どうして勉強しないといけないの?

ペンギン

第1話 どうして勉強しないといけないの?

 僕は小学4年生。開けている窓から蝉の音が聞こえる。夏!って感じだ!


 それなのに、僕は学校から出された夏休みの宿題を家のリビングでしてる。


 あーあ。なんで勉強なんかしないといけないんだろ。


 勉強なんかするより、僕にはいっぱいしないといけないことがある。プールに行って泳がないといけないし、ゲームで倒せないボスを倒さないといけないし、サッカーでリフティングの練習をしないといけない、絵も上手くなりたいから、描かないといけないし、やることがいっぱいなんだ。勉強なんかしてる場合じゃない。


 あーあ。なんで勉強しないといけないだろう?


 でも、しないといけないってみんな言ってるしなー


 ああー勉強したくない。


 そう思いながら、顔を上げると、そこには変なおっさんがいた。


 誰だこいつ!?なんか青い布切れを体に巻いていて、なんだか偉そうだ。何故か手のひらを地面に向けてる。


「なんで勉強しないといけないか?それは楽しいこと増やすためだ!」


「お前誰!?」


 僕は今、選択を迫られている。


 ・おっさんから逃げる

 ・おっさんの話を聞く


 ⇒ おっさんから逃げる


 僕はすかさずおっさんから逃げることを選んだ。


 おっさんが喋りだそうとしたのを横目に、僕は家から出て、近くの交番に駆け込む。


「おまわりさん。不審な人が家にいます!」


 直ぐにおまわりさんが、家に行ってくれた。


 でも、おまわりさんが着いたときには、もうおっさんはいなかったらしい。


 僕は気を取り直して、勉強を再開しようとした。でも、おっさんは言ってた。勉強するのは楽しいことを増やすためって……


 勉強するのが楽しいことを増やすためなら、僕は既に楽しいことをいっぱい知ってる。ゲームとかサッカーとか絵を書くとか、だから勉強なんかする必要ない。


 12年後……


 僕はほとんど、勉強しないで大学生になった。そして今は大学4年生。就職活動をしてる。だって、生きるためにはお金が必要で、仕事をしないと貰えないから。


 ゲームが好きだから、ゲーム会社を受けていったけど、面接に行く前の書類審査で落とされる。この時、はじめて会社に受かるには学歴が必要だって事を知った。学歴がないと、どこの会社も相手にしてくれない!なんで誰も教えてくれなかったんだよ!知ってたら勉強してたのに!


 ゲーム会社が全てダメだったから、他の分野も手当り次第、受けていった。

 受けた会社が200社を超えた時、はじめて会社の採用が決まった。でも誰も知らない名前の会社だった。でも、そこしか受からなかったから、そこに行くしかない……お金がないと生きていけないからだ。


 毎日、通勤ラッシュに巻き込まれ、職場につけば仕事ができないと毎日怒られる。

 そして、朝の8時から夜の10時まで働かされる……

 こんな毎日が今から40年以上も……人生の大半になるのか……


 せめて休日だけでも、楽しもうと思い、テニスサークルに入った。

 でも、飲み会でみんなが話している内容がわからない時がある。結局、リアクションが出来なくて友達もできない。

 ましては異性からは全く相手にされない。これ以上、傷つきたくない……


 休日はゲームをする生活になった。でもゲームもすぐに飽きてしまう。子供のときはあんなに楽しかったのに……


 20年後……


 もう42歳。ここ20年の間、毎日同じことの繰り返し、通勤ラッシュに巻き込まれ、職場では誰にも相手にされず、家に帰って寝る日々。休日は疲れて一日中寝てる。給料も少ないから、なにかすることも出来ない。もちろん独身だ。


 周りの同年代をみると、奥さんと子供がいて幸せそうに見える。


 なんで、こんな人生になってしまったんだ。


 僕は今になって、おっさんのことを思い出す。


「なんで勉強しないといけないか?それは楽しいこと増やすためだ!」


 おっさんはそう言ってたけど、今の僕ならこう答える。


「なんで勉強しないといけないのか?普通に生きるには学歴や知識が必要だからだ!」


「お主は勉強が何たるかを理解していない!もう一度やり直せ!」


 どこからともなく声が聞こえてくる。この声はあの子供の時に出てきたおっさんか……


 意識が朦朧とする……


 気付けば蝉の音が鳴いている……


 ここは、小学4年生の夏……夏休みの宿題をしてある時まで、戻っていた。


 やっぱりあのおっさんがいる。


「なんで勉強しないといけないか?それは楽しいこと増やすためだ!」


 変なおっさんが話しかけてくる。


 ・おっさんから逃げる

 ・おっさんの話を聞く


 ⇒ おっさんの話を聞く


 僕はすかさずおっさんの話を聞くことを選んだ。


 次こそは幸せになりたい。そのためにはなんだってやってやる!

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