掘り当てたものは
ある村で大きな温泉が見つかった。
それも一つだけでなく、次々と見つかり何もなかった村はあっという間に
有名な観光地となり温泉を見つけた村の若者は一躍英雄となった。
賑わう観光地にはたくさんの旅館が建てられ、お土産屋や食事処ができ、
その村への高速道路も引かれることになった。
都会からは癒しと非日常を求める人々が押し寄せ、連日賑わいを見せた。
その中で一人だけ、癒しでなく、大きな野望と成功を求めて来たものがいた。
ロボットを研究をしている博士はこの村の成功に目をつけ、調査に来ていたのだ。
博士は研究資金の工面に苦労していたところ、偶然温泉を掘り当て一攫千金を得たこの村の話を聞きつけ自分の手にもその成功を収めようとやってきたわけだ。
「温泉の出たここ周辺の土地の地質や傾向は調べ尽くした。
あとはめぼしい土地に私の作った温泉採掘ロボットを放流するだけだ。」
博士はこのところ本業そっちのけで温泉を掘り当てるべく、
専門の採掘ロボットを設計し大量に生産していた。
「噴出した水の温度計や、硫黄の感知センサーさえつけてしまえば完成だ。」
そうして暫しの温泉休暇を楽しんだ博士は家に戻ると、
計画通りロボットを完成させ各地に放った。
「見当違いなところばかり掘り進めてもしょうがないし、
関係のない物を掘り当てた場合は次の採掘ポイントへ移動するように設定した。
私はここで待っているだけで、いつか必ず成功の時がやってくるというわけだ…」
博士の放ったロボットたちは各地を掘り進め、
失敗したり行き詰まったりすると次のスポットへと移った。
そして放ったうちの一台がとうとう、
僅かながらに温泉の湧き出ているスポットを見つけた。
「ようやく最初の成功だ。
僅かな成果ではあるがこれも次なる成功につながる鍵となるだろう。」
そうして博士のロボットたちは今日も様々な場所を掘り進めてゆく。
見渡す限り何もない平地を歩いていた若者たちは目の前の大きな穴を見て話す。
「なぁ、こんな大きい穴誰が掘ったんだろうな。」
「ああ、どうみてもここに湧いてるのって石油なんじゃないか。」
「すごいじゃないか、これで俺たちも大金持ちだ。」
「でもこれ誰が掘ったんだろう。
普通油田を掘り当てておいてみすみす掘り進めるのをやめるか?」
「油田の価値がわからなかったんじゃないかな。いや、そんなわけないか。」
「なんにせよ他の誰かに横取りされる前に早く俺らのものにしようぜ、
誰の仕業か知らないが、ここまで掘り進めてくれた奴には感謝しないとな…」
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