第06話】-(ファーストキスの危機。その頃…
〈主な登場人物〉
紬/イトア・女性〉この物語の主人公
その他ギルメン〉カナタ、エテル、カルド
──────────
(紬/イトア視点)
ここから出なくちゃ。
一番に思いついたのは窓。でも窓に近寄り外を見てみると地面などなく
まさかとは思うけど……。
今度はドアノブを回してみた。当たり前というか鍵がかかっている。でも──この扉は木製だった。
「へ……⁉」
私は目を見張り
ここの警備は大丈夫なんだろうか……と余計な心配が頭をかすめる程にいとも簡単に密室から出ることができた。でもそんなことはどうでもよくて。これで脱出することができる、と拳に力が入る。
それに恐らくカルド達も到着しているはず。そう思うと心強い。そしてここには他にも
この服装は非常に気になるのだけどそんなこと言っていられない。私は
──ゾクッ。
この感覚は……。
「ふーん、君、魔法が使えるんだ……ますます気に入ったよ」
背後に冷たく射すような声が聞こえた。私は恐る恐る顔だけ部屋の方に視線を移すと壁に背をもたれ腕を組んだ
え⁉ どこから現れたのだろう。
気配も感じなかったし、扉には私がいたわけでその経路が全く分からない。私は冷や汗を流し背中から射す不気味な空気に息を止めた。
「──⁉」
次の瞬間、私の身体が硬直する。何が起こったのか理解するのに
なんで⁉
「無駄だよ」
私をあざ笑うかのように
─────
「夜まで待ちきれないのかな? もう少しだから待っていておくれ……」
そして人差し指が私の唇に触れる。
かと思うと唇から首筋に移動し……私の胸の谷間に沿ってゆく。
見つめあったまま、私の感覚だけがそれを伝えてくる。
そしてその手はまた私の顔に戻り頬に触れた。
「綺麗な瞳だね。そんな
まるで想い人に見つめられている感覚が私を襲う。
その瞳に私の頬が赤らめていく。
潤んだ瞳が私の顔に近づいてきて。
白い髪が私の肌に触れてきて。
私の唇に近づいてくる。
(いやああああああああああ‼)
心が全力で拒否している。
それなのに身体は逆にそれを喜ぶように受け入れようとしていた。
何⁉ この葛藤。
動かない体の中で私は
──ピタッ。
─────
ひと指分の距離で唇は止まった。
「ぶはっ」と私は息を吐き出し、恐怖と
危なかった。もう少しで私のファーストキスを奪われるところだった。というかあの瞳に見つめられると何故だか自分が自分で無くなってしまう。
そんなことなど
私はその光景に
あれは……⁉
そして
「一応教えておいてあげるけどこの空間はさっき魔法が使えないようにしておいたから。おてんばな
またしてもその瞳がきらりと光る。
言葉とは裏腹に今度は殺気に満ちた冷たい光で。
「
目の前の獲物をもったいぶって食らおうとする獣の姿がそこにはあった。
怖い。
私の目は見開き、震える手をもう片方の手で握りしめ押し黙る。
「その前に私の城に
★ ★ ★
(客観的視点)
広い洋館の中でカルドとエテル、カナタは
その時──。
エテルにはどこからか、誰かのすすり泣く声が
「ちょっと待って! 声が聴こえる⁉」
「本当か⁉」
「どこですか⁉」
エテルを先頭にその声が聴こえる方向に三人は駆けていく。
「カルド! この部屋からだ」
ドアノブを回すも
「ちょっとどいてろっ」
カルドは二人に距離を置くようにと告げると
そして照らされた暗闇の中からうっすらと人らしき足が見えた。カナタが扉にとどめの蹴りをいれてぶち破るとその暗闇に声をかける。
「誰かいますか?……大丈夫ですか⁉」
返事がない。それでも声を掛け続ける。
「助けに来ました。……誰か話せる方いますか?」
「……あなた、だれ?」
暗闇から恐怖に怯えたか細い声が返ってきた。
三人は顔を見合わせる。そしてその暗闇の中を慎重に奥へ進んでいくと一人の少女の姿があった。
いや、その奥にも暗闇で見えなかっただけで何人もの少女や中には幼女の姿が。彼女たちがいた部屋は、カーテンで閉め切られ、その隙間から射す
こんな薄暗い部屋の中でずっと捕らわれていたのだろうか。絶望から
「これは……」
エテルが声を詰まらせる。
皆に共通していることは、手と足には
又、どの少女達も肌が極端に露出した身なりをしている。三人は目の
「その傷……」
「そう、あいつは私たちの身体を……血を少しずつ飲んでいって最後には……ああなるのよ」
そう告げた少女は部屋の隅に視線を移す。
「「「⁉」」」
三人は目を見開き絶句する。
そこにはミイラ化した少女と思われる
弱弱しく少女がポツリと告げる。
「お気に入りの子がいれば最後には同族(吸血鬼)にするみたいだけど……どちらにしてもここにいる以上もう普通の生活には戻れない」、と。
彼女の瞳は
「許せねぇっ‼」
カルドは顔を
三人はこんな残酷なことを平気でやってのける
そして、ある違和感に気が付いたのはカナタだった。何かがおかしい……⁉
「イトアが……いません⁉」
三人は一人ひとりの顔をもう一度確認したがそこにイトアの姿はなかった。
「どういうことだ⁉」
「てっきりここにいるのかと……」
「確かにトゥエルはこの
三人が
「私の城に何の用かな?」
背後から響く冷たく肌を刺すような声。
誰一人その気配に気が付けなかった。
「お前が……
こめかみに一筋の汗を流しカルドが
(続く)
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