第4話 ちょっと見られたくないお買い物
「……………」
どうしよう……大好きな先輩がいる………
大学の授業が終わり、僕は今、大好きな先輩がバイトしている本屋さんにいる。
今日は僕が楽しみにしているライトノベルの発売日だったので、今日を楽しみにしていたが……
大好きな先輩に見られたくない…
表紙がちょっとエッチな感じだし…後輩が先輩に恋をしている感じを匂わせるタイトルなのであまり先輩に見られたくない。
たぶん、まゆ先輩はなんとも思わないと思うが……やはり恥ずかしいし僕は気にしてしまう。
今日、運がいいのか悪いのかわからないがまゆ先輩はレジをしていない。まゆ先輩がレジのカウンターにいなくてちょっとショックだったが、まゆ先輩がレジのカウンターにいなくて少しホッとしていた。
というわけで今日はさっさと欲しかったライトノベルを買って帰ろうと思いライトノベルを手に取りレジに向かおうとしていたら、ライトノベルコーナーとレジの間の位置でまゆ先輩が本棚に品出しを始めてしまった。
どうしよう……まゆ先輩を避けて遠回りしてレジに向かうか……でも、まゆ先輩が僕に気づいた場合、まゆ先輩を避けるようにレジに向かうのは失礼な気がするし……どうすればいいのだろう。
ライトノベルコーナーからレジまでは一直線だ。ライトノベルコーナーから真っ直ぐ歩けばレジにたどり着く。距離としては10メートルほど…まゆ先輩がいる場所はレジから2メートルほど離れた場所……すごく微妙な距離だ。まゆ先輩を避けてもレジに並んだりしたらまゆ先輩に気づかれたりするかもしれない………
候補としてあげられるのは…本をほかにいくつか買って僕が今日買いに来たライトノベルの表紙を隠してレジに向かう。だが、今金欠だから余計な出費はできない。
まゆ先輩が気づかないことを祈ってまゆ先輩の横を通ってレジに向かうか…気づかれたら恥ずかしいし、気づかれなかったら少しショックを受けるかもしれない。この選択はないな…と頭の中で切り捨てる。
どうしよう。どうすればいいのだろう。と必死に考えながら僕はライトノベルコーナーの本棚と睨めっこをしている。そんな僕に時間制限を作るようにまゆ先輩はレジ側からライトノベルコーナーの方へ向かってきている。本棚に品出しをしながらゆっくりとだが、徐々に僕に近づいてきている。どうしよう……
と僕がめちゃくちゃ悩んでいる間もまゆ先輩は近づいてくる。あと5メートルくらい……やばい、時間がない。と思っていた僕に助け船が出された。
「あの、すみません。この本ってどこにあるかわかりますか?」
「あ、こちらの商品でしたらあちらのコーナーにございます。ご案内しますね」
まゆ先輩にお客さんが話しかけてまゆ先輩は笑顔で対応する。まゆ先輩の笑顔、素敵だ。
と、思いながら僕はレジに向かった。
助かった……
と思いレジの順番を待つ列に僕が並ぶと……
ちーん。とレジに店員さんを呼ぶベルを店員さんが鳴らした。そのベルの音を聞きまゆ先輩がレジに駆けつける。僕の前に1人並んでいるから、僕がまゆ先輩に対応してもらうことはない。と思っているとまゆ先輩がレジの準備をしている間にレジが一箇所空いて僕の前にいたお客さんがまゆ先輩とは違う店員さんのレジに向かった。
「お次でお待ちのお客様こちらのレジへどうぞ」
はい。詰んだ……まゆ先輩にこのライトノベルを買うのを見られたくない。と悩んでいた時間を返して欲しい……
僕は観念してまゆ先輩が対応してくれるレジに向かった。大好きな先輩に対応してもらえるのだ。めちゃくちゃウレシイナ……
「あ、はなみやお疲れ様、さっきめっちゃ集中して本棚見てたから話しかけられなかったよ」
まゆ先輩は笑いながら僕に言う。気づいてくれていたんですね。嬉しいです……
観念してまゆ先輩にライトノベルを渡す。思いっきり表紙とか見られて恥ずかしい。まゆ先輩はどうとも思ってないと思うけど……
「この前、まゆがおすすめした本読んでくれた?」
「今、読んでます。今日はずっと楽しみにしてたシリーズの発売日だったので…」
「へー、じゃあ、これ、はなみやのおすすめなんだ。今度読んでみようかな」
小声でそんなやり取りをしながらめちゃくちゃドキドキしていた。やばい…めっちゃ手が震えてる気がする。
「ええ、もしよかったら読んでみてください」
まゆ先輩がこのライトノベル読んでるところ想像できないよ……
「まゆ、結構ライトノベルとか読むからちょっと楽しみ。今日帰りに買ってこ」
意外すぎる…まじですか……
「そうなんですね。今度、まゆ先輩がおすすめのライトノベル教えてください」
「うん。いいよ」
まゆ先輩は笑顔でいいよ。と言ってくれた。この前はおすすめの小説を教えてもらい、今度はおすすめのライトノベルを教えてもらえる。幸せだ……
「ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございます。バイトがんばってください」
「うん。また来てね」
今日1番の笑顔で見送られて本屋さんを出る。すごく幸せな時間だった。
また来よう。
こうして沼にはまっていくのだろうな……
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