第5話 本を探してください!





「ありがとうございました」

まゆ先輩がレジでお客さんのお会計を終わらせるのを待ち、レジにお客さんがいなくなったところで僕はまゆ先輩に声をかけた。

「まゆ先輩、お疲れ様です」

「はなみや、お疲れ様。お会計…じゃないよね?」

「あ、はい。えっと…課題レポートの参考資料にしたい本を探していたんですけど見つからなくて…」

「あー、そういうことね。じゃあ、調べるからこちらへどうぞ」

まゆ先輩はそう言いながらレジのカウンターに設置されたベルを鳴らしてまゆ先輩の代わりにレジに入ってくれる店員さんを呼び僕を連れてレジカウンターの1番端にあるパソコンが設置されたカウンターに案内してくれた。

「じゃあ、探している本のタイトルとか教えてもらっていいかな?」

「あ、はい」


僕はまゆ先輩に探していた本のタイトルなどを伝える。するとまゆ先輩はパソコンに必要情報を打ち込み在庫を調べてくれた。

「あー、ちょっと今在庫がないから取り寄せって感じになっちゃうかな……急ぎのレポート?」

「あ、えっと…その…明後日提出のレポートで……」

めちゃくちゃ言いにくいが嘘を言っても仕方ない。かなりギリギリまで手をつけなかった自分が悪い……

「うーん。それだと間に合わないなぁ……」

「そうですか……」

「よかったらだけどさ、まゆ、この本持ってるから貸そうか?あんまり大きな声で言えないけど、急ぎのレポート出し仕方ないよね」

「え?いいんですか?」

「しー、静かに…うん。いいよ。明日渡すことになっちゃうけど間に合いそう?」

「死ぬ気で頑張ります」

やばい。めちゃくちゃ嬉しい。大好きな先輩に本を貸してもらえるとか幸せすぎる。やばい……嬉しすぎて死にそう。

「うん。がんばって。まゆも、もうすぐ提出のレポートがあってやばいんだよね……あ、せっかくだからさ、明日授業終わった後、一緒にレポートやらない?まゆ、1人だとやる気でなくて全然作業進まないからさ…」

「え、いいんですか?」

問いに問いで返してしまった。今、自分のテンションはかつてないほどに高まっている。

大好きな先輩と授業後に一緒にレポートをする?幸せすぎるでしょう。

「うん。はなみやがよかったらだけど……」

「是非お願いしたいです。レポートのこととかいろいろ教えてください」

「うん。いいよ。細かいことはまゆがバイト終わったらLINEする感じでいいかな?」

「はい。お願いします」

緊張してめちゃくちゃ早口になってしまった。そんな僕を見てまゆ先輩は笑顔で明日よろしくね。と言ってくれる。幸せすぎる。


「あの、まゆ先輩にいろいろ対応していただいて何も買わないで帰るの申し訳ないのでまたまゆ先輩のおすすめの本とか教えていただけないですか?」

「うん。いいよ。じゃあ、案内するね」

まゆ先輩は立ち上がりレジのカウンターから出て僕を小説などの書籍が置いてあるコーナーに案内してくれた。

その中でまゆ先輩はいくつか紹介してくれたが、今日は予算的に2冊しか買えなかった。今日買えなかった本はちゃんと覚えておいてまた今度買いにこよう。あ、もう、完全に沼にはまってる気がする…


まゆ先輩が紹介してくれた本を持ってまゆ先輩と一緒にレジに戻りカウンター越しにまゆ先輩と向かい合いまゆ先輩に購入する本を渡してお会計をしてもらう。

お会計をする際は相変わらず手が震えてしまっていた。まゆ先輩がお釣りで小銭を渡す際に僕の手が震えまくっていてまゆ先輩と手が触れてしまい、まゆ先輩はくすり。と笑っていた。

かわいいなぁ。と思いながらすみません。と謝り本が入った袋をまゆ先輩から受け取る。

「ありがとうございました」

「こちらこそありがとうございます。バイトがんばってください」

「うん。ありがとう。また来てね。また、明日ね」

「はい。よろしくお願いします」

まゆ先輩に今日1番の笑顔で見送られて幸せな気持ちと浮かれた気持ち、ドキドキした気持ちなど様々な感情や期待を抱いて本屋さんを出た。


明日が楽しみすぎる……








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