第2話 どうして勉強しないといけないの?

僕は小学4年生。開けている窓から蝉の音が聞こえる。夏!って感じだ!


 それなのに、僕は学校から出された夏休みの宿題を家のリビングでしてる。


 あーあ。なんで勉強なんかしないといけないんだろ。


 勉強なんかするより、僕にはいっぱいしないといけないことがある。プールに行って泳がないといけないし、ゲームで倒せないボスを倒さないといけないし、サッカーでリフティングの練習をしないといけない、絵も上手くなりたいから、描かないといけないし、やることがいっぱいなんだ。勉強なんかしてる場合じゃない。


 あーあ。なんで勉強しないといけないだろう?


 でも、しないといけないってみんな言ってるしなー


 ああー勉強したくない。


 そう思いながら、顔を上げると、そこには変なおっさんがいた。


 誰だこいつ!?なんか青い布切れを体に巻いていて、なんだか偉そうだ。何故か手のひらを地面に向けてる。


「なんで勉強しないといけないか?それは楽しいこと増やすためだ!」


突如、走馬灯のように、勉強しなかった自分の人生が頭の中に映し出される。


「なんで勉強しないといけないのか?普通に生きるには勉強が必要だからだ!」


頭の中に映し出される勉強しなかった僕はそう結論付けていた。

僕は一度、勉強しなかった人生を過ごしたのか……


現実に戻ってくる。


 僕は今、選択を迫られている。


 ・おっさんから逃げる

 ・おっさんの話を聞く


 ⇒ おっさんの話を聞く。


 僕はすかさずおっさんの話を聞くことを選んだ。

さっき見た人生は送りたくない。今度は幸せになりたい。


僕はおっさんに尋ねる。


「勉強をするのは、普通に生きるために、学歴や知識が必要だからだと思ってる。これは間違ってる?」


「いや、お主の言ってる普通に生きるには勉強が必要ということもわかる。勉強をしないと会社にも入れないし、人に評価されることもない。でも、わしが知ってほしいのは、その先なんじゃ」


「その先?」


「勉強をしないと自分のしたい事さえわからないんじゃ」


「自分がしたいこと……僕は、元々ゲームを作りたかった。でも、ゲーム会社には入れなかったんだ」


「それは、今のお主がしたいことで、本当に自分がしたい事なのか?お主の知っている範囲は、世界の中のほんの一部にすぎん。本当の世界は、ものすごく広く、どんな人にもなれる可能性を秘めてるのじゃ」


「どんな人にもなれる……」


「そうじゃ。勉学は光であり、無学は闇である。勉強することで、色んな人の考えや色んなこと事がわかるようになる。そうして、色んなことを知ることにより、自分のしたいことに気づくことが出来るんじゃ」


「ううん。難しい」


「例えば、お主はゲームを作りたいと言ったな。ゲームを作ると言っても、ゲームの物語を考える。ゲームのキャラクターや背景を描く。プログラミングする。音楽を作ると言った沢山することがある」


「色んなことをしないといけないんだね」


「そうじゃ。ゲームを作りたいならゲームのことを勉強する。自分が興味があることを勉強するんじゃ。そうすることで世の中には色んなことがあると知ることが出来るんじゃ。お主はゲームの何処に興味があるんじゃ?」


「絵を書くのが好きだから、キャラクターや背景の絵を書きたい!」


「好きなことがあっていいのう。じゃあ、絵を書くために、絵の勉強する必要がある。3D、2D、水彩画、油絵、色んなこと種類があるんじゃ」


「うげっなんかすごく大変そうじゃん」


「そう。勉強の根は苦いが、その果実は甘いんじゃ!大変でも続けることで、自分がしたいことが出来るようになるぞ」


「おっさんよくわかったよ!今度は、勉強頑張ってみるよ!じゃあね!」


僕はあやしいおっさんを通報するべく、逃げ出した。


「おいこらっ。まだ、話は終わっとらん!勉強は……」


おっさんの話はまだ、終わってないけど、こんな怪しいおっさんを家の中にはおいておけない。


僕は家から出て、近くの交番に駆け込む。


「おまわりさん。不審な人が家にいます!」


 直ぐにおまわりさんが、家に行ってくれた。


 でも、おまわりさんが着いたときには、もうおっさんはいなかったらしい。


くそっ今回も逃したか……


おっさんは取り逃したが、自分の人生はうまくやり直さないと!


