第256話 魔物退治のしかた
「まずは、魔物の詳しい話を聞きたい。」
食事後は会議室へと移動して、話し合いが行われる。席に着くと、ジョノミディスが
「この町からは南西に当たります。小さな川があるのですが、少し登ったところで発見されました中型の魔物の群れにございます。」
中型の魔物でも、一匹や二匹であれば
魔物の種類は
「私でも倒せる魔物だから、ティアリッテ様が心配することはないよ。」
知らない魔物の話にどのような作戦が使えるか考えていただけなのだが、不安そうに見えたらしい。ジョノミディスがそう言うと、
「その、ティアリッテ・シュレイ様も魔物退治に?」
「ああ、少なくとも現時点では魔物退治は彼女の方が得意だろう。」
「このような形で差がついてしまったのは私としても不本意ですわ。」
環境の差というものは、
「この辺りなら明日には終わるな。距離的には日帰りで行ける。」
地図を見ながらジョノミディスが言い、魔物退治の話はそれで一旦終わる。その次に話すべきは、先ほどの畑であったことだ。
「ウンガスから来た者たちが、畑に魔物の植物を植えていた。」
ジョノミディスがそう言うと、
それをジョノミディスから指摘されたのだから、話の流れとしては責を問われると思ったのだろう。
「こちらからも事前に注意喚起しておくべきだった。今後も起こり得る、改めて周知を徹底するように頼む。」
叱責はないのだと
「ウンガスから持ち込んだ種の類は、一度、
「私の騎士でも分かるのですか?」
「触れてみれば分かるはずです。とても不快な感じがしますから。」
掘り起こした根を持ってきてあることを伝えると、
「それと、植えるべき種が足りぬのならば早めに申し出てくれ。多くはないが余裕を持って種を確保してある。」
「心遣い、痛み入ります。」
その後は、領主からの通達事項だ。ウンガスから流れてきた民への対処方法や、警戒に当たっている騎士の交代の時期など、ウンガスへの対応に関することばかりだ。聞いているだけで溜息が漏れてしまう。
「ご婚約者様には少し退屈でしたかな?」
「いえ、ウンガス、ウンガスといつまで言っていなければならないのかと思うと、少しうんざりしてしまっただけです。」
「全くだ。」
「ですが、民の間では主要な戦力は尽きたとのもっぱらの噂です。魔物を退治する騎士もいなくなり、土地が荒れ果てて逃げてきているらしいですからね。」
頭を抱えたくなるような状況だ。ジョノミディスからも溜息が漏れる。
ウンガス王国が何をしたいのか全く理解できないが、魔物が増えているならばそれを主力としてやってくることは想定した方がいいだろう。
一通りの話が終わると、夜はゆっくり休み翌朝早くから魔物退治に向けて出発する。
町を出て畑を抜け、細い道を進んでいくと、小さな村に着く。魔物が発見されたという地域はそのさらに西側だ。言われた通りに進んでいくと小川にあたり、それに沿って山を登っていくと、報告のあった魔物の痕跡はすぐに見つかった。
そこまで確認できれば、やることはいつもと変わらない。魔力を撒いて出てきた魔物を片っ端から狩り尽くしていく。二度、場所を変えて魔物退治をしていると、大きめの魔物の気配が近づいてきているのを感じた。
ある程度の距離を保って慎重にこちらの様子を窺っている場合のやり方も決まっている。
「一度引き返しましょう。私たちが背を向けて逃げていけば追いかけてきます。」
少々知恵があるといっても、所詮は魔物だ。単純な手にひっかかり、簡単に森の奥から姿を現す。それに合わせて高い声を上げながら歩く速さを増していけば、
「これほど簡単に退治できるとは思っていなかったぞ。」
「残っている魔物を探すのが大変なのですよ。」
「確かに……」
あまりにも呆気なく
「魔物退治には必ず女性を入れておくと良いですよ。男性の声では誘き出すのが難しいのです。」
何故だかはよく分からないが、同じように男性が叫んでも魔物はなかなか出てこない。女性が叫んだ方が、明らかに集まってくる魔物の数が多くなる。
誘き出してしまえば、雷光を撃って死骸を焼き払うだけだ。何も難しいことはない、いつも通りの作業だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます