第7話 短い幸せ
この時間が永遠に続けばいいのに……
いや、それは欲張りすぎか……
永遠でなくてもいい。ただ、1秒でも長くこの幸せな時間が続いて欲しい。
「はなみや?どうしたの?険しい顔して…何かわからないこととかあるの?教えてあげるよ」
「あ、いえ、ちょっと言葉に詰まっただけで…」
「あーなるほどね。たしかにもどかしいよね…」
「はい…まゆ先輩はレポート得意なんですか?さっきから手が全く止まってないみたいですけど……」
カフェに入って軽くコーヒーを飲み注文したケーキを食べながらレポートを進めていた。最初はやる気でない〜と言いながらグダグダ僕に話しかけてきていたまゆ先輩だったが、スイッチが入るとすごい勢いでレポートに取り組み始めて今まで手を止めることはなかった。まゆ先輩の集中を切らしてしまって申し訳ない……
「レポートは苦手だったよ…でも、克服した」
「へー、どうやって克服したんですか?」
「新聞の社説あるでしょう?あれをひたすら書き写して文章の書き方を学んだの。文章の書き方さえわかればあとは自分の意見を引き出して文章に変換するだけだから」
「すごいですね……」
「そんなことないよ。おかげでレポート書くの早くなったしレポートで高評価取れるようにもなったしおすすめだよ。で、どういうところで詰まってるの?まゆも一緒に考えてあげる」
まゆ先輩はそう言いながら席を立ち、僕の横に移動して僕のパソコンの画面を覗き込む。実際はまゆ先輩のことを考えていて言葉に詰まっていたわけではないのでめちゃくちゃ焦ったが、上手いこと誤魔化して僕はまゆ先輩に相談をした。するとまゆ先輩は少しだけ考えてからこうした方がいいんじゃないかな。とアドバイスをしてくれた。優しい。
「ありがとうございます」
「いえいえ、またわからないことあったら聞いてね」
まゆ先輩はそう言って席に戻る。その後はレポートに集中した。まゆ先輩から借りた本にはまゆ先輩が貼った付箋が大量にあり、まゆ先輩の努力の跡が見受けられた。先程のレポートの話といい、まゆ先輩がすごく努力家であることがこの本から伝わってきた。
「ふー終わったぁ〜」
「お疲れ様です」
僕より文字数かなり多いレポートをやっていたはずなのにまゆ先輩の方が終わるの早いってどういうことなのだろう…と疑問に思うが、先程、まゆ先輩が言っていたレポートトレーニングの成果ということか、と納得する。
「はなみやは終わった?」
「もう少しで終わります」
「そっか、頑張って」
「はい。頑張ります」
結局レポートが終わるまで結構時間がかかりまゆ先輩を待たせてしまったが、まゆ先輩は嫌な顔一つせずに僕がレポートを終えるのを待ってくれていた。
その後はちょっとゆっくりコーヒーを飲みながらお話しをして、お会計をする。僕が出そうと思ったが、まゆ先輩が先輩命令で財布をしまえと強い口調で言ってきたため財布をしまった。今度別の形で何かお礼しよう。
幸せな時間はあっという間に終わってしまった。
気づいたら大学の駐車場に到着していた。
まだ…この幸せな時間が続いて欲しい。1秒でも長く……いや、もっと…この幸せを味わいたい。
「まゆ先輩、好きです」
気づいたら僕は口に出してしまっていた。
僕の想いを……
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