シーズン2

霊を見る男

私には他の人と違って特殊な能力がある。

守護霊や背後霊のたぐいが見れるのだ。


自分にその能力があると知った時は驚いたが、

慣れてしまえばなんてことないもので、

今では人に憑く霊を透視する小さな店を開いている。

最初は胡散臭いと言われていたが、来店者の口コミが広がって徐々にお客が増え、

今ではそこそこに繁盛している。


今日も開店早々お客が来た。

「なんだか最近すごく肩が重いんです。

お医者さんにはなんとも無いと言われたんですけど。」

「そうですか、ともかく一旦呼び出してみましょうか。」

霊を呼び出すと客の肩の上にはくたびれた顔の小さな老人が腰掛けていた。

小さな老人は驚いてこちらを見る。

「なんだあんた、わしが見えるのか。」

「はい、お疲れで休まれていたと思うのですが、

そろそろ他所へ行かれてはどうですか。」

「ああそうだな、この人にも迷惑だろうと思っていたところだ。そうするよ。」

そうすると老人はどこかへ消えて行った。

「なんだか急に肩が軽くなった気分です。

どうされたのか分かりませんがありがとうございます。」

「いえいえ、これも仕事ですから。」


出ていく客と入れ替わりで次の客が。

「なぁ、あんた霊が見えるんだろ、俺のも見てくれよ。」

ヘラヘラ笑っている冷やかしの若者だったが一応見てやった。

「残念ながら何もいませんね。」

「なんだい、つまんないの。」

こういうことも最近多い。

話題作りとかで冷やかしに来る客も多いのだが、

そう言う奴に限って何も霊などついていないのだ。

薄っぺらな人間は霊の方からも願い下げということだろうか。

そう考えていると次の客が来た。


大人しく賢そうな青年で、

新しくビジネスを始めるからいい守護霊がついていればと見に来たのだ。

「ある種の願掛けですけどね、ぜひお願いいたします。」

「わかりました。」

私はいつものように霊を透視してみて面食らった。

青年の背後には良い守護霊どころか、ナイフを持った狂人顔の男が立っていたのだ。

悪霊であることはどうみても明らかだった。

「あなた、彼に取り付くのはやめてあげなさい。他にもいい人がいるでしょう。」

「やなこったね。こういう未来ある若者の不幸な死に様は俺の大好物なんだ。」

これには参った。しぶとく引っ付く悪霊を引き離すのは至難の技だ。

「あんまりこういうことはしたくなかったのですが…」

私は自分の守護霊を呼び出した。

「あぁ、なんだこりゃ、嘘だろ。

待ってくれ、こいつからは手を引くから勘弁してくれ。」

顔を真っ青にした悪霊は一目散に逃げて行った。


「で、どうです?何かいい守護霊はついていましたでしょうか。」

「いえ、残念ながら何もついていませんでしたよ。」

「そうでしたか、なんだか少し寂しい気もしますね。」

軽く笑う青年を店から返した私は呼び出した自分の守護霊と話した。

「急に呼び出してすまなかったね。」

「なあ、さっきの逃げてった男、食ってもいいんだな?

久しぶりに呼び出されたから腹が減ってるんだ。」

「ああ、好きにしてくれ。」

さすがの私も自分の守護霊が恐ろしい人食い鬼だった時は流石に驚いたものだが、

霊が主人を食うことなどそうないだろうし、

なによりこうして誰かの幸せにささやかながら貢献できていると思えば、

まぁそう悪くもないだろう。

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