第42話

 それからの日々は順調だった。


 起きて井戸で顔を洗い身支度を済ませ、美しいロゼさんに朝の挨拶をする。


 毎日の朝食を王族と一緒し、美しいロゼさんと自室へと移動してから訓練に向かう。


 たまに美しいロゼさんからの要望を聞きパオラ様に意見する。


 訓練が終われば夕食と風呂を済ませて文献を漁り、翌日に備えて床につく。



 訓練もまた順調だ。


 深川に剣で勝てる者。


 水沢に槍で勝てる者。


 長岡に弓で勝る者はいなくなった。


 八戸と横手も順調に魔法の扱いを覚えて行った。


 僕は相変わらず走っていた。


 女子達は安定していたが、レベルは全員が未だレベル1のままだった。


 だけど僕は変化というか装備が増えた。


 パオラ様からインベトリの指輪が下賜されたのだ。


 内容としては魔力量に比例して多くの物を時間の経過なしに収納出来るという優れ物だが、女子達が持てばと注釈が付く。


 僕の魔力は60なので察して欲しい。


 その荷重値は何と15。


 僕の出来る装備は、これだけだった…。


 一応キングシリウスやカティアさんやユリスさんにも指輪を探して貰いはしたのだけれど、装備者の体力や筋力が10程上がる物が最高級で後は似たような性能の物ばかりだったのだ。


 参考までに調べておいた耐荷重値の一覧は、


 片手剣 150〜250

 短剣  50〜150

 戦斧  250〜350

 両手剣 250〜350

 短槍  200〜300

 長槍  250〜350

 弓   100〜200

 矢   25〜50

 杖   100〜200

 メイス 200〜300


 全身鎧 300〜400

 軽鎧  200〜300

 胸当て 100〜200

 小盾  100〜200

 手盾  200〜300

 大盾  300〜400


 ここに指輪が15らしい。


 腕輪やアクセサリーはないのか?



 そして訓練開始から1ヵ月経った今日、遂に王都近くのダンジョンで初の実戦というかレベリングであります。


 昨日の訓練は女子達が調整している中、一人で小石を集めてインベトリに詰め込んで行くという作業を黙々と繰り返しておりました。


 ええ、何と情けなかった事でしょう。


 危うく目から汗が滲んでしまうところでした。



 苦行を思い出し浸っていたが、僕の今日の仕事は闘っている女子の後ろから邪魔にならないように小石を当てるという作業だ。


 当然だ、指輪では戦えない。


 いのちだいじに。


 更に僕はユリスさんとカインさんに介護状態である。


 パオラ様の提案というか命令だ。


 そして王女姉妹と美しいロゼさんの要望でもある。


 リトヲダイジニ。


 ちなみにカティアさんと他の兵士さんは、その耐荷重値に見合った武装済みの女子達に付いている。



 王都の門を出て馬車で2時間くらい進み、ダンジョンという名の洞窟へと辿り着いた。


 本日のダンジョンは初心者向け。


 ここは国によって演習用に管理されているらしく、弱いモンスターしか出ないらしい。


 一応は数名の兵士さんが警邏している。


 詰所に馬車を停めて最終確認をし、ダンジョンでの訓練が開始された。



 初の実戦、命のやり取りに緊張していた頃が僕にもありました。


 よくバターの様に切れるとは聞くが、これはただの草刈りだ。


 深川と水沢が剣と槍でサクサクと草刈りのように敵を斬り倒している。


 僕は石を投げている。


 横手と長岡が魔法と弓で競うように的当てする。


 僕は石を拾っている。


 回復魔法を使う必要のない八戸は、必要のない強化のバフを掛けた後、モンスター相手に杖でモグラ叩きを横行している。


 僕は石を投げている。



 このままでは初心者向けの演習場が無くなってしまうという危惧から、本日の訓練は早々と終了になった。


 

 異世界よ。


 僕は石投げに呼ばれたのだろうか?


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