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どういうことでしょうか。マコトくんは胸騒ぎがしました。
何かを回想するように、先生の目が遠くを見ています。
教室の後ろから、どこまで話すつもりなのか、といった小声が聞こえてきました。
「この学校のほかにも、この一年間で、全国で百四十五人いた子供たちが、致命的な病気や事故のせいで、次々と亡くなりました」
先生の口調が急に変わりました。
「この国の出生率は、この十年ほどでどんどん低くなっています。ああ、出生率というのは、子供が生まれる確率のことです。その上、生まれてきた子供についても、虚弱体質だったり、何かしらの致命的な疾患を抱えていて、ほとんどが長く生き延びられません」
ぼんやりとですが、重大なできごとの中心に自分がいること、今までもずっとそうだったことが、わかってきました。
「自然や文化を集めて保全するのと同じように、数少ない子供たちを集め保護し、次世代の人間の社会と文明を担うことができるように育成する。それがこの特区の一番の特徴であり、目的でした」
どんどん難しい言葉になっていきます。先生自身も気づかないのでしょうか。
「生きている子供が豊かに育つようにと、すべての知恵が注がれてきました。良質な人々と会話を交わして、本物の動植物や美しい景観を見て、豊かな心や文化を身につけてほしい。それが、私たち大人が子供に望むことでした」
ここで、やっと先生はマコトくんのことを見ました。
「マコトくんが毎朝毎夕に通学路で会う人も、偶然ではなく、あらかじめおのおのの場所で待っていたのですよ」
お屋敷のキクノさん、柴犬のコロを連れたハルエ小母さん、船着き場のヨウスケ小父さん、葱畑のトシゾウ爺さん、パン屋のユイナさん、文具店のミスズさん……。皆、マコトくんと話をするためにいてくれたというのです。
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