ブルーローズガーデン

ひな菊

第1話 青い薔薇に願いを込めて


 このお話は、オリビアとシェリル、チェイスがまだ学生時代の物語である。


 戦争が終わって数十年の間に、クラウディアという街が出来上がりそこに『ブルーローズガーデン』という学園ができた。


 青い薔薇というのは、とても貴重で滅多に育てられないことから『奇跡の花』と言われている。


 戦争が終わり色んな種族たちが血反吐を吐く思いで、築き上げてきた『奇跡の花』に相応しい名前だ。


 生暖かい心地良い風が、新学生たちの頬を掠めていく。


 ほんのり、中庭に咲いている薔薇の香りがする。


「オリビア〜。お前、どこ寮?」


 学園に一輪だけ咲き誇っている青い薔薇を眺めていたオリビアに、声を掛けてきたのは彼女の世話係りのチェイスだった。


「アンタと一緒のクロ寮でしょ」


 ここブルーローズガーデンには、大きく分けて二つの寮に分かれている。


 一つ目の寮、アイリス・エンジェル寮。神の国の住人が主に入っている寮だ。


 二つ目の寮、クロユリ・デビル寮。魔の国の住人が主に入っている寮の二つだ。


 クロユリ・デビル寮。通称、クロ寮。もう一つの名前は『負け犬寮』戦争に負けた魔の国は、酷く治安が悪くなってしまった。


「リルは、アイリスかな?」


「でしょうね。あの子は、神の国の住人だもの」


「しかも、次期後継者・・・寮長決定だろうな」


「本人は、嫌がるだろうけど」


「お前も魔の国の次期後継じゃん。オリビア様?」


 からかうように青い薔薇を眺めているオリビアに話しを掛けた。


「うっさい。ほら、行くよ・・・」


「へーい」


 密かにオリビアは、青い薔薇に願いを込めた。


 その願いとは・・・。


「シェリル様・・・大丈夫でありますか?」


「うん・・・緊張でお腹痛くなってきたけど、大丈夫」


「リル様・・・それは、大丈夫って言わないわ」


 三階の長い廊下、壁の部分が一部ガラス貼りになっていて高所恐怖症の生徒にはかなり辛いであろう、シェリルはこれからの学園生活を考えると体調が悪くなる。


 ため息をつきながら、窓の外を見つめると小さく見えたのはローズガーデンにいたオリビアとチェイス。


「あ!オリビアだ・・・」


 オリビアとチェイスとは、赤子の頃からずっと一緒で戦争が始まるまでは良く魔の国と、神の国を行き来していた。


 しかし、戦争が始まるとやはりなかなか会えることができず寂しい思いをしていた。


「本当でありますね・・・はぁ、争いがなければあのお方も肩身の狭い思いをせずに学園生活を送り出来たのに・・・」


「え?マリアスどういうこと?」


 マリアスと呼ばれたネズミと人間のキメラで、体も弱くいつも咳ばかりしている男の子。マリアスは、少し言い辛そうにしていると代わりにマーガレットが説明をする。


「リル様も理解できていない訳ではないでしょう?あんなに酷い争いをした跡ですよ・・・魔の国を恨みを持っている者も少なくありません。しかも、魔の国の次期後継者・・・。多少のいじめなどは、覚悟しないと・・・」


「何それ・・・オリビアがいい子なのは、2人だって知ってるでしょ?!」


「それは、わかっています。でも、私の最愛の姉も・・・マリアスの家族全員もあの戦争で・・・リル様・・・お気持ちは、よく分かりますが彼女たちには近付かないのが懸命かと・・・」


 二人の学園生活が始まる。

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