今度は勉強して自分の可能性を広げるんだ!


12年後……


 僕は勉強を頑張って大学生になった。そして今は大学4年生。就職活動をしているが、既に内定が決まってる会社が5つある。全て大手だ。


でも、結局、僕は、ゲーム会社は受けなかった。


あのおっさんの話を聞いた後、ゲームに出てくる絵を書くため、絵の勉強をたくさんした。はじめは楽しかったけど、どんどんやることが難しくなって出来なくなっていった。絵の事を知れば知るほど、天才が沢山いることを知って、僕なんかじゃその道では生きていけないって悟った。


だから僕は、普通に生きるために、いい大学に行くための勉強をして、東大に入った。勉強は辛かったけど、自分が出した答えがすぐにわかるし、成績が順位でわかるから、やりがいもあった。

絵の世界で生きていくよりは、全然、楽に生きられる。だって、キチンとした評価の基準があるし、どうすれば良いか答えが本に書いてあるから。


勉強をするのが、1番人生を楽に生きられる。


僕は内定をもらった会社の中から、ホワイト企業で有名な会社を選んだ。


会社の仕事は、自分がしたいことではなかったけど、都市開発という規模の大きい仕事を任されてやりがいもある。


結婚も出来た。大学の時に出会った。絵が好きな子で、絵のサークルで、意気投合した子だ。今は、僕の子供がお腹の中にいる。


頑張らないと!


40年後……


この40年。沢山の幸せな事があった。勉強をしなかった人生では得られなかったことだ。


仕事では、大変なこともあったけど、生活するのに充分なお金を貰えているし、周りの同僚や上司、部下にも良い奴が多くて、ストレス少なく仕事出来ている。心に余裕があると、人にも優しくできる。


家族は、子供が2人出来た。男の子と女の子。もう結婚して、僕はおじいちゃんだ。孫の顔を見るのが楽しみだ。奥さんと結婚できて良かった。


僕は今になって、おっさんのことを思い出す。


「なんで勉強しないといけないか?それは楽しいこと増やすためだ!」


 おっさんはそう言ってたけど、今の僕ならこう答える。


「なんで勉強しないといけないのか?勉強したほうが幸せになれるからだ!」


でも、1つ心残りはある。それは絵のことだ。あのとき、絵の勉強を諦めていなかったら、絵の仕事をしている自分もいたかもしれない。


「半分正解のところまで来たな。ただ、お主は真に勉強が何たるかを理解していない!もう一度やり直せ!」


 どこからともなく声が聞こえてくる。これはやばい。また、時間を巻き戻られる。


「嫌だ!やり直したくない!僕は十分に幸せだ!」


そんな僕の声を無視して、時間が遡る。


意識が朦朧とする……


気付けば蝉の音が鳴いている……


 ここは、小学4年生の夏……夏休みの宿題をしている時間まで、戻っていた。


 やっぱりあのおっさんがいる。しかも隣に違うおっさんもいる。


「なんで勉強しないといけないか?それは楽しいこと増やすためだ!」


 変なおっさんが話しかけてくる。


 ・おっさんから逃げる

 ・おっさんの話を聞く


 ⇒ おっさんから逃げる


 僕はすかさずおっさんから逃げる事を選択した。このおっさんに関わったら、人生を何度もやり直させられる。


逃げようとしたら、二人のおっさんに囲まれて、逃げられなかった。




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