第110話 帝国再度危機に落ちる

謁見室から下がった宰相ポルナレフは不満をあらわにしていた。

「陛下は何をかんがえておられるのだ、何処の誰かもわからぬような輩に気を使ってどうする。法国に勝てたのは我が帝国の力と王国が裏切ったからであろう。」

宰相は戦場を見ていない為にユウヤ達を過小評価していた。

「ふむ、仕方ない、ここで私が動いて国庫を回復させればよいか。よし、誰か息子のジョーンズを呼べ。」


ジョーンズが宰相の執務室に入ってきた。

「父上、お呼びとの事ですがいかになされました。」

「あたらしく出来た街の事は聞いているか?」

「ええ、ジェームス殿下の領内に突如出来たとか、かなり噂になってますよ。」

「お前にはそこに税の徴収に行ってもらいたい。」

「税ですか?」

「そうだ、あの領土は帝国領であるから街が出来たのなら納めてもらわねばな。」

「わかりました。」

「任したぞ。」

「はい、報告をお待ちください。」

ジョーンズは手勢をまとめて出立していった。


ジョーンズは鎮守府に来た。入り口にて

「帝国徴税官である、すみやかに責任者の元に案内せよ!」

「ひぃ、す、すぐに連絡致しますので少々お待ちを」

この日は運悪く獣人の人が門番をやっており、帝国の肩書きに怯え急ぎ連絡に走ってしまう。

それを見たジョーンズは、

「なんだ拍子抜けするな、もっと毅然とした態度は取れないものか。」

「仕方ありませんぜ、帝国徴税官と言えば泣く子も黙ると言われてますからね。」

「魔帝国とかいうからもっと威厳があると思ったのだがこれならば併合も簡単に行きそうだな。」

ジョーンズは甘い期待を持っていた。


その頃、鎮守府総督、酒呑童子の元に門番だった獣人が報告に来ていた。

「お前はバカか?何故我々が帝国の徴税官に会わねばならぬ、ここは魔帝国なのだぞ。」

「しかし、徴税官と言うことは税を取りにきたのでは・・・」

「はあ、だから何故帝国に払わねばならん。お前はそんなことも解らないのなら門番はしない方がいい、他の仕事に就くように。」

「そ、そんな・・・」

「そんなことより、どうしたものか・・・」

「ワシが会うよ。」

「ご隠居!ご隠居様がお会いするような相手ではありません。」

「いや、たまには働かないと娘に叱られる、しかし、徴税官を寄越すとはなあ~」


応接室に徴税官一行を通した。

「いや~お待たせして申し訳ない、魔皇帝の義父だ、此処の代表として話を聞こうか。本日はどのような用件で参られたのかな?」

「本日来たのはこの街の税金のお支払について参りました。」

「これは異なことを、この街は何時から帝国の物になったのか?」

「ここは帝国領です。そこにある街も当然帝国の物となります。」

「そのことは第二皇子との話し合いで解決したはずだが?」

「それはあくまで第二皇子との間の話です。帝国としては別問題です」

「つまり意味は無かったと。」

「まあ、簡単に言えばそうですね。さあ納得してもらった所で税の額を決めましょうか。とりあえず此処の特産品を見せてもらえますか?」

「ふわははは・・・どうやらワシラも嘗められたものだ。おい酒呑童子こいつらを拘束しろ。まだ殺すなよ。」

「かしこまりました。」

酒呑童子は一行を拘束する。

「貴様、私にこのような真似をして帝国が黙っていると思うなよ!」

「別に構わんさ、何百万の軍勢が来ても関係ないが、ここまでバカにされたんだこちらから行ってやるさ。」

「帝国のお陰で法国に勝てたくせに恩を仇で返すのか!」

「帝国のお陰?何をバカなことを言ってる。帝国などいなくても簡単に勝てたさ。まあ倉田が帝国につくなら戦えるかもしれんが、アイツがワシを裏切りはしないだろう。」

「なに・・・」

「さあ、宣戦布告とするか。己のバカさ加減をよく見るがいい。」


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