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マコトくんの毎日の体験すべてが、大人の皆で協力してつくりあげてくれたものだった、そのことがだんだんわかってきました。
先生は、教室の後ろに並びマコトくんにカメラを向けている大人たちを一通り見渡すと、あらためてマコトくんに話しかけました。
「どうしてここに、こんなにもたくさんの大人が集まっているのか、わかりますか?」
マコトくんは、先生の反応をうかがってゆっくりと首を横に振りました。
先生はひと呼吸ついて木枠のガラス窓につかつか歩み寄り、勢いよく開きました。
「こちらに来て見てください」
マコトくんも窓の近くまで来て、外をのぞきました。
山のふもとの方から校舎の真上まで、何十機も小型の機械が浮かんでいます。
「マコトくんは見たことがないでしょう」
初めて目にする機械が飛び交うさまに、マコトくんはぽかんと口をあけました。
「このあたりは飛行禁止地域です。今日は特別に許可されたようですね」
キムラ先生自身も、こんな光景はめったに見たことがない、といった様子で、じっと機械の群れを見守っています。
「このたくさんのドローンも、ここにいる人も、皆、マコトくんの小学校最後の日を報道し、記録するために集まったんです」
またメガネを外した先生は、今度は、みけんのあたりを指で押さえました。
「もっとたくさんの子供たちがいる頃、色々な仕組みがありました。小学校、教育委員会、PTA……もっと小さい子のためには、保育園、幼稚園……。こういう仕組みの維持には、多くの人やお金がいります」
そうして、言いにくそうに言葉を絞り出しました。
「少なくなりすぎた子供たちのためにそれらを費やすより、今を生きる大人のために使おう、という話が急に持ち上がりました。ごく最近のことです」
後ろの大人たちは、渋い顔をして先生を見つめています。
何人かは、何かを言いたげに口を開きかけてはためらっています。
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