第7話 まーちーだー

「お二人さん、身分証の提出をお願いします。」

街の入口にて門番さんに聞かれた。


「すいません、うちの村だと身分証はなかったのですがどうしたらいいでしょう?」

「なら、街のギルドにて発行してもらいなさい。」

「ギルド?ってなんでしょ?」

「おまえ、ギルドも知らないのか?ギルドとは様々な職種をとりまとめていて主に冒険者、商人、傭兵、医療に別れていてそれぞれのギルドで仕事を斡旋してくれるところだ。」


「なるほど、職安という感じかな、そこに行けば身分証が発行されるのだね。」

「職安というのはわからんが、適正にあった身分証が発行される、それを一週間以内にもう一度ここに持ってきてもらえるか?それまではこの仮証明書を渡す。」


「もし、持って来なかったらどうなるの?」

「犯罪者として奴隷落ちもあるから必ず来るように。」

「了解です、では行っていいかな?」

「行ってよし、忘れず持ってこいよ。」

そうして、街の中に入れた、


「さて、宿屋はどこかな?」

「それより、先にギルドに行きましょ、奴隷なんてやだよ。」

「まだ、一週間あるから大丈夫じゃない?」

「落ち着かないから先にすまそ。」

チカの薦めに従い、ギルドを目指すが、ギルドはどれだろ?

取り敢えず街の人に聞いてみる。

「にいさん、にいさん、ちと聞いたい事があるのだけどいい?」

剣と皮鎧を装備し、あきらかに冒険者といった20代後半ぐらいの男に声をかけた。

「なんだ、おまえは?この俺にいきなり声をかけてくるとは?」

なにか驚いているようだが無視して 、

「いや~にいさんを凄腕の冒険者と見込んでお聞きしたいのですが?」

「うん、なんだそう言われると話ぐらいは聞いてやろう。」

チョロ、と思いながら、

「ギルドの場所がわからないので案内してくれませんか?」

「おい、それ凄腕関係ないだろ!それぐらい自分で探せ。」

急に態度が硬化してしまった。


『仕方ない、肉体言語に切り替えるか』

物騒なことを考えているとチカが上目遣いで、

「すいません、お兄さんみたいな頼れる人と一緒の方がギルドで絡まれる事がないと思ったので、駄目でしょうか?」

「おう、だ、駄目じゃないが・・・」

「ありがとございます、やっぱりいい人ですね、」

綺麗な笑顔でお礼をのべる。


「ああ、ついてこい、俺もこれからギルドに行くとこだ。」

「なら、さいしょから・・・」

チカに脇を小突かれ、


「せっかく、案内してくれるのだからいらない事言わない。」

口封じをされた、


「俺はアルトというが、おまえたちは恋人同士で冒険者になるのか?」

冒険者アルトはギルドに向かいながら聞いてきた。

「俺はユウヤ、俺達はともだ・・・ぐふっ!」

チカに横腹を叩かれた。

「恋人です!」

「チカなにを・・」

「申し遅れました、チカといいます、二人で田舎から駆け落ちしてきたとこなのです。これから冒険者として活躍していくのでヨロシクお願いします。」

「おーなんか熱いものがあるな、よし、なにか困った事があったら、俺のとこに来い、これでもB級冒険者だ、多少の力になってやれるぞ。」

「ありがとうございます、知り合いも居ない所なので頼りになります。」

「いいってことよ、俺も昔駆け落ちして冒険者になったからな他人事とは思えねぇ。」

「アルトさんも駆け落ちしたのですね?そのお相手と今は?」

「今も同じパーティーにいるぞ、この話を聞いて放置したら俺が彼女にお仕置きされる。」


「だが、お仕置きもいいと・・・」


「そう、普段優しい彼女のあの冷たい目線もなかなか・・・って何言わす!」

「大丈夫、俺の知り合いも似たようなのがいます。」

「えっ、アルトさんあの人と同じ趣味なの?」

チカはちょっと引き気味にアルトと距離をとる。

「まて、おまえは何を想像している、俺はノーマルだ!」

「みんなそう言いますね、自分が気付かないだけですよ~

だけど、大丈夫。

俺はその趣味を理解し協力してあげます、案内のお礼に趣味の手助けをしてあげましょう。」

「やめろ、ちがうから!」

適正におしゃべりしてたらギルドに着いたみたいだ。


「さあ、アルトさんの趣味は置いといて、中に入ろう。」

「そうだね、わたしは知らなかった事にします。」

チカは顔を赤くしながらアルトさんと距離を開けていた。

「そうだね、チカにはまだ早いって、アレ?、アイツの趣味理解出来るようになったの?」

アイツの趣味は18禁だし、中学生のチカにはまだ早いような・・・

「な、なんの事かな、わたしは子供だからわからない、」

顔を真っ赤にしながら否定してくる。

「今、想像してるかな?それを自分に置き換えて、相手は好きな人で~」

「やーめーてー、想像しないもん!」

耳を塞ぎながら首をイヤイヤと振ってる。


このままじゃ入口から進めないので、

チカを抱き寄せ耳元で。

「チカ、中に入っていいかな。」

チカに問うと、

「にゃ、え、えーと、は、はい、優しくしてください♡」

顔を真っ赤にしモジモジしながら決意を固め、潤んだ瞳で俺を見つめて返事をした。


「おまえら、二人きりの空間は宿でやれ、ギルドに用事があるのだろ。」

アルトさんも顔を赤くしながら俺を止めてくる。


「しかたない、(からかうのは)後にしようか。」

チカを見ると目を閉じ固まっていたのでクチビルをつまみ、

「さあ、ギルドに入ろっか。」

と伝えたところからかわれた事に気付いたチカは、

俺をポカポカ殴りながら一緒にギルドに入っていった。

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