第109話 謁見
ジェームスは皇帝に呼ばれ皇都に来ていた。
「父上、お呼びと言われ参りました。いかな用件でありましょう。」
「おお、ジェームスよ。最近お主の街の近くに新たな街が出来たと聞いての、どう対応しておるかの確認をしたかったのだ。」
「それならば、解決いたしました。」
「なんと、どうなったのだ?」
「はっ!街の主は魔皇帝ユウヤ殿でした。彼曰く管理出来ていない地を主張するのは認められないとの事でした。そして、私の判断で土地を割譲し、友好条約の締結に成功しました。」
「ほう。」
納得する皇帝の横で宰相が興奮気味に責め立てる。
「殿下は何をお考えか!陛下の許しなく土地を割譲するとは!恥を知りなさい!」
「宰相殿、ではあなたは魔皇帝ユウヤと敵対しろとおっしゃるのですか?実際、騎士の一人の暴走によって戦争手前まで行きましたが相手は戦争しても譲る気など欠片もないのですぞ。」
「それは・・・」
「戦争したいのなら宰相殿がやればいいではないですか!我々は無駄死になどゴメンでございます。」
「しかしだな、陛下の許しなく割譲する等、許されてはならぬ事です。」
「さっき戦争手前までいったと言いましたが意味がわからないのですか?どこに父上にお伺いする時間がある!ユウヤ殿の軍を相手にすれば我が街等一瞬で壊滅、帝国とて何日持つかの話です。どこに時間がある!」
「しかし・・・」
「もうよい、宰相よ下がれ。」
宰相は皇帝の言葉に従いさがる。
「ジェームスよ、事情は聞いた。領土の事は不問にいたす。それよりあの街で何を知った?」
「父上、ユウヤ殿は絶対に敵にしてはなりませぬ。彼はこれより海に出て交易を行うよしにございます。」
「海に出るのか?無茶な事を。」
「それがユウヤ殿には出来ると確信いるようでした。そして、手に入れた物は街で売るとの事でしたので友好条約を締結させ、我等にも交易品が手に入るはずです。」
「よくやったな。」
「あとこれはユウヤ殿から土産と渡された物ですが美容アイテムになるそうです。女性に試してもらった所ものすごい反応でしたので・・・もちろん、母上に献上するために持ってきました。母上そんな目で見ないでください。」
母親が食い入るように手元の美容アイテム一式を見ていた。
「あと、あの街で美容を本格的に行うとの事で、我々も使用出来る予定です。」
「そうですか、なら近々あなたの街を視察しる予定になりました。準備しときなさい。」
「はい、母上。先方にも許可をいただきますので少々お待ちしていただきますがよろしいですか。」
「かまいません。」
「まてまて、美容の事はおいておいて他に何があった。」
「他は見たこともないような防衛施設や、鋼鉄の船があり、間違いなく勝てません。それと魔貴族が数名指揮官として赴任しているようでした。」
「なんと!それでは攻めれぬな。」
「父上、もし戦うなら帝国は終わります。何があって裏切るような真似はなさらぬようにお願いします。」
「わかっておる。法国の有り様を見た後だ、ワシもあんな目には合いたくない。」
「はっ!差し出がましい進言失礼しました。」
「よいよい、お前も随分たくましくなったものだ。父として嬉しく思う、今後も魔帝国との付き合い頼むぞ。」
「はっ!帝国の為、そして、人類の平和の為に尽くしたいと思います。」
「うむ、下がってよい。」
「はっ!」
ジェームスは謁見室から出ていく。
「陛下、よろしかったのですか?領土を割譲する前に向こうと交渉すれば、譲歩を狙え国庫が潤いましたのに。」
「魔皇帝を怒らすのは止めた方が良かろう、さすがに危険すぎる。」
「しかしですな・・・」
「くどいぞ、既に決めた事だ。お前も下がって一度頭を冷やすがよい。」
その日の謁見は終わった。
皇帝は友好路線を選んだが・・・
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