊下を歩いていると背後から、懐かしい声が聞こえてきた。
「オリビアっ!!チェイスくん!!」
駆け寄ってくるシェリルの後を追うようにして来るマーガレットと、マリアスだ。しかし、駆け寄ってくるシェリルに足さえも止めないオリビア。
「おい!オリビア」
オリビアの肩にチェイスは、触れて彼女は無言で足を止めた。
「ひ、久しぶり!!元気だった?」
軽く息を上げながら、いつもの笑顔で話しかける。
「あ、うん・・・元気だったよ。リル・・・シェリル様は?お元気でしたか?」
無言を突き通すオリビアを前にして、チェイスが口を開く。
「もぉ、やだ。チェイスくんったら!いつもの様にリルって呼んで?」
オリビアの耳に届く周りの声。
『シェリル様・・・正気?』
『ありえない・・・あんな争いの跡なのに・・・』
『実は、シェリル様も魔の国の住人?』
そんな周りの声が、態度にオリビアは耐えられなかった。
「オリビアも久しぶりだね!あ!今日さ、一緒にまたお茶でもしよーよ!ガールズトーク!!ね?」
話しながら、シェリルはオリビアに触れる。
ーーパァンっ!!
勢い良い音が廊下を包み込んだ。
「汚い手でこの私に触らないで」
「き、貴様っっっっっ!!!!」
すぐにマリアスとマーガレットが、シェリルを守る様に先頭に出る。
「なにが・・・お茶よ。ガールズトークよ・・・そんな茶番もう終わったの!!!神の国の住人は、神の国同士で仲良くしてればいいだろ!!?」
「オリビア・・・?」
きょとんとした表情で、彼女の顔を見上げると彼女は今にも泣きそうな顔でこちらを睨んでいた。
「オリビアっ・・・やりすぎだ」
勿論、この騒ぎには周りには生徒たちが集まってきた。
「オリビア・・・自分をまたそうやって責めるの?」
「は・・・?」
「オリビアは昔からそうよ!自分ばかり、悪者みたいに逃げてばっかりじゃない!!アナタはなにも悪くないのよ!!!」
「リル様!!これ以上はっ!!お近付きになっては危険です!!」
マーガレットの止める声も関係なくオリビアに手を伸ばすシェリル。
「ふ、ふざけんな!!コケにしてるくせに!哀れんでいるくせに!!私のことはもうほっておけ!!」
シェリルが出してくれた手を本当は、握り返したい気持ちを彼女は一生懸命殺した。そして、その場から逃げ出す様に去りその後をチェイスが追っていた。
「オリビアっ!!」
「リル様!!!!生徒の目もあります。ここは、大人しく寮へと戻りましょう」
マーガレットにそう言い聞かされて、そのまま寮へと戻っていった。
寮へと戻る時にやる気なさそうな教師とすれ違う。
「おい、リアム。次の教室行くぞ」
「はいはい。その前に行きたいところがあるので、先に行ってください」
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