不眠の原因

男はある会社の社員。

会社に入ってからと言うものの

持ち前のアイデア力と既存の概念に捉われない発想が評価され、

とんとん拍子で出世街道を駆け上がり今や重要なポジションに上り詰めた。


年中奇抜なアイデアを出し続ける男は、仕事が終わりシャワーを浴び、

そして布団に入ってからもなお頭を捻り続けているのが日常だ。

故に、寝ることも忘れてしまい朝日が登るまで布団の中で考え込んでしまうこともある。


「今日も寝れなかったな。寝ようと思っても考え事が止まらない。

少なくとも寝る前くらいは仕事の考え事を辞めるべきか。」

そう思ったが癖となってしまっているのでやはりなかなか寝付けない。

焦って寝ようと思えば思うほどかえって頭が冴えてしまうのだ。

睡眠薬も試したが体がだるくなるばかりで、

脳はそれに抗うように活性化してしまう。


いよいよ不眠が深刻になってしまった男は友人に相談した。

「自分で寝ようと思ってもいつも頭が冴えてしまって寝れないんだ。

見えない何かに無理やりアイデアを考えさせられてる気分だよ。」

すると友人は

「じゃあ僕の使っている薬をわけてあげるよ。

睡眠薬の類は目覚めが悪くなるし体に負担がかかるから

僕はこれが一番だと思うんだ。」

そういって友人は男に錠剤を渡した。

「どんな作用があるんだい?」

「頭がぼーっとするのさ。考えがぼやけて頭が冴えなくなる。

自然と寝れるはずだよ。」

「そうかい、ありがとう。試してみるよ。」


家に帰り錠剤を飲んでみた男は

「ああ、頭がぼーっとしてきた。これなら寝れそうだ。」

何かを考えようとしても全てがぼやけていく。

そして男はそのまま眠りについた。


部屋の外に停まっている車に乗った2人のスーツ姿の男達は

ベットですやすやと寝る男と手元のパソコンを交互に見ながら困り顔で話す。

「おかしいな。今日はやけに早く寝たな。」

「もう少しいつもより脳波を刺激する電波を強めるべきか?」

「試してみよう。枕型の装置だから電波は届いているはずなんだがな。」

「失敗は許されない。

ライバル会社のアイデアメーカーのアイデアを吸い取るという

我々の任務が成功すれば我が社が常に向こうの一歩先をいけるのだから…」

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