第35話 決闘

手紙から1週間がたち、決闘日

闘技場に入ると客の熱狂が凄かった

「娯楽が無いのか?暇な奴らだ」

俺は対戦相手が来るのを待っていた

「よくぞ、怖じけずにきたな、息子の仇を取らせてもらう」

「よし、ならば死ね!」

「ま、まて、わしがやるのではない、代理人と戦ってもらう」

「なら、代理人と一緒にお前も相手してやる、2対1でかまわん、なんならもっと増やしてもいいぞ」

「い、いや、名誉ある決闘を汚すのは許されぬ事だ、予定通り代理人と戦ってもらおう」

「代理人の後はお前も始末するから待っていろ」

「なぜ、そうなる?」

「逆に何故殺されないと思う?俺に恨みがあるのだろ?決闘で俺が勝ったら別の手段で来るだけじゃないか、めんどくさいから今日片付けてやる」

「ワシは高貴な生まれだぞ、お主らのような成り上がりの下賎なやからとは違うのだ」

「何が違う、飯を食って糞して寝る、同じではないか」

「違うな、我等には青き血が流れておる」

「おかしいな、斬ったお前の息子は赤い血が流れていたぞ、あれはお前の子供じゃないのか?」

「ぶ、ぶれいな、死した息子の名誉まで汚そうとは!」

「そんなことはない、所詮斬れば同じと言いたいだけだ」

「ええい、もはや問答無用、ヤマダー出てきて奴を斬れ」

しーん

「ごほん、ワシの代理人のヤマダは歴史に名を刻むであろう最高の剣士、貴様がどう足掻こうが斬られる運命に代わりはない、さあ、ヤマダよ我が敵をうつのだ!」

しーん

「誰か、ヤマダを連れてこい!」

ヤマダは両横に兵士を連れ、ヤマダが出てきた

「や、やめてくれ、俺はまだ死にたくない!」

なぜかいやがっていた

「ヤ、ヤマダ?どうした?さっさと奴を斬らんか」

「侯爵さん、無理です、あの人は、兄貴は人が斬れる相手じゃないです!闘う前なら命乞いできるかも・・・」

「おー、銀次か?お前も来ていたのか?ん?お前が代理人とやらか?まあいい、さっさと死合をしよう」

「兄貴違う、殺しは止めて!」

「うるさいらさっさと上がってこい」

「はい!今参ります!」

急ぎ、山田銀次は倉田の前に出頭する

「うむ、これで試合がはじまるな、ヤマダよ目の前の敵を切り刻め!」

侯爵はヤマダを見ていないのか強気な発言を繰り返していた

そこに審判が

「では、開始したいと思います、両者よろしいか?」

「おう、俺はいつでもいい!」

「待って、よくな・・・」

「さっさと始めんか!」

侯爵がヤマダの声を消し開始を促した

「試合開始!」

審判が無情にも開始した・・・


「参りました!」

試合は始まる事なく終わってしまった

ヤマダは開始と同時に、倉田がやる気をだす前に土下座し、降伏した

「少しは闘わんか!」

倉田は不満そうに答えるが

「命が大事です、おやっさんもおじょうも居ない今、兄貴が熱くなったら誰も止めれなくなってしまいます」

「大丈夫だ、軽く手合わせぐらいやろうじゃないか?お前なら歯応えあるだろう?」

「勘弁してください!」

「仕方ないか、おい審判」

呆然としていたが気を取り直して

「勝者、倉田、と宣言した」

侯爵は顔を真っ赤にして怒りをあらわにし

「どういう事だ、ヤマダ説明しろ!」

「侯爵さん、兄貴とは闘えませんよ、無駄死にするだけです、何があったか知りませんが侯爵さまも謝罪して、終わりにしましょ、それが唯一生き残る方法ですぜ」

「ふざけるな!兵士よ、この者達を斬れ」

兵士はお互い顔を見合せ

「侯爵さま、決闘の後に殺すのはどうかと?」

「かまわん、このワシに歯向かっているのだぞ、今すぐ始末しろ!首を取ったものには金貨千枚を授ける、参加した兵士にも相応の褒美を授けるからさっさと動け」

金貨をブラつかせる事で兵士は倉田と敵対することにした、観客からはこの横暴に非難が殺到した

騒然とした闘技場で倉田は兵士が揃うのを待ち

「銀次、お前もこの世界に来て強くなっているもだろ?そこの兵士共で腕前を見せろ」

「兄貴、分かりやした、少々お待ちを!」

ヤマダそうのべると兵士に突撃し、走り抜けた、しかし、あまりに速すぎ剣も移動も兵士には見えなかったがヤマダが走り抜けた後、兵士はカラダがズレ、バラバラになった

「自分、兵士に恨みはないが、これも定めだ、諦めてくれ」

ヤマダは残りの兵士に近づき斬り続けた

「なかなか、やるなぁ」

倉田は近づいてくる兵士の頭を引きちぎりながら、ヤマダの腕前を確認していた

「こいつら、普通じゃねえ」

兵士の1人は思わず逃げたがそれにつられ、生き残っていた兵士も我先にと逃げ出した

そこには、呆然としていた侯爵だけが取り残されていた

倉田は侯爵に近づき

「これで終わりか?」

侯爵に確認した

「助けてくれ、まだ死にたくない」

「それが最後の言葉か?なら覚悟!」

「兄貴!お待ちを!」

「どうした、銀次」

「侯爵さまの命、今回は見逃す事はできませんか?」

「ほう?俺に逆らうとは!まあ、理由ぐらいは聞いてやる」

「一宿一飯の義理でございます」

「義理立てか、仕方ない!お前の顔も立ててやろう、そこの侯爵、よかったな今回だけは銀次に免じて命を助けてやる、次はないからな!」

倉田は見逃すと闘技場を後にした、ヤマダも倉田の後に付いて行った

取り残されてた、侯爵には戦意の欠片も残されていなかった

